Top page  1/180
26
2017

ザ・ウォッチャー

THE WATCHER / 2000年 / アメリカ / 監督:ジョー・チャーバニック / 97分
d3_.jpg
連続殺人鬼は、なぜ踊るのか。
【あらすじ】
刑事にかまってほしいので連続殺人する。



【感想】
理想的な連続殺人鬼というと、アンソニー・ホプキンスが演じたレクター博士のように冷酷で頭が切れるというのはもちろんである。だけど、もっとも大切なのが独自の哲学や美学を持っていることではないだろうか。

dfc.jpg

キアヌ・リーブスはこの映画で珍しく悪役を演じた。それも冷酷な連続殺人鬼という、今までの代表作「スピード」「マトリックス」で演じた役とはまったく異なるものだった。で、この犯人というのが、哲学や美学という前に、行き当たりばったりな犯行を繰り返すポンコツなのだった。うーん。

da_201705262251183a6.jpg

FBI捜査官ジョエル・キャンベル(ジェームズ・スペイダー)は愛する人を連続殺人鬼デヴィッド(キアヌ・リーブス)に殺された過去を持つ。彼は逃げるようにロサンゼルスを離れ、シカゴへと移り住んだ。だが、デヴィッドはジョエルを追ってシカゴへとやってきたのだった。なんで?

デヴィッドがそうまでしてジョエルにつきまとうのか、今一つわからないんですよねえ。もう彼女殺したし、十分じゃない? とりあえず、スーパーかまってちゃんであることは間違いない。かまってほしさに孤独な女を狙って犯行を繰り返すデヴィッド。

踊りが好きで、ターゲットを殺す際は相手と踊ることがある。椅子に縛られた女性相手に「君も踊りたいんだろ」と、わけのわからないことをいうのであった。

クリップボード06g

連続殺人鬼の持つ変わった癖ということなのだろう。椅子を持って、右へ左へグルングルンと大移動である。

クリップボード04h 
クリップボード08h

迷惑。このデヴィッドの奇行を観ると、恐怖というより「何をやっているんだ、おまえは」ということしかない。

クリップボード02h

デヴィッドは踊りも気になるが、犯罪そのものの無計画ぶりも気になる。他の女性を襲ったときは、あらかじめ警察に犯行予告を出している。彼女の写真を送り付け、警察は公開捜査に踏み切る。テレビで彼女の映像が流れるが、なぜか誰も彼女について知らないんですね。普通に写真屋で働いているのだけど。結局、彼女はデヴィッドに殺されてしまうが、これは彼女が見つかって保護されていたらどうなったのだろう。予告が果たせなかったのではと心配になる。しかも、危うく捕まりそうになるし。本当にね、しっかり計画を立ててほしい。

この映画の奇妙なところは、女性を狙った殺人鬼なのだけど犯人は被害者に性的暴行を加えない。女性を狙った殺人鬼が必ず性的暴行を加えるというのは偏見かもしれないが、それでもやはりそういった傾向は多い。デヴィッドは殺すことそのものが目的のようなのだ。だとすると被害者は女性でなくてもいいように思える。

この作品が公開される1年前にはキアヌ・リーブス主演の「マトリックス」が公開され、大ヒットした。それなのに性的暴行などをして、キアヌのいいイメージを崩すわけにはいかなかったのかもしれない。キアヌには爽やか殺人鬼でいてもらわなくては困るという大人の事情があったのか。だが、何もしないとなると殺人鬼としてインパクトが弱い。そこで、殺す前に一踊りするという変な癖に落ち着いたのだろうか。

だとしても「何をやってるんだ、おまえは」という感想しかない。踊ってる場合ではない。真面目に犯罪をやってほしい。どうも殺人鬼として中途半端に思えるのだった。


2017年5月23日~2017年6月22日の期間、GYAO!で無料配信しています。
26
2017

エンド・オブ・キングダム

LONDON HAS FALLEN / 2016年 / イギリス、アメリカ、ブルガリア / 監督:ババク・ナジャフィ / テロ / 99分 
dAL__20170526102327b25.jpg
テロリストはどんな殺し方をしたっていい! アメリカは正義!
【あらすじ】
大統領がテロリストに襲われました。



