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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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09
2019

ビッグ・リトル・ライズ

2017年 / BIG LITTLE LIES / アメリカ / 監督:ジャン=マルク・ヴァレ、原作:リアン・モリアーティ / サスペンス、ブラックコメディ / シーズン1(全7話)
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金持ちケンカせずと言いますが‥‥ケンカしかしてません。
【あらすじ】
セレブたちの暮らし。



【感想】
「幸せ以外は全部ある」というのは日本版のキャッチコピーですが、いいコピーですね。子供にも恵まれ、ブランド品に囲まれ、豪邸での優雅な生活。なのに日常はトラブルばかりという。何もかも持っているのに、なんでこんなに揉めるの? というのはアメリカだけの話ではないかもしれないけど。人々の感情のぶつかり合いがすさまじく、サスペンス要素もあって一気に7話観てしまいました。面白かったです。

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本当にねえ、登場人物の描き方がいい。魅力的でひと癖もふた癖もある人ばかり。というか、問題児しかいないけど。まともな人、ゼロ人。

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ママ友の間でのボス的存在マデリン(リース・ウィザースプーン)。どうですか、この貫禄! まさに王の風格。私が威張ることじゃないけど。この人、本当に面倒臭い人なんですよねえ。モンスタークレーマーにもなりうる。

マデリンは我が強く、自分が正しいと思ったら絶対に譲らない。周囲からは厄介な人と思われているが、彼女には共感できる部分も多い。傲慢で口は悪いし、一度嫌った人間とは徹底的に戦うし、子供に干渉しすぎる部分もある。だが、弱者に対する優しさも持っている。

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クラスで起きたイジメ事件の犯人としてジェーン(シャイリーン・ウッドリー、中)の息子ジギーが何の根拠もなく犯人呼ばわりされたとき、マデリンは毅然として抗議する。正義感が強くて弱者に対する優しさに溢れている。マデリンが暮らす家は海沿いの豪邸だけど、貧しいジェーンの家を訪れても、見下す様子など微塵もないし、対等に仲良く付き合っている。だが、ライバルのレナータに対しては執拗な嫌がらせを平気でおこなう性格の悪さも同居している。

アメリカ人の我の強さというのでしょうか。もうね、自分でもコントロールできないぐらい感情が暴走している。理性的で頭の良い人たちがどうしてこんな‥‥と思うのだけど。

で、彼女の娘がまた問題児で。処女をネットオークションで売って、そのお金を恵まれない子供たちに寄付すると言い出す。極端すぎるぞ。将来、過激な活動家になりそう。この親あってこの子ありという感じで、実によいですね。

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あまりに感情の起伏が激しく、手の付けられない感じもあるけど、そこも魅力的。

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セレステ(ニコール・キッドマン)は、ママ友たちから羨ましがられる存在。ハンサムで高収入の夫、海辺の豪邸、かわいい子供たち、セレステ自身も弁護士としてのキャリアがある。すべてを手にしているように見える。そんな彼女も夫のDVに苦しんでいる。プライドが高すぎるのか、周りからどう見られるか怖いのか、問題を直視できずにいる。夫を憎みつつも愛しており、DV後に優しくなる夫を許してしまい、カウンセラーが夫を批判するとムキになって夫をかばう場面もある。彼女は問題を完全に理解している。それなのに、わかっていても抜け出せないどうしようもなさがある。

わかっていない人なら問題を指摘すれば済む話だけど、すべてわかっている人にはどう対処すればいいのだろうか。

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彼女の夫にも同情すべき部分があるように思えるのだ。夫婦そろってカウンセラーのところに通い、悩みを解決しようとしている。だが、暴力を振るうことはとめられず「自分の中に悪魔がいることは知っている」と口走る。子供たちには優しくて面白い最高の父親というのが皮肉にも思える。

物質的には十分に満たされ何もかも持っているのに、なぜこんなに生きづらいのか。不思議な気持ちになる。彼らの攻撃性の高さや平気で人を罵倒する傲慢さにはうんざりさせられるところもある。だが、彼らがときおり示す寛容さや優しさに心打たれるところもあるのだ。プラスもマイナスも大きい、とにかく派手な人たち。救いなのは、どの親も子供を愛していたことでしょうか。セレブの世界を垣間見れたようでとても面白かったです。後味も悪くない作品。お薦めです。


31
2019

パンとスープとネコ日和

2013年 / 日本 / 監督:松本佳奈、原作:群ようこ / 日常 / シーズン1(全4話)
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いつものかもめ食堂的なやつ。
【あらすじ】
サンドイッチとスープの店を開いた。



【感想】
小林聡美さんが出ている一連の作品『かもめ食堂』『トイレット』『めがね』『プール』『東京オアシス』『マザーウォーター』をかもめ食堂ものと呼んでいる。『かもめ食堂』『トイレット』『めがね』は荻上直子監督で、それ以外は別の監督が撮っている。でも、そこに流れるのんびりとした空気は似ている。好き嫌いがかなり分かれる作品で、何か事件が起こらないとイヤという人は避けたほうがいいかも。特に何も起きません。

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美味しい食事と温かみのある木製家具、穏やかな人たちとの静かな時間、そして小林聡美である。これぞ、いつものやつ。

アキコ(小林聡美)は堅実な仕事をし、編集者として着々とキャリアを積んでいた。しかし、ある日、経理部への転属を命じられる。アキコの心はポキリと折れてしまったのか、あっさりと退社を決意、母が遺した飲食店を改装してオープンする。

