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2017

ギリシャに消えた嘘

THE TWO FACES OF JANUARY / 2014年 / イギリス、フランス、アメリカ / 監督:ホセイン・アミニ、原作:パトリシア・ハイスミス / サスペンス / 96分
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惹かれるのは似ているから? 憎いから?
【あらすじ】
セレブ夫婦を助けたい。



【感想】
原作はパトリシア・ハイスミスの「殺意の迷宮」。「太陽がいっぱい」や「リプリー」で有名なミステリー作家ですね。Yahoo!のレビューを見たところ、地味で退屈と評判があまりよくないのです。悲しいなあ。たしかに地味な話で、アクションや爆発などの派手さはない。だが、登場人物の繊細な心の動きには共感するところもあった。

1962年、ギリシャ。大学をほっぽり出し、アテネでツアーガイドをしているライダル(オスカー・アイザック)。旅行に来た大学生をナンパしたりして、楽しそう。こういう暮らし方もありなのかー。わたしにはない人生である。

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アイザックは旅行に来ていた裕福そうな夫婦のガイドを申し出る。

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地味な映画といえばヴィゴ・モーテンセン(左)でしょうか。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを除けば、あえて地味なのを選んで出ているような。そういう人、好き。奥さんのコレット(右)はキルステン・ダンストが演じている。歳の差夫婦ですね。

当初、ライダルはコレットの美しさに惹かれてガイドを申し出たように見えた。ライダルは夫のチェスター(左)と会話するうちに彼が父親と似ていることに気づく。ここが物語の重要なポイントになっている。ライダルは父と仲違いし、仲直りしないうちに父は亡くなってしまう。父の葬式に出なかったことも彼の心の傷になっている。

チェスターは自信に満ちた成功者に見えたが実は詐欺師だった。それなのにライダルはチェスターの正体を知った後でも彼らを助けてしまう。コレットに惹かれたのはもちろんだが、チェスターが父親に似ていたというのも助けた理由の一つではないか。

チェスターにしてみても、料金を吹っ掛けてきたりするライダルの抜け目なさを、過去の自分を見るように見ている。生意気だとも思うが、かわいいんですよね。

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お互いに警戒して騙し合い、コレットのことで嫉妬して罵り合いもするが、心の底ではどこかで惹かれ合っている。憎みつつも離れがたい不思議な関係。彼らは似ているように見える。

サスペンスなのだけど、実にのんびりと物語が進んでいく。ギリシャの荒涼とした風景も美しい。セピア色の場面が多く、日射しの強い乾いた印象を受ける。監督はこの色が好きなのかな。

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チェスターは息を引き取る前、ライダルは事件に無関係だと言い残して死んでいく。彼らはお互いに憎み合っていたものの、最後に和解できた。ライダルはチェスターを通して父を許し、また父の葬儀に出なかった自分も許せたように思う。チェスターは嘘だらけの人生で最後に少しだけマシなことをして死んでいけた。

チェスターがライダルにとって特別な人に似ているからといって、犯罪の片棒を担いでまで助けるのはおかしい。それでもライダルの気持ちがわかるような気がするんですね。これ、わたしも父親との間に溝があったせいだからだろうか。大人になってからは父の気持ちも少し理解できた。やはり、対立したまま生きていくのは苦しくて、どこかで理解して許したい気持ちというのはあるのだ。

とはいえ、普通の映画として観た場合、たしかにちょっと退屈という人は多いかもしれません。うーむ、親子関係がねじれちゃった人などにお薦めでしょうか。いや、でもそれほど親子という描き方もしてないんですよねえ。じゃあ、もう薦めなくていいか。


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2017

ノック・ノック

KNOCK KNOCK / 2015年 / アメリカ、チリ / 監督:イーライ・ロス / スリラー / 99分
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哲学なき悪の見苦しさ。君たち、もう帰ってくれないか!
【あらすじ】
家族のいない間に、女の子を家に上げた。



