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2017

ファイ 悪魔に育てられた少年

화이 : 괴물을 삼킨 아이 / 2013年 / 韓国 / 監督:チャン・ジュナン / サスペンス / 126分
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家族を三度失う少年。
【あらすじ】
誘拐犯に育てられました。



【感想】
立て続けの韓国映画。気のせいか、韓国映画は邦画よりも同じ役者をよく見かける。そんなことない? 誰に訊いてんだかであるが。

暴力に定評のある韓国映画ですが、今回もすばらしい出来でしたね。韓国映画の中ではまだ抑えめの血液量でしたが、そこそこグロくもあるという。ほどよい血液量でした。あんまり血が多いのは苦手。

幼い頃に誘拐され、誘拐犯たちから犯罪、格闘、射撃術を仕込まれたファイ(ヨ・ジング)。17歳になったファイは自身の生い立ちのことを忘れ、誘拐犯たちと仲良く暮らしていたが、ある事件を境に過去を知ることになる。

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本当にねえ、お話がよくできていますよ。誘拐された後、身代金の受け渡しに失敗するが、殺されずに育てられるという突拍子もない設定ではあるけど、そこからの展開が良い。ファイが格闘術に長けている理由も無理なく納得できるし、誘拐犯と袂を分かつ感情も理解できるのだ。