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07
2018

ゲーム・オブ・スローンズ シーズン1

GAME OF THRONES / 2011年 / アメリカ / 製作:デイヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス、原作:ジョージ・R・R・マーティン / 中世、ファンタジー / 全10話
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血生臭さ漂う中世の物語。
【あらすじ】
「王の手」として王を補佐する。


【この作品を好きな人が、好きそうな作品】
銀河英雄伝説、ロード・オブ・ザ・リング


【感想】
中世ヨーロッパの世界を思わせるファンタジー。架空の大陸ウェストラスの覇権をめぐって、一癖も二癖もある登場人物たちが刃を交え、ときには手を取り合い、権謀術数の限りを尽くして相手を陥れる泥沼の群像劇。とにかくゴチャゴチャしていて、それは人間関係もそうですが、人の感情の一つ一つが濃い。野望、嫉妬、憎悪、愛情、すべてが濃くてギトギトしている。

あらゆる具材を鍋に放り込んで煮込み、最後まで形が残っていた具が勝ちというゲームを観ているよう。

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雰囲気がまずすばらしい。時代の空気を感じられる作品。歴史小説を読んだときに感じるのは、現代との価値観の違いで、映像化されたときにはその感覚が失われてしまうことが多い。当たり前だけど、現代寄りの価値観で作られているんですよね。少しきれいすぎるというか。そういった違和感がない。

三国志に次のような話があったと思う。一人の忠臣がおり、彼は暗君に政治を改めてもらおうと、自分の体を門に吊り下げて抗議する。君主が通り過ぎるとき「もし政治のやり方を改めないなら、自分でこの縄を斬って死ぬ」と言う。君主は忠臣の諫めを無視して通り過ぎてしまう。家臣は縄を斬り、地面に叩きつけられて死んでしまう。のちにこの国も滅びたように思う。

頻繁に命のやりとりが行われた時代の価値観は、現代とは大きく異なるように感じる。現代人にはなかなかついて行けないほどの過激さ、極端さなのだが、そこがまた魅力でもある。その濃密さと同様のものを感じる。感情の激しさもだが、残酷で野蛮な風習も多く残っている。男女差別も激しく、ときに女が所有物のように扱われる。そして「家」というものに、非常に重きがおかれる。現代人ともっとも違うのが、家に対する感覚だと思う。家のために結婚し、家のために死ぬことが当たり前の時代なのだ。性についての生々しさもかなりのもの。そういった時代の匂いというより、臭いといったほうがいいのかな、生臭く生命力に溢れた人々がすばらしい。

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鎧兜やドレスなどの衣装、宮廷や城塞の様子も胸が躍る。華美でありながら、どこか寒々しさも感じさせる。なによりすばらしいのが登場人物の描き方。ドラマは映画よりも時間がとれるので、じっくりと人物が描写されるのがいいですね。

ただ、この複雑さ、錯綜した人間関係がネックになって敬遠してしまう人もいるかもしれません。そもそも私は登場人物の名前が憶えられませんでした。実に気の毒な頭。シーズン1を観終わっても、今一つ誰が誰かわからないという。シーズン2ぐらいまで我慢して観てもらうと、頭の中に人物相関図ができてくるとは思います。最初は、3つの勢力があるんだな、ぐらいでいいと思います。

・スターク家(北の人たち、主役っぽい。いい人が多いけど、わりとだまされがち)
・ラニスター家(金持ち、嫌な人が多い)
・ターガリエン家(アフリカっぽいところに亡命、女王になる)

かなり残酷な描写(首を切って舌を抜く)とか、性描写も多く、人によっては嫌悪感があるかもしれません。でもねえ、シーズン2の後半あたりからかなり面白くなってきますよ。もうやめられないとまらないという。戦国時代ものが好きな人は、はまると思います。

適当に人物紹介。

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スターク家の当主、エダード(ショーン・ビーン)。「ロード・オブ・ザ・リング」のボロミアですね。王を補佐する「王の手」としてロバートを支える。だが、かつて共に戦ったロバートは酒に溺れ、人が変わってしまっていたという。ヨヨヨ‥‥。

名君の資質がある人だと思います。

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スターク家の子供たち。それぞれ成長していく様子がいいんですよねえ。左から、ジョン・スノウ、ブラン、ロブ。

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ラニスター家、王妃であるサーセイ。もう、この人の性格の歪みっぷりが最高。子供への溺愛っぷりもそうですが、腹立つわー。ほんと腹立つわー。また、この人の子供のジョフリーのサディストっぷりといったらもうね‥‥。