【感想】
グリーン・インフェルノ」のイーライ・ロス監督作品。主演はキアヌ・リーブス。雨の日にずぶ濡れになっている女の子を親切心から助けたところ、とんでもない連中だったというスリラー。

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妻と二人の子供を大切にし、幸せな家庭を築いてきたエヴァン(キアヌ・リーブス)。珍しく子供がいる役をやっていますね。子供と遊ぶキアヌに新鮮なものを感じました。いつものキアヌにはないテンションの高さに驚く。内向的で落ち着いた感じの役ばかりだったから、たまにはこういうのもいいかなあ。

妻と子供はバカンスに出掛け、自分は家に居残って仕事をしているとドアをノックする音が。ドアを開けるとずぶ濡れになった二人の美女が立っていたという。

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道に迷ったという二人を親切心から家に入れるエヴァン。だが、この二人はとんでもない連中だったのです。

この映画で感心するのは、とにかく人をイラつかせるのが上手いんですよね。彼女たちはエヴァンがタオルを取りに行っている間、許可も取らずに部屋の奥へ入り込んでいる。ここで軽い違和感を覚える。なんで勝手に奥へと思うが、まあ、それぐらいいいかとも。

キアヌが再び席を外すと、勝手にレコードを掛けてたり、ペットの犬を抱いていたりする。注意するかどうか迷う微妙な図々しさが積み重なっていくんですね。こんなことで注意して、小さい人間だと思われたら嫌だしというエヴァンの困り顔。

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彼女たちのペースに嵌っていくエヴァンを観ているとこっちまで居心地が悪くなってくる。奥さんは芸術家で、その作品を紹介してるのだけど二人は聞いちゃいないんですね。それとなく体に触れてきて、エヴァンは慌てて違う席に移って、全然動揺してないよ! みたいな顔をしているのだった。うーん、いつもの内向的なキアヌになっているではないか。

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彼女たちを拒んでいたものの、ついに陥落して二人と関係を持ってしまうエヴァン。ジェネシス(右)を演じたロレンツァ・イッツォは「グリーン・インフェルノ」で主演をしており、監督の妻でもある。監督は妻を容赦なく脱がす。キアヌと絡ませる。そんなどうでもいいこと気にしてたら監督なんてできないのだろう。

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もう一人の美女ベル(アナ・デ・アルマス)も景気よく脱いでます。で、翌朝からこの二人に家を滅茶苦茶に破壊され、縛り上げられて拷問を受けることに。

ちょっと「ファニーゲーム」と似ているように思った。ファニーゲームは、二人の訪問者が何も悪いことをしていない家族をなぶり殺していく。ただ、ファニーゲームとの相違点は犯人像ではないか。あちらの犯人(坊主頭のほう)は哲学的に見え、何か考えているようにも思えるのだ。ときおり画面からこちらに話しかけてくる演出もあり、考えさせられるところがある。

で、この映画の二人ですが、ただのバカなのだ。台所を滅茶苦茶に汚して料理し、妻が作った美術品をハンマーで打ち壊し、家中に落書きをする。哲学や美学がある犯罪者ではなく、ただのバカに暴れられる不快感というのは、なかなかのもの。これはちょっと新鮮な驚きだった。

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だが、このイライラをどう楽しめばいいのかよくわからない。単にイライラするという。なんだこれ。納豆のような映画なのかな。好きな人は好きだし、味わうにはちょっとしたコツがいるという。

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キアヌは終始情けなく「やめてー! やめてくれー!」しかいってない。埋められてしまいました。情けない顔もいいですね。

しかも、自分とベルのベッドシーンをSNSに投稿されてしまう。それを慌てて削除しようとして「いいね!」を押してしまう始末。エロ・イライラ・情けないキアヌが楽しめる作品でした。イライラするのでお薦めはしません。イライラしたい人にお薦め。

彼女たちの動機ですが、子供の頃に父親から性暴力を受けており、それに対する復讐というか、彼女たちが誘惑しても落ちない男性を探して、男性への信頼を取り戻したかったのかもしれない。ちょっと付けたしっぽい動機ですけども。もういいからさっさと帰ってくれい!




