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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2019

ネオン・デーモン

THE NEON DEMON / 2016年 / デンマーク、フランス、アメリカ、イギリス / 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン / サスペンス / 117分
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美に憑りつかれた悪魔たち。
【あらすじ】
モデルとして脚光を浴びたら嫉妬されて大変。



【感想】
よくわからないものを撮らせたら右に出る者はいないニコラス・ウィンディング・レフン監督です。今回もよくわかりませんでした。わからないけど面白いという。モデルの世界って、こんなん?

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16歳の美しい少女ジェシー(エル・ファニング)は、ジョージアからロサンゼルスへ出てきたばかり。インターネットで知り合いになったカメラマンに撮影してもらった写真を手にモデル事務所へ乗り込むと、彼女の魅力に気づいた担当者は即座に契約。スターダムへの道を上り始める。

エル・ファニングはダコタ・ファニング(『宇宙戦争』『マイ・ボディガード』)の妹なんですね。お姉ちゃんより目立ってきましたね。

嫉妬渦巻くモデルの世界、美をめぐる狂気が描かれております。思えば美というのは本当に不思議なもの。才能というものはいろんな分野がありますが、美だけが他の才能と明らかに異なる点は、才能を隠しておくことができないことだと思う。勉強や運動ができるかできないかは見た目だけではわからない。ところが美は見た目そのものが才能で、隠すことができない。自分も相手も傷つけかねない抜き身の刀をさげて歩いている。才能をしまう鞘がない。

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ジェシーのトントン拍子の出世は嫉妬の対象となる。彼女の仲間(嫉妬の塊)たちは、全身を整形したり、食べたい物も食べずにがんばっている。だが、努力や内面の美しさなんていらない世界なのかもしれない。あまりに残酷。オーディションでは、デザイナーは見込みのないモデルには一瞥もくれない。面接の担当者も一目見ただけで「あなた、帰っていいわ」と言う。挨拶すらない。私には落とされたモデルと、持て囃されるジェシーの差はまったくわからない。だが、見る人が見れば一目瞭然なのだろう。

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美というのは、いったいなんなのだろう。美は子孫を残す可能性を増やすため(条件のいい男をつかまえやすくする)と解釈していた。今でもその考えは変わらないのだけど。この映画には美を追い求める女たちは描かれるが、男はあまり出てこないんですよね。カメラマンやデザイナーはいるものの、彼らはジェシーの美を世間に知らしめる装置のように見える。美が男を惹きつける餌としてではなく、美としてのみ完結している。美の追求こそが究極の目的となっている。

ただ、ジェシーはメイクをしているときより自然なほうがずっと美しく見えるのだけど。パリコレ的なセンスが私にわからないだけかも。

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こういうのがね、なんだかよくわからんのだ。散弾銃を持たせたら、女・渡哲也みたく見えるけど。いいのかコレ。美ってなに‥‥。

モーテルに山猫が出たり、花束を渡されて卒倒したり、わけがわからないのだった。あの獰猛な山猫はジェシーの精神の変容を表わしているのだろうか。内気な彼女がモデルとしての階段を上り始め、最終的には「みんな、わたしになりたがっている」と天狗になってしまう。美が持つ魔性が彼女を豹変させたのか。

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今一つ売れてないモデル二人組(ジェシーに嫉妬中)が良かったですね。表ではジェシーと仲良くしつつも、言葉の端々がトゲトゲしくて売れたいオーラが出まくっている。最終的にはジェシーを食べてしまう。ムシャムシャ。美しくなるためにはまさに手段を選ばない狂気。いいぞお。

私が子供の頃よりも、世間の美に対する感覚はずっと鋭敏になっている。楊貴妃が美容のために真珠を食べるなど、かつては美の追求は一部の権力者のみの特権だった。今では女性は年齢を問わず美しさを求めているように感じる。70代向けの美容健康食品の宣伝も当たり前にやっている。男の目にどう映るかなどどうでもよく、同性の中で自分がもっとも美しいはず、という戦いですらない。そういった争いは過去のものでしかないのか。とりつかれたように究極の美を目指す。美容中毒というようなものを感じる。行き着く先には何があるのだろう。それが美にとりつかれたものたち『ネオン・デーモン』ということなのだろうか。

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そしてキアヌ・リーブスがなぜかチョイ役で出演。モーテルの管理人(性格悪い)でした。この役にキアヌいる? 本当に不思議な映画だったなあ。

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不思議な映像が観たい方、ファッションに興味ある方は是非。血や死体もあり、ちょっとグロい描写があります。


16
2019

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

ABOUT TIME / 2013年 / イギリス / 監督:リチャード・カーティス / SF、恋愛 / 123分
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私的なことにタイムスリップを使いた~い!
【あらすじ】
タイムトラベルしてうまいこと人生を送りたい。



【感想】
監督は『ラブ・アクチュアリー』のリチャード・カーティス。

SF映画はどうもテーマが壮大になりがち。それはそれでいいものの、こぢんまりしたものがあってもいい。透明人間になれる『インビジブル』という映画があった。天才科学者が透明人間になれる方法を開発したが、やることは美女の寝室に侵入するだけという‥‥中二か! 天才科学者っていったい‥‥。そういう映画もいいではないか。