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性格最悪の皮肉屋と見せかけて、実はいい人というティリオン。シーズン2まで観ましたが、この人、最高じゃないですか。皮肉ばっかり言ってるんですけども、すごくかわいいんですよねえ。ティリオンは小人症という病気で、身長が人の半分ほどしかない。強烈なコンプレックスを抱えているが、その分、虐げられた人間の苦しみがわかる。シーズン2後半のシェイとのやりとりがねえ、とても良かったですね。好き。

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ターガリエン家のデナーリス。やたら景気よく脱いでくれるお色気要員かと思いきや、女王になってからは芯の強さを見せて成長していく。立場が人を作るのだなあ。お付きの渋めの人も良いですね。

Amazonプライムでシーズン7まで観られます。好きな人は本当に好きという作品だと思います。今までに観たファンタジー作品の中で、最高の作品になるのではないかという予感がある。早く続きを観なければ。


06
2018

ワイルド・スピード ICE BREAK

THE FATE OF THE FURIOUS / 中国、アメリカ、日本 / 監督:F・ゲイリー・グレイ / アクション / 136分
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ファミリーは映画を超えて。
【あらすじ】
チームのリーダーだったドミニクが裏切りました。でも、みんな、どこかで信じてる。



【感想】
ワイルド・スピードシリーズもいよいよ8作目。

1 ワイルド・スピード
2 ワイルド・スピードX2
3 ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT
4 ワイルド・スピード MAX
5 ワイルド・スピード MEGA MAX
6 ワイルド・スピード EURO MISSION
7 ワイルド・スピード SKY MISSION
8 ワイルド・スピード ICE BREAK

時系列としては、1→2→4→5→6→3→7→8になります。長いシリーズを観ていると、勝手に「いろいろあったなあ」と感慨が。ワイルド・スピードの1や2の頃というのはレースを主体とした潜入捜査ものだった。予算もないし、すごい役者も使えない。事件の規模も今よりもずっと小さい。ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーが作品の価値を徐々に上げていき、仲間も増え、当初のこじんまりとした作品から、なんと今回は核ミサイルの発射をとめるという、いつからそんな世界平和を守る軍団になってしまったのか。おまえら、街の不良ではなかったのか。

電話一本で車を盗みに行っていた連中が、今や国からの要請で核ミサイルを止めに行くという。もはやアベンジャーズじゃんかあ!

みんな、立派になったのね‥‥。

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ワイルド・スピードというと、ドミニク(ヴィン・ディーゼル、左)を中心とした仲間たち「ファミリー」がいて、ファミリーのためなら命もいらぬという強固な結びつきがある。古いといえば古いし、昭和ヤンキー文化を思わせるような懐かしさだけど、結局「仲間」というのはいつの時代も、どの世代も憧れる普遍的なものなのだろう。いいじゃないの。

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今回は新メンバーとして、クリント・イーストウッドの息子であるスコット・イーストウッド(青い服)が加わりました。スコットはちょっとドジな皮肉屋なのかな。タイリース(左上)との掛け合いが楽しみですね。

今回は、タイリースはあまり活躍できませんでしたね。もうちょっと観たかったなあ。メンバーの数が増えると、一人一人の見せ場が減るというのはどうしてもあるけども。

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で、もう一人の新顔はなんとジェイソン・ステイサム。いやあ、大物をもってきましたねえ。やはりこのシリーズ、金があるな!

ジェイソンの見せ場は多く、序盤の脱獄から赤ちゃんを抱えた戦いなど、この人のアクションは画面が華やかになりますね。観ていて楽しい。だが、ヴィン・ディーゼル、ドゥエイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサムと、ハゲばかり3人かぶってしまった。キャスティングミスだと思うかもしれないが、どのハゲも他のハゲの個性を殺していない。全員が筋肉系ハゲでありながら、すべてのハゲが輝いている。すばらしいですよ。

ジェイソンは大好きな俳優ですが、それでもシリーズ3作目「ワイルド・スピード TOKYO DRIFT」でファミリーの一員であるハンを殺しているのだ。それをあっさりファミリーに受け入れるのは‥‥、という葛藤はあった。でも、華があるしなあ。じゃあ、いいか。あと、ファミリーの皆さんがそんな気にしてないみたいだし。なんで?

