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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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02
2019

ディア・ハンター

THE DEER HUNTER / 1978年 / アメリカ / 監督:マイケル・チミノ / 戦争 / 183分
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戦争で変わってしまった若者たち。
【あらすじ】
ベトナム戦争に行きました。



【感想】
ベトナム戦争に従軍したごく普通の若者たちの物語。ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、メリル・ストリープなどの若かりし頃の姿が見られます。ベトナム戦争に行くまでが長く、地元での結婚式の場面が1時間以上続く。平和な日常との対比ということでしょうか。しかし、無茶な飲み方をしますね。街中で裸になっちゃうし。

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メリル・ストリープ(下)は、歳をとってからのほうがすてきな印象がある。若い頃ももちろんきれいなのですが、上手に歳を重ねるというのはこういうことなのかな。

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ピッツバーグ郊外、クレアトンの製鉄所で働くロシア系移民のマイケル(ロバート・デ・ニーロ、中央)。休日には気の合う仲間と鹿狩りを楽しむごく普通の若者だった。マイケルたちロシア系移民のアメリカ国内での立場は直接的には描かれていないものの、かなりつらかったように思える。北ベトナムに祖国ロシアが味方し、南ベトナムにはアメリカが与した。だからマイケルは戦争に行くことがアメリカへの愛国心を示せるチャンスになると喜んでいるんですね。

マイケルの友人ニックが捕虜になり救出されるが、治療をしてもらうときにロシア人かと訊かれて憤慨する。アメリカのために戦ったつもりが、そりゃないよという。

山崎豊子の小説『二つの祖国』では、第二次大戦中にアメリカにいた日系移民が差別的な扱いを受けたことを思い出す。国に挟まれた個人というのは本当に悲しくもろい存在に映る。

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マイケルはベトナムで捕虜となってしまい、敵兵に捕虜同士のロシアンルーレットを強要される。祖国の名を冠したロシアンルーレットというのが皮肉。実際にこんな事はなかったそうですが凄まじい場面。というか、デ・ニーロ(左)がもはや誰だかわからん顔になってる。鬼気迫る演技。帰国後、マイケルは仲間たちと以前のようにしっくりといけない。どこか影のある性格になってしまう。

まだトラウマ(心的外傷後ストレス障害)という言葉が世間に認知されていなかった時代。戦地で人格が変わるところまで追い込まれた兵士たちは日常生活への適応にも苦労しただろう。周囲からの理解もなかったのではないか。マイケルの友人ニック(クリストファー・ウォーケン、下)は正気を失い、現地で狂ったロシアンルーレットをやり続けていた。

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アメリカで永住権を得るために軍人になるというのはよく聞く話ですが、戦争による代償はあまりにも大きい。狩猟が趣味だったマイケルが、帰国後は趣味で鹿を撃つことができなくなるのも興味深い。

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人を殺すと、何か魂の一部が欠けるようなことがあるのだろうか。マイケルは戦争前と戦争後で明らかに変わっているが、その変化については語ろうとはしない。ただ、深く深く傷ついて、恋人にも何も語らず、密かに傷を癒そうとしているように見える。起きたことを語ったところで、事件については理解できても、彼の心がどのような傷を負ったかを説明することなど、誰にもできないのだろう。戦争で、説明できない苦しみを負った人々は大勢いたのかもしれない。

あっけにとられるような終わり方で、苦い後味の残る映画でした。


24
2019

HACHI 約束の犬

HACHI A DOG'S TALE / 2009年 / イギリス、アメリカ / 監督:ラッセ・ハルストレム / 実際に起きた出来事を基にした映画 / 93分
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「犬かわいい!」だけで映画は作れる。
【あらすじ】
リチャード・ギアが犬にメロメロ。



【感想】
『僕のワンダフル・ライフ』『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』など、犬好き監督ラッセ・ハルストレム。この『HACHI』も含め、犬だけで3本も撮るとは本当に好きなんだなあ。舞台を現代のアメリカに置き換えてはいるものの、忠犬ハチ公の忠実なリメイク作品になっています。無理に変えようとするよりいいですね。犬がかわいいのはもちろんだが、本当にかわいいのはリチャード・ギアかもしれない。犬大好きおじさん。

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見ているこちらも笑顔になってしまう。リチャード・ギアの嬉しそうな顔。実際にかなりの愛犬家だとか。

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犬ってポップコーン食べるのか。特に何も言うことのない映画でして、犬(かわいい)×犬にメロメロなリチャード・ギア(かわいい)=とにかくかわいい、という。かわいさだけで2時間もってしまった映画である。

ストーリーは、やりすぎてないのがいい。犬をかわいがっていた主人が亡くなるところも過剰に泣かそうとするのではなく、淡々と見せている。うっかり油断していると、いつの間にか死んでたぐらいのあっさり風味。品の良さというのでしょうか。泣かそうという部分が見えすぎると、かえって冷めてしまうので、これぐらいでいい。

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待っても待っても主人が帰って来ないのでしょんぼりしているハチ。このお顔、これほどの名演技がありましょうか。動物がかわいそうな目にあっていると本当にたまらない気持ちになる。実験のために何も知らないままスプートニク号に乗せられ、宇宙に飛ばされた犬の心細さとか、地雷を背負ったまま戦車の下に潜り込むよう訓練された対戦車犬の話とか。人間はいくら死んでも大丈夫なのになあ。不思議! (問題のある文章)。

アメリカでも人気があるようでAmazonUSAを見ると、この映画に4000件ものレビューがついている。アメリカ人も本当に犬が好きなのだな。でも、秋田犬て、けっこう大きいんですよね。あのサイズの犬がウロウロしていたらちょっと怖いかもしれん。犬好きにはお薦めの映画。


14
2019

一人っ子の国

ONE CHILD NATION / 2019年 / アメリカ / 監督:ナンフー・ワン、ジリアン・チャン / ドキュメンタリー / 88分
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【あらすじ】
一人っ子政策の影に何があったのか。



【感想】
1979年から2015年まで中国で行われていた人口抑制のための一人っ子政策。中国生まれのワン・ナンフー監督はアメリカで子供を産んだ。出産をきっかけに一人っ子政策に興味を持ち、親や親族に話を聞いて回ることに。監督の子供時代、中国では一人っ子政策が行われていた。

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本当に恐ろしいドキュメンタリーで、観ていて動悸がするような作品でした。こういった感覚はインドネシアの虐殺を描いたドキュメンタリー『アクト・オブ・キリング』以来かも。すごい作品でした。

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話をしてくれた親、親戚、助産師、村長など、みな、ごく普通の人なんですね。そんな人々が子供を路上に放置して殺したとか、女の子は捨てたとか、妊婦をみんなで抑えつけて強制的に中絶させた、不妊手術を強引に行った、一人っ子政策に従わない人の家を壊した、などの話を隠す様子もなく語る。もう観ていてクラクラくるのだ。なんの繋がりもない私ですらそうなのだから、監督は相当な衝撃を受けたのではないか。

彼女は長女だから殺されなかったが、もし二番目に生まれていたらこの世にいなかったかもしれない。自分の親族たちが子供を捨てたことをごく普通に語る恐ろしさ。一歩間違えば、目の前でにこやかに話している人が自分のことを‥‥そう考えると監督はどんな気持ちで話を聞いていたのだろう。彼女はアメリカに行ったから、一人っ子政策の影で行われた殺人の異常さがわかるが、手を下した人々はなぜか今一つピンと来てないようにも見える。それとも現実と向き合うことを拒否しているのだろうか。

もし仮に自分が罪を犯したとしたら、それが法的に罪に問われなかったとしても人にペラペラ話せないように思う。彼らの口から出るのは一様に「仕方がなかった」という言葉なんですね。あれは国から押し付けられたから、自分たちに一切責任はないという気持ちなのかもしれない。たしかに共産党に逆らうことはできない。そんなことをすれば刑務所に入れられる。むしろ、彼らは国が推進した政策に従順に従ってきた模範的な国民だし、表彰を受けている人もいる。2015年までは、彼らは正しかったわけで、誰からも責められるいわれはないのだ。一人っ子政策が終わった現在でも、あれは必要な政策だったと口々に正当化する姿が恐ろしくもある。

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結局、言論の自由がないことに原因があるように思える。党が間違えた選択をしたとき、一切の批判が許されない。一人っ子政策は廃止されたが、エンディングでは今度は二人以上の子を持つことを党が奨励している様子が映し出される。一人っ子政策のときも同じような宣伝をしていたわけだが‥‥。

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ユーモラスなはずが、もはやホラーにしか見えないという。

人はあまりにも強引に抑えつけられると考えることをやめてしまうのだろうか。一度、体制が完成してしまえば、その支配を覆すことは難しい。言論の自由がないことの恐ろしさを改めて感じた。それにしても、支配層の中でも子供を複数作った人もいたはずである。そういった人たちは、自分の子供を殺したのだろうか。苦さが残る作品。民主主義が最良の政治体制であるとは思わないけれど、根本的な問題は中国が民主化しない限り、解決しないのかもしれません。