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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2018

ハーフネルソン

half nelson / 2006年 / アメリカ / 監督:ライアン・フレック / ドラマ / 106分
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鬱屈を抱えたままに。
【あらすじ】
教師をやっています。でも、コカインやめられません。



【感想】
ライアン・ゴズリングは、いろんな作品に出ますねえ。みんな楽しめるものから、好きな人は好きという作家性の強い作品まで幅広い。この作品は好みが分かれそうな作品です。薬物中毒の中学教師と生徒の友情が描かれている。常にコカインで夢の中を漂っているような、気だるげな様子が印象的。

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ブルックリンの中学校で黒人やヒスパニックの子供たちに歴史を教えるダン・デューン(ライアン・ゴズリング)。型破りな授業で生徒からの人気は高いが、ドラッグに溺れ、自分をコントロールできずにいる。ある日、自身がコーチを務めるバスケ部の生徒ドレイ(シャリーカ・エップス)にドラッグを吸っている現場を見つかってしまう。そこから二人に奇妙な友情が芽生える。

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歴史教師ダンの鬱屈っぷりがねえ、なんでこの人はこんなに鬱屈しているのだろう。その原因がよくわからず、惹きつけられるところもある。人生へのあきらめや、やりきれなさを抱え、その逃げ道としてドラッグに溺れているのだろうか。

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父親から自分の勤める学校のことを「動物園」と揶揄される。たしかに彼が教える生徒たちの態度はひどい。公民権運動について教えても、寝ていて興味を持たない生徒もいる。彼らの両親や祖父母は差別に苦しんできただろうに、もはやなんの関心もない。そして自分の父親が差別主義者ということにも傷ついている。彼は自分を取り巻く環境と自分自身にゆるやかに失望しているように見える。それが彼の服装にも表れている。

だらしなく締められたネクタイ、はみ出たシャツ、ガムを噛みながらの授業。家の中も荒れ果てている。ただ、ライアン・ゴズリングがかっこ良すぎるせいか、だらしないかっこうがファッションにも見えるから困る。「これはこれでありだな」と思ってしまう。やはり、蛭子さんあたりにやってもらわないと。そうすれば嫌悪感いっぱいで観られるのに。

ダンは本当はものすごく真面目な人なのだろう。だから、夜にクラブでナンパした女性たちにも公民権運動の話をして、引かれてしまうのだ。彼が心底チャラチャラした人間ならば、そんな話はしないだろう。心の奥底にひたむきさを抱えつつ、その情熱をどこに向けてよいのかわからないやりきれなさから生活が荒廃しているのだろうか。

母親との会話で、両親の世代が「戦争をとめた」ことを評価している。これは恐らくベトナム戦争のことだと思う。世が世ならば自分も公民権運動の闘士として戦いたいという気持ちもあったのかもしれない。だが今や、差別自体はきちんと違法になっている。しかし、彼が教える生徒たちは差別に興味がない者たちもいる。おまけに自分の親は差別主義者である。自分にはその状況を変えるような力がない(と信じ込んでいる)。

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バスケットボールの試合中、誤審を繰り返す審判に、たまらずボールをぶつける場面がある。根底には強い正義感があるものの、やり方が無茶苦茶で、ドレイとの帰り道に「審判にボールをぶつけるようなことはいけない」と真面目に反省もする。

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ドレイには、兄の友人に麻薬の売人がいる。これ、アベンジャーズのファルコンじゃないか。キャプテンアメリカの親友の。うう‥‥、売人にまで身をおとすとは。

で、ダンはドレイのことを心配して「売人とつきあうな」と注意するんですね。ドレイが麻薬取引に巻き込まれて、彼女の兄のように刑務所に収監されることを恐れている。教師としてのまともな一面を持ちながら、ダンはこの売人から麻薬を買い続ける。そして、小遣い稼ぎに麻薬を届けに来たドレイは、ダンが麻薬を買っていることを知る。

そのときのダンの表情がなんともねえ。薄く微笑んだような顔で「だってしょうがないだろ」とでも言うような。人のどうしようもない弱さを見せられたような気持ちになる。ドレイは、ダンの弱さを見て失望するのではなく、どん底からの立ち直りを促す希望のある終わり方になっている。

ダンは小説家になる夢を持っている。だが、理想を持ちつつも何もできずに麻薬へ流れてしまう。これが麻薬ではなくアルコールとかギャンブルとか、そういう人は多いように思える。それで本人が「俺の人生はこれでいいんだ。楽しいんだ」と、心からそう思っていてくれればいいのだけど、そうじゃなくて鬱屈している様子が見て取れるからつらいのだ。どこかで「俺は本当はこんなものじゃない」と思っているのが透けて見えてしまう。

「half nelson」(羽交い締め)というタイトルが少し変わっている。通常、プロレスでは「ハーフネルソン」ではなく「フルネルソン」が多い。

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このまま後ろに投げるとフルネルソンスープレックスになる。日本ではドラゴンスープレックスという言い方のほうが一般的ですけど。これを小橋建太選手は片腕だけロックしたハーフネルソンで投げていた。ハーフネルソンは安定しないし、相手に逃げられやすくて難しい。

スープレックスの話はどうでもいいとして、ダンの半分を羽交い締めにしていたものはなんだろうか。親なのか、劣悪な教育環境なのか、麻薬なのか。彼を羽交い締めにしていたのは「どうせこのままで、何も変われない」と思い込んでいる自分自身だったように思える。それを否定してみせたのがドレイで、彼女は麻薬の売人との付き合いを断ち、ダンの身なりを整えてやり直させようとする。ダンと同じように自分の半分を拘束されているように見えたドレイは、羽交い締めから抜け出していたのだ。

人は本気で抜け出そうとすれば、小橋建太のハーフネルソンからも抜け出せるのだ。

実際、抜け出せないけど。力が違うから。ぶん投げられて首の骨が折れる。

酷評が目立ちますが、そんなに悪い作品ではないと思います。やる気のないゴズリングが観たい人は是非是非。ドレイを演じたシャリーカ・エップスが良かったですね。しっかりした子だよお。

16
2018

ポーカーナイト 監禁脱出

POKER NIGHT / 2014年 / カナダ、アメリカ / 監督:グレッグ・フランシス / サスペンス / 104分
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先輩刑事の自慢話はあんまり役に立たない。
【あらすじ】
監禁されました。



【感想】
「ソウ」などの影響も感じるデスゲーム系作品。同じ色合いを感じます。そういうのが好きな方にはお薦め。斬新な拷問もあります。いいぞお。グレッグ・フランシス監督は、まだこの作品しか撮っていませんが、これからいいサスペンスやホラーを撮りそうで楽しみ。光るものを感じます。「ゲット・アウト」もそうですが、まだまだ新しい物はあるのだと嬉しくなる。

「1年分の実務経験に匹敵する」と、先輩が豪語する武勇伝、というか自慢話を聞きながら、ポーカーに興じるポーカーナイト。そんな風習あるのか知らんけど。ポーカーナイトで語られる事件と、主人公スタンが監禁されている現場が交互に映し出されます。先輩たちの教訓を活かして脱出するのですが、先輩たちの話、あんまり役になってないような‥‥。教訓と脱出の因果関係が弱いように感じた。

は! まさか、これは「先輩の話は自慢ばっかで役に立たない」とか、そういう真理?

時系列も行ったり来たりするのでわかりにくい。

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こちら犯人ちゃん。恐竜のマスクかな。和んでおります。

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てっきりポーカーナイトで語っている同僚たちの誰かが犯人かと思ったら、そんなことなかった。

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優秀な先輩刑事役としてロン・パールマン(左)が出ています。あいかわらずパンチの効いたお顔立ち。知性派ゴリラ。有名なのはこの人ぐらいかなあ。あまり有名な俳優が出ないほうが、展開が読みにくくていいですね。

主人公のスタン(ボー・マーショフ、右)は全身を板に接着剤で固定される拷問を受けたり、いろいろ大変。出尽くしたかと思えるほどいろいろな拷問がありますが、その手があったかという。参考になるなあ。

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痛めつけられすぎた主人公ちゃんは、幻覚を見ちゃったり。ロン・パールマン、笑ってる場合ではない。

犯人はサイコパスですが、動機は納得可能なもので、かつトリックもひねりがあって良かったです。犯人はうまいことマスクを使っている。2を予定した作りになっていますね。「ソウ」のようなシリーズになりそうな予感。ちょっと痛そうな描写が多いので、そういうのが苦手でない人にはお薦めです。


14
2018

アシュラ

아수라 / 2016年 / 韓国 / 監督:キム・ソンス / 犯罪 / 136分
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あらゆる方向からやってくるパワハラ。パワハラサンドイッチ。
【あらすじ】
市長の手下をやっていたら、検察からも手下になれって言われました。



【感想】
「アウトレイジ」のような全員悪人映画。「アウトレイジ」は悪人といっても、ビートたけしや椎名桔平のように筋を通す悪人もいる。でもこの映画は本当に全員悪人という。小悪党から大悪党まで、幅広い品ぞろえ。エグい暴力描写、どうやって撮ったのかわからないすさまじいカーチェイス、徹底した上下関係という、濃厚な韓国映画でした。面白かったですが、濃厚すぎるため、人を選ぶ映画だと思います。

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刑事のハン・ドギョン(チョン・ウソン)は末期癌に侵された妻の治療費稼ぎを理由に、市長の犯罪もみけしを請け負っていた。しかし、市長を検挙しようとする検事に目を付けられ、脅迫を受けて検察側の内通者となる。板挟みになりました。

チョン・ウソン、男前なんですよねえ。角度によってトム・クルーズとか西島秀俊に似ている気が。そんなことないのかなあ。「監視者たち」では凄腕の殺し屋を演じており、完全に主役をくってしまいました。この映画は「監視者たち」で見せたような格闘場面は少ないです。チョン・ウソンはもっとやれるのに! と勝手に悔しがっていた。

ガラスのコップをバリバリ食べるところは、引きました。「おおぅ‥‥、おまえ‥‥」ってなる。

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そして、こちらが悪の市長パク・ソンベ(ファン・ジョンミン)。好きなんですよねえ、ファン・ジョンミン。悪人を演じてもどこか愛嬌があって、やっぱり魅力がある。

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やっぱり顔が面白いのかな。

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市長への暴力を演出するため、建設反対派の人たちにわざと暴力を振るわれるのだった。自分から相手の持つカッターナイフに突っ込んでいきます。すごい根性だな。そしてやっぱり顔が面白い。

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韓国映画でよくあるのが上下関係の厳しさで、この映画でも滑稽に描かれている。下の立場の人に対するパワハラっぷりがねえ、ものすごいんですよ。丁寧語ながら部下を罵倒しまくる検事キム・チャイン(クァク・ドウォン、左)がいいですね。札でハンの顔をネチネチと叩きまくるところとか。嫌な検察というのは本当に多く見かけますが、韓国の検察ってそんなにひどいのかな。

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これは部下にパンツを履かせてもらっているパク市長。上下関係の厳しさというか、何をやってるんだという。介護? プレイ?

市長、検察側からすさまじい圧力をかけられる刑事のハン。だが、ハンはハンで、自分より立場の弱い人間(「棒切れ」というひどいあだ名)を虐めているのだ。総パワハラ映画である。

カーチェイスの場面があって、二台の車が横に並んでぶつかり合っているのだけど、カメラが密着した二台の車を滑るように左右に移動しているんですね。あれ、どうやって撮っているんだろう。フロントガラスのかなり近いところから撮られている。すごい映像ですね。

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そして、これまた韓国映画で多い、兄弟分の描写。自分がかわいがっていた部下をハンはパク市長に紹介。弟分は市長の元で頭角をあらわし、グングンと力をつけてくる。そうすると、昔の兄貴分が鬱陶しくなってくる。対立する二人。

やがて弟分は命を落とすものの、「あんたといたときが一番楽しかった」みたいな態度で死んでいくんですよね。こういうの本当によく見かけるなあ。嫌いではない。

かなりの血みどろ映画で、なかなかの出血量。なにせ全員死ぬ。凄惨な暴力、凄まじいパワハラがありつつも、映画全体に漂う不思議な滑稽さもある濃厚な韓国映画でした。主人公がいつも殴られておる。面白かったです。

予告編を見ると、ハンが「俺はどこで間違っちまったんだ‥‥」と嘆いているんですけど、最初からだろうが。何一つ正しいことをやらずにここまで来てしまいました。気づきなさいよ。