国家機密を探るとか、世界平和のためとか、そういう方向に能力を使わないのが偉い。この映画も、女の子と付き合いたいという、そのためだけにタイムトラベルを繰り返すので偉い。私利私欲でゴー! という潔さ。

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ティム・レイク(ドーナル・グリーソン、右)はイギリスのコーンウォールに暮らすごく平凡な青年。21歳になったとき、父から一族の男にはタイムトラベル能力があることを明かされる。その能力を利用して理想の女の子をくどいていきます。

ヒロインはレイチェル・マクアダムス(左)。『きみがぼくを見つけた日』もタイムトラベルをからめた恋愛物語でしたね。好きなのかな、こういうの。

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ティムの父親(ビル・ナイ)がとても良かったですね。この人、渋いんだけど本当にお茶目でねえ。たまらないですよ。親子で卓球をやる姿がとても楽しそうで、観ていて嬉しくなる。

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ティムのタイムトラベル能力は過去にさかのぼれるが未来には行けない。過去に行ったら、そこからまた人生をやり直すんですね。面白かったのが、ティムの子供が生まれる前にタイムトラベルして人生をやり直すと、生まれてきた子供の顔が違うという。妻が浮気をしていたわけではなく、違う精子が卵子に入ることによって別の子供になってしまう。同じ時間、場所で性行為を行わなくてはならない。

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ティムは最終的にはあまりタイムトラベルを使用しなくなる。父親が病気になり、また少年時代に戻るというのはあるけど。そこから何十年もやり直すって‥‥なかなかである。なにげない日常が幸せ、というのは本当にありふれた結論ではあるものの、たしかにそうなのかもしれない。ティムの場合は父親と海岸で遊んだ日だったのだろう。

生きていればテロ、大事故、自然災害などがあると思いますが、ティムはそういった大事件について一切、警告を出す様子もない。悩む様子すらない。100%自分のためだけにタイムトラベルを使うのだった。そういうミクロなタイムトラベルものもあっていいのかもしれない。SFというより恋愛要素が強めの映画でした。面白かったです。ティムのなんとなく垢抜けない様子も微笑ましい。


13
2019

博奕打ち 総長賭博

1968年 / 日本 / 監督:山下耕作 / 任侠 / 95分 
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杯を交わした兄弟分でも組のためなら殺らねばならぬ。
【あらすじ】
暴走する兄弟分をとめたい。



【感想】
最近ではめっきり見かけることも少なくなった任侠映画。跡目争いから抗争になるのですが、ストーリーがいいですねえ。三島由紀夫がギリシャ悲劇のようだと評したとか。ギリシャ悲劇ってこんな感じだっけ‥‥?

ま、感情が濃密な人ばかり。感情もそうだが顔も濃いよ。たいへんよろしいですね。

天竜一家の組長荒川が倒れ、跡目問題が浮上する。跡目に推された中井信次郎(鶴田浩二)は辞退。この人は最初から天竜一家にいたわけじゃないのかな。いわば外様というか。渡世の義理を通し、遠慮して辞退したように見える。

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そして次に候補に上がったのがこの人。

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松田鉄男(若山富三郎)。柳沢慎吾さんのモノマネが面白かった。本当にねえ、迫力あるんですよねえ。ところが松田は服役中、組のトップが現場にいないのはまずいということでその下の石戸幸平が組長の座に就くことになる。これが松田は面白くないんですね。結局、自分がなりたかったってことだけど。松田にはそういうところがある。暴れ者だからまったく人の話を聞かない。

松田は中井を慕っていて、中井の言うことだけはかろうじて耳をかす。中井が組長になれば丸く収まったのだが、中井は中井で頑固だから自分が組長にはならないのです。中井がねえ、中間管理職みたいだよ。中井は組織全体のことを考えているのだけど、松田は暴走するわ、オジキ連中は勝手なことばかり言うわ。松田の猪突猛進ぶりは微笑ましくもあるものの、自分のやり方を通すことしか考えていない。

ただ、それぞれが自分の中に正義や道義を持っていて、それが折り合わずに対立するという構図が良かったです。松田の子分である音吉(三上信一郎)が暴走し、石戸を殺そうとするがそれも松田に組を継いでほしいからであり、音吉の暴走の責任を松田がとろうとする姿もいい。

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組が割れるよう、裏で糸を引いていたのが実はこの人(金子信雄、右)なんだけど。顔が面白くていいですねえ。ニコラス・ケイジばりの面白い顔。きっちり制裁されてました。

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中井や松田を支える女たちも芯が強くて良かったですね。藤純子さんが楚々として美しい。和服の着こなしがすごくすてきに見えます。うなじの美しいこと。

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跡目を継げなかった松田は石戸を殺そうとする。石戸が車の後部ドアを開けると、待ち伏せしていた松田がのっそりと出てくるのですが冬眠から覚めた熊のような迫力。ホンモノに見える。松田が怖くてたまりません。

任侠という言葉が生きていた最後の時代だったのかもしれませんね。面白かったです。