で、今回のドミニクは、元恋人と娘を人質にとられるというやんごとなき事情から、ファミリーを裏切って悪の組織に手を貸すことになる。

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悪の組織のボスであり、天才ハッカーのサイファー(シャーリーズ・セロン、左)。好きな俳優ではあるものの、うーん、特に今回はという。サイファーの活躍は次回に持ち越しでしょうか。

サイファーは凄腕のハッカーということで、核ミサイルを搭載した潜水艦のハッキング合戦がある。リアルタイムで、コンピューターのエキスパート同士が何かを打ち合って攻撃したり、防御したりしている。そんなわけあるかという話ですが。いちいち気にしてはいけない。他がもっと荒唐無稽の目白押しなわけで、そのレベルで「リアリティが」などと言ってると、この世界では生きていけない。リアリティなど犬に食わせてしまえ。

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どんなに作品規模が大きくなっても、一応はレース場面は入れてくれるんだよなあ。当初は、レースとムチムチのお姉さんというのがこのシリーズの売りだったように思う。今や儀式的にやっているという感じすらする。なんだろう、これは。寅さんが旅先から帰ってきて、必ず家族とケンカするような安心感といいますかね。伝統芸能として続けてほしいなあ。

作品規模が大きくなったことで、今はただのアクション映画になってしまった感がある。シリーズ当初のようなレース主体の映画に戻ってほしいという気持ちもあるんですよね。映画の出来は最近のものより1や2のほうが好きなのだ。もちろん、個人個人のキャラは好きだけど。



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ポール・ウォーカーの存在
序盤からブライアン(ポール・ウォーカー)の名前が何度か出て、作り手からポールへの愛情を強く感じた。シリーズを観ている方はご存知でしょうが、ポール・ウォーカーは前作「ワイルド・スピード SKY MISSION」の公開前に事故死している。

誘拐されたドミニクの赤ん坊の名前がまだ決まってないというゴリゴリの伏線があり、最後はドミニクがファミリーの前で、赤ちゃんの名前をブライアンにしたと告げる。

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どこまで現実と作品を交錯させていいのかはわからない。ポールの役名である「ブライアン」をドミニクの息子に付けるというのは、シリーズを観ておらず、この作品だけを観ている人にとっては意味がわかりにくい。「ブライアンてのは、ドミニクの親友だったのかな?」ぐらいは思うかもしれないが、置いてきぼりにされた気分になるのではないか。作品上はブライアンは生きているわけだし、ドミニクの親友のはずなのにブライアンはこのパーティーにも来てない。そもそもブライアンて誰だと思うだろう。

作っている人たちはそんなことは百も承知なのだ。でも、それをやってしまった。それほど彼らはポール・ウォーカーを好きだったのだろう。ドミニク役のヴィン・ディーゼルは、ポール・ウォーカーから名前をとり、自分の娘にポーリーと名付けている。作品の外側の出来事で、作品を評価するのはおかしいのかもしれない。だけど、もうさあ、好きにやればいいじゃないのと思いますよ。荒唐無稽なバカ作品といえばそうだけど、それでもね。彼らの友情に打たれるところがある。


04
2018

後妻業の女

2016年 / 日本 / 監督:鶴橋康夫、原作:黒川博行 / 犯罪、コメディ / 127分
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お金があっても淋しさからは逃れられなかった。
【あらすじ】
さびしい独身男性につけこんで金を巻き上げるぞ~。



【感想】
結婚相談所などで知り合った男性の懐へするすると入り込み、13年の間に4件の殺人を犯した筧千佐子。あの連続殺人事件を地で行くような映画。コメディタッチなので、かなり軽く描かれてますが、実はかなり深刻な映画かも。大竹しのぶさんの二重人格的演技が光ります。怖いおばちゃんだよ。

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「武内小夜子、63歳。若くして夫を失った熟年女性です。好きなことは読書と夜空を見上げること」結婚相談所のパーティーで、老人たちを虜にする武内小夜子(大竹しのぶ、前)。結婚相談所の所長、柏木亨(豊川悦司、後ろ)と結託し、カモになりそうな独身男性を探し、財産を奪い取ることを繰り返していた。ドロドロの欲にまみれたタイタニックポーズ。沈むしかない。

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被害者が生きていた頃の控え目で夫に尽くす小夜子と、葬儀のあとのふてぶてしい小夜子はまるで別人。変貌ぶりが恐ろしい。建築事務所を経営している朋美(尾野真千子、左)は、父、耕造の遺産を全額相続すると宣言した小夜子に腹を立て、幼馴染の弁護士事務所に駆け込む。