後味悪いでお馴染みのファニーゲーム。


ノック・ノックはリメイクで、オリジナルは「メイク・アップ 狂気の3P」だそうです。狂気の3Pて。題名につられて観ちゃいそう。
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2017

パージ

THE PURGE / 2013年 / アメリカ、フランス / 監督:ジェームズ・デモナコ / ホラー / 85分
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犯罪オーケーの世界なら、あなたは何をやる?
【あらすじ】
国民のストレス解消のため、1年のうちに12時間だけ何をやってもいいことにしよう!



【感想】
「ソウ」や「キューブ」のようなデスゲーム系映画。突飛な設定が多いジャンルですが、これもかなり奇抜ですね。うーん、設定が穴だらけのような気も‥‥。

主人公は「ビフォア・サンライズ」「プリデスティネーション」などのイーサン・ホーク。イーサン・ホークが出てるとつい観てしまうのだ。イーサン・ホークはわりと作品を選ばずに出るところがありますね。そういう人、好き。

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年に1度だけ、あらゆる犯罪行為が許される「パージ法」が施行されているアメリカ。国民の不満は解消され、失業率も大幅に減少。パージ法は目覚ましい効果を上げているかに見えた。ジェームズ(イーサン・ホーク)は最新セキュリティシステムに守られた自宅で、家族と共にパージ(粛清)の時を迎えていた。

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息子(マックス・バークホルダー、左)がなかなかいい子で、パージで狩られるホームレスの男性を家に招き入れてしまう。彼を救ったことで、ホームレスを処刑しようとした集団から狙われることになる。

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いやあ、実にいいお顔! 犯罪集団の親玉(リース・ウェイクフィールド、中)がねえ、邪悪な顔してるんですよねえ。アゴのとがり具合が最高ですね。他の人たちはマスクかぶってますけど、この人、マスクに負けてないのがえらい。

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あまりにいいお顔なのでもう一枚。

最初は、家に入れた男を犯罪集団に引き渡そうとしたジェームズだが、土壇場で踏みとどまり犯罪集団と戦うことになる。

ちょっとアクションがスリルに欠けるように思えた。相手に馬乗りになられて、相手が振りかぶってナイフを下ろそうとする瞬間、味方が銃で撃ってくれて助かるとか。どこかで観たような場面が多かったですね。基本に忠実ともいえるけど。

この映画で面白いと思ったのは敵の設定。敵にも流行があり、映画は時代によっていろんな敵を設定してきた。古くは宇宙人、怪物、権力者、災害、戦争、差別、90年代からはウィルス、人工知能なども登場が増えた。最近だとテロリスト、差別、格差が多いのかな。この映画では富裕層が敵になっている。昔のように一人の強力な敵というわけではなく、狩りをする富裕層と狩られる貧困層という構造なんですね。この対立というのが今後より増えるのかなあ。

パージ法によって失業率が減少したとだけ説明されているが、セキュリティシステムがない家に住む人やホームレスなどが狩られたために失業率が減少したのだろう。

しかし、肝心のパージが穴だらけのような。パージ開始と終了はサイレンで合図される。だけど、今まで殺し合ってたのにサイレンが鳴ったからって、一斉に「やめー」ってなるのだろうか。そんで「恨みっこなしよ」ってなるのかなー。

始まる前にフライングパージする人たちも出そうである。ちょっとフライングしたところで、監視カメラがなければ記録もないわけだし。設定は良いだけに、もうちょっと細部がつまっていればより面白くなりそう。あらかじめ睡眠薬を飲ましておいてパージの時間が来たら殺すというのはありなのだろうか。どうでもいいか。

一番笑ったのは娘のボーイフレンド。ジェームズに交際を反対されており、そのことに腹を立てている。パージが始まったら、ジェームズを撃ち殺そうとするんですね。逆にやられましたが。仮にジェームズを殺すことに成功したとして、普通に考えれば、彼女が自分の父親を殺した相手と付き合うわけがないだろうという。うーん、バカの恐ろしさよ。パージより怖いかも。