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パンとスープの店は繁盛し、軌道に乗っていく。母の時代から来ていた優しい常連客、編集者時代に世話になった先生、お向かいの喫茶店のおばちゃん、ちょっと変わった店員のしまちゃん(伽奈、左)、ガツガツしてない男前の坊さん、そして拾った猫。好きな物や人に囲まれて生きていくストレスゼロの理想の生活に見えるのだ。

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そんな世界、ありゃしないんだよ! ファンタジーですよ、ファンタジー。でもねえ、ここに憧れるというのがね、すごくわかるような気がする。

もうさあ、30歳超えてからがいろいろ大変じゃないですか。とりあえずなんとか仕事はしているものの、キャリアも積んでるんだかどうだかよくわからんし、周囲はどんどん結婚していく。SNSでは自分以外の人はみんな幸せそうな感じがして焦りだす。親や親戚はやたらと結婚をせかすし、周りのいい物件は全部売約済みで、残っているのは事故物件ぽいのばかりという。

他人から評価され、また他人を無意識に評価してしまうわずらわしさ、比較と評価の繰り返しが心を荒ませる。同窓会なんて絶対出たくない。部屋の中の物を全部バットでぶっ壊して、どこか遠くへ逃げたくなるじゃんかあ! ならん? あ、そう。

というですね、30代以上の女性の避難所的作品に思えるのだ。小林聡美のいいところは、そういった焦りをまったく感じさせないところ。半分死んでるのでは? ぐらい超然としている。周囲の人々も、うるさいことはまったく言わないし、彼女を温かく見守っている。

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このおばちゃん(もたいまさこ)はうるさいんだけど、実はいい人なんですよね。毎度毎度、いいキャラですよねえ。親戚のおばちゃんにそっくりなんだよなあ。

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それとこのシリーズに特徴的なのが性の臭いがまったくしないこと。全員、無性生殖で子供が生まれる世界のような。生臭さや恋愛の駆け引きに疲れてしまった人には、それでもいいのかも。知り合いの女性が「手だけ繋いで寝たい。セックスしなくていいから」と言っていた。疲れた人には、このドラマが沁みるのかも。

わずらわしいものをすべて排除した結果、作り上げられたのがこの独特でいびつな世界に思えるのだ。それが嫌かというとまったくそんなことはなくて、たまにこういった作品を観たくなるのです。好き嫌いあるかと思いますが、好きな人は何度も観てしまうんでしょうね。しまちゃんの不器用で正直な感じが良かった。フードコーディネーターの飯島奈美さんが作る料理はいつも美味しそうに見える。1200円なあ‥‥ちょっと高くない?

28
2019

クワイエット・プレイス

A QUIET PLACE / 2018年 / アメリカ / 監督:ジョン・クラシンスキー / ホラー / 90分
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こんなときだからこそ子供を産む。
【あらすじ】
音を立てるとモンスターが殺しにくる。



【感想】
盲目の老人に追いかけ回されるホラー『ドント・ブリーズ』という作品がありましたが、この映画は異常に耳のいい怪物が殺しにくる。人類は謎の怪物たちに駆逐されてしまい、絶滅の危機に瀕している。主人公家族は田舎で息を潜めて暮らしている。とてもミクロな物語で、どこがどう面白いというわけではないのですが雰囲気が好き。怖くはないかな。

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アメリカの静かな片田舎。80年代から90年代を思わせる街並み。どこか懐かしさを感じさせる。

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4人家族が無人のお店で生活物資をあさる場面から映画は始まる。アポカリプス映画にありがちな、ショッピングセンターで好きな物を好きなだけ漁る場面。ワクワクするんですよねえ。ダリオ・アルジェントの『ゾンビ』が最初なのかな。以降、かなりの映画で真似されていますけども。

この映画は、異常に耳のいい怪物がいる世界なので、登場人物がはしゃいだりすることはない。息を潜め、靴も脱いで裸足で、ひっそりと生活をしている。ワクワク感がない‥‥。靴を脱いでケガしないのかな。モンスターはバイオハザードに出てくるような、手足の長いヌルヌルした皮膚を持つクリーチャーみたいなもの。

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どこか懐かしさをおぼえるのは、文明から離れてかつてのアメリカの暮らしに戻ろうとしているからだろうか。食事の際には手を繋いでお祈りし、父は子に生き抜く術を教えようとする。スマホもPCもなく、家族だけで肩を寄せ合って暮らす姿はあまりにもシンプル。開拓時代のアメリカのようなイメージすらある。

モンスターを文明の暗喩とするならば、私たちはどんな田舎に篭もろうとも、もはや文明からは逃れられない。SNSで不用意なことをささやこうものなら、社会的に殺されてしまう。主人公たちはSNSなどのないかつてのアメリカの暮らし、一旦そこに回帰しよういう意思を感じるが、社会はそれを許さない。作る側は暗喩など意図してはいないだろうけれど、モンスターと家族の関係は世相が滲みでたものにも感じる。

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この映画でもっとも印象的だったのが母(左)の出産。普通に考えれば、音に敏感なモンスターが跋扈する世界で、泣き声をあげる赤ん坊がいることはマイナスにしかならない。家族全員が死んでしまう危険すらある。だが、この夫婦は危険を冒して赤ん坊を作るんですね。

どんな生きにくい世の中、子供を持つことがマイナスにしかならない世の中でも、子供を作って育てるということは当たり前の自然な営みであるというメッセージなのかな。効率、合理性、損得、そういったものに支配されがちではあるものの、人が本当に大事しなければならないものはそもそも何か、一度考えてみてもいいんじゃない? という作品なのかもしれない。

全然違ったりして。