法律には遺留分というものがあり、遺言書で故人からの指示があっても、法定相続人(配偶者、子供など)が遺留分減殺請求をすれば、法律で定められた分の財産は相続できる。つまり、亡くなった耕造の遺言書で「小夜子に全額相続させる」とあっても、子供である朋美には相続権がある。朋美が遺留分を主張すれば、全額、小夜子がもらうことはできないのだ。

朋美が依頼した弁護士事務所の幼馴染は、小夜子を「後妻業の女」ではないかと睨む。淋しい独身男性に巧みに取り入り、財産を掠め取ってしまうのだ。登場人物の誰も彼もがお金と性欲にとらわれ、騙し合いをする。

悪役が主人公の作品というのは本当に難しい。人は2時間も嫌いな人間を観続けるはできないように思えるのだ。でも、この作品はするすると観られてしまう。小夜子というのは、最低の犯罪者であることは間違いない。だが、彼女が結婚相談所に文句をつけに来た男性をどなりつけるところなどは、みょうにスカッとさせられる。タンカを切る場面が何度かあるが小気味良い。悪人だけど哲学があるし、小夜子には不思議な魅力がある。

結婚相談所の所長、柏木と小夜子のずるさばかりが目につくが、それが逆転する瞬間がある。そもそも、亡くなった耕造がなぜ小夜子に引っかかったかといえば、娘たちが独立してしまい疎遠になり、その淋しさからというのもある。柏木と小夜子を追及していく朋美が正義かというとそれも怪しいのだ。親をほったらかしにし、困ったときだけは借金を頼む。これはねえ、耳の痛い人も多い話だと思いますよ。

それをセリフで小夜子や、娘役の尾野真千子と長谷川京子に語らせているのは、あまりに直接的すぎるように感じたけど。本当のところ、親の遺産というのは法律上はともかくとして親の稼いだ金で、それを親がどう使おうが勝手なのだ。本来、あてにすべきものじゃない。などと、偉そうなことを。うち、遺産ないけども。

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結婚相談所の所長、柏木もそうだが、男が女に溺れる場面が目につく。どれぐらいの歳まで人は性欲があるのだろう。体の真ん中についている棒が着脱可能だと良いのだけど。性欲に支配されすぎる。

特に年寄りが若い女に入れあげるというのは、金と体の交換を見るような生々しさを感じてしまい、どうも嫌な感じがしていた。でも、それだけでもないのだろう。お金だけはあるけど、本当に淋しくてどうしようもないのではないか。その淋しさについて、若い人は無頓着なのだ。若いときは仕事や遊びに追われ、周りに家族、仕事仲間、友人などもいるから、淋しさを感じないのだと思う。出会いの機会や手段も老人より多い。独居老人の孤独というのは、私が考えるより遥かに深い苦しみなのかもしれない。

親が再婚相手を探している姿も、娘たちにすれば親の生々しい性を見せつけられているようで嫌なのかもしれない。そういった娘たちの反応が親の耕造を傷つけたかもしれないし、娘は娘で親と距離をおく理由の一つになったのかもしれない。いろいろ考えさせられるところ。

探偵役の永瀬正敏、クラブの女たちなど、欲得尽くめでみんないい味出してましたねえ。誰も彼もが欲の塊。タクシーの中で、チチを放り出して着替えるホステス、樋井明日香さんも良かったですね。彼女は金払いのよい客、柏木のところへ向かう途中なのだけど、タクシーの運転手からいくら見られようがどうでもいい。運転手など人間扱いしてないのだ。運転手のいやらしい目つきと、お金以外は目に入らない人間の傲慢さ、タクシーという狭い空間ですら欲で満たされている。

最後は緊張感の欠片もなくなってしまい、ちょっとコントみたいな展開に。なんだこの終わり方はという。気軽に観られていいのかもしれないけど。恐ろしい終わり方にもできる作品だったと思う。小夜子と柏木のコンビは、また二人で次のターゲットを探しているのだろう。2も作れそうですねえ。豊川悦司、永瀬正敏のクズっぷり、大竹しのぶの豹変ぶりなど、悪役の魅力に溢れた作品で楽しめました。まともな人がいないよ。

本当に人ってのは、いくつになってもねえ‥‥。そういえば、最後に耕造の遺言書が出てきたが、耕造は小夜子のことを「面白い女」と書きのこしている。耕造は小夜子が後妻業の女であることを見抜いていたのかもしれない。それでも傍にいてほしかったのかと考えると、少し切ない気持ちになる。