【感想】
前作「エンド・オブ・ホワイトハウス」がさらにパワーアップして帰ってきました。前作を観ていなくても楽しめると思います。戦っているだけなので。わかりやすくてよい。

アメリカは、世界でテロを扇動しているアミール・バルカウィに対してドローンによる空爆を行った。民間人をも巻き込んだ空爆だったがバルカウィ殺害に失敗。空爆から2年後、イギリス首相が急逝。各国首脳が弔問のためにロンドンを訪れた際、テロリストから襲撃を受ける。シークレットサービスであるマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)は大統領を守りながら逃げ続ける。

cAL__201705261023287df.jpg

ド派手なアクション映画に仕上がっていました。テロリストは全員悪い奴、アメリカは正義というわかりやすい構図。

sL__201705261023293bd.jpg

アメリカ副大統領の役でモーガン・フリーマンが出ている。アメリカのプロパガンダ映画といわれてもしょうがない映画にモーガン・フリーマンが出ていたのが意外だった。出演作をみれば、その俳優がどういう考えを持っているかはなんとなくわかる。スティーブン・セガールやシュワちゃんが出るなら、そりゃそうだと思うのだけど、とてもモーガン・フリーマンが出るような映画には思えないのだ。

だが、映画がすすんでいくうちに納得した部分もある。テロリスト=悪、アメリカ=正義、と単純に描かれているおかげで、勧善懲悪の時代劇のような感覚で観られる。ここまで強引だとプロパガンダにはならず、純粋な娯楽映画として楽しめる。アクション映画としての出来はよく、純粋に楽しめました。

sd_AL_.jpg

アメリカ大統領(アーロン・エッカート)は、まるでバニングの部下のような‥‥。大統領なのに。逃げている最中の「本当に駄目なやつだな、おまえは」という扱いが面白い。

シークレットサービスのほうが偉そうなのだ。副大統領に対しても、バニングは同僚のような話し方をする。本当にあんなことってあるのだろうか。バニングの態度がでかいだけという説も。

見どころもたくさんございました。ヘリで逃げる場面が良かったですね。フレアも出し尽くしてしまい、僚機が大統領機の盾になって撃墜される。盾になるときも、何もいわずに死んでいく。「家族に愛してると伝えてくれ」とか、いいそうなのに。アメリカ人、そういうの大好きじゃん(偏見)。

何もいわないところに、かえって切なさを感じましたよ。

res.jpg

フレアというのは、赤外線ホーミングミサイルを攪乱するために出されるもの(上の写真)。この写真は映画とは関係ないですが。

カーチェイスやテロリストのアジトへの襲撃も迫力があった。日本の首相が死んでいくところも、見どころ。他の国の首脳に比べて派手な死にっぷり。しかし、SPが一人(運転手)しか付いてないんですよね。うーむ、だいぶ節約しましたね。タクシーみたいだな、と思っているうちに死んだ。

ロンドンが景気よくドッカンドッカンいくので楽しめました。ジェラルド・バトラーが暴れまわり、何も考えずに観られる爽快な映画です。もうちょっと考えたいぞという人には「ドローン・オブ・ウォー」がお薦め。民間人を巻き込む空爆について正当性があるか悩み、おかしくなっていく軍人の話という。こちらは観ると憂鬱になります。




24
2017

血と骨

2004年 / 日本 / 監督:崔洋一、原作:梁石日 / ドラマ / 144分
6V1_.jpg
だいたい殴ればうまくいく。
【あらすじ】
周りの人間を力ずくで支配しようとした男の人生。



【感想】
ワクワクしたり、主人公の生き方に感動したり、そういった映画はもちろん大好きだけど、最近惹かれるのは「とんでもない人」である。もう本当に無茶苦茶な生き方をしているなという。その強烈なエネルギーにあてられたようになってしまう。主人公の金俊平には尊敬できるところはまったくない。ただ、あまりにも眩しすぎて直視はできないが、かといって目を逸らすこともできない不思議な魅力がある。

クリップボード06h

1923年、済州島から日本へ渡ってきた金俊平(ビートたけし)。無理やり強姦した妻と結婚し、愛人は家の正面に住まわせる。かまぼこ屋を経営し、文句をいう従業員には顔に炭を押し付けていうことを聞かせる。気に入らないことがあれば酒を飲んで暴力を振るう。とんでもない人間なのだが、ただひどい男というわけでもなさそうなのだ。

クリップボード089

癌になった愛人を見捨てずに看病してやる優しい一面も見せる。金盥に入れて体を洗ってやる。そうかと思えば、愛人の看病をさせるためにさらに愛人を雇うという。優しいのかなんなのか、よくわからない。

クリップボード02e

借金の取り立ては鬼気迫るものがある。自分の腕を茶碗で切って血を注ぎ、債務者に飲ませようとする。
「さあ、これ飲めぇ! わしの金を食うものは、わしの血を吸うのと同じじゃあ!」
あまりの剣幕に凍りつく債務者。そりゃそうなるよね‥‥。

うーん、前衛的な取り立て。怖いよー。もう、ほんと頭おかしいよー。この人からだけは借りてはいけない。アコムかアイフルにしとこ。血を飲まそうとはしないので。

クリップボード04hh

朝鮮人集落の様子も興味深い。豚の解体は、これは本当に解体したのかな。心臓を刺すと鮮血が滝のように流れる。お腹を切り裂いて灰色の内臓を取りだす。俊平は、豚の生肉を発酵させたものが好物。蛆虫がわいた生肉をむさぼる姿はまさに怪物。もう、絶対に勝てる気がしない。

俊平はただの暴れ者かといえば、よくわからないところがある。自分の娘を階段から突き落として歯を折ったかと思えば、娘が嫁ぎ先の夫にいびられて自殺したときには、葬式に乗り込んでこの夫をたこ殴りにする。

なんだかんだいって娘のことを愛していたのだ、というのは違う気がする。俊平には愛とか思いやりとか、そんな甘ったるい言葉はないように思える。タイトルにあるように、まさしく血と骨なのではないか。自分の血と骨を分けた存在を殺されたため、その仕返しをしただけという。娘を半殺しにするのも、自分ならば良くて他人がやることは許さない。所有物ということかな。

今まで何度となく対立してきた息子に、自分の商売を継がせようとするのも不可解だった。息子は父親を憎んでいるので当然断るのだ。金と女を得るためなら手段を選ばず、すべてを暴力で支配してきた男が、最後には肉親の情を求めたのだろうか。

息子には拒絶され、愛人には金を持ち逃げされ、金俊平は失意のまま北朝鮮へと帰る。その際には、貯金七千万、時計、車などを国に寄付するのだ。あれほど金だけを頼みに生きてきた男がどうしてなのだろう。普通の人間であれば、せめてもの罪滅ぼしということも考えられるが、金俊平には似合わない。すべてがどうでも良くなってしまったのか。どうしても理解できない人間というのがいるが、まさに金俊平がそうですね。暴力を言語とするような人間を演じると、ビートたけしは本当にうまいなあ。

クリップボード02g

一カ所、気になったのが妻(鈴木京香)を犯すところ。妻が脱がないんですね。これは、わたしが鈴木京香の裸が観たいとか、そういった下劣な感情でいっているのではない。鈴木京香の裸が観たいとか、そういった下劣な感情でいっているのではない。鈴木京香の裸が観たいとか、そういった下劣な感情で。何回いう気だ。

愛人二人は景気よく脱いでいるというのもあるけど、金俊平の獣性を際立たせるためには脱いだ方が自然だったように思える。脱がないのは事務所の意向なのかな。滅茶苦茶な男なのに、ちょっと気をつかって襲っているような変な感じになってしまう。

万人にはとても薦められない、怪物を観たい人向けの映画。当時の大阪朝鮮人社会の様子が描かれているのもいい。この時代を美化する気も、金俊平を賛美する気も毛頭ないが、とにかく過剰でエネルギーに溢れていたのだと思う。現代にはいない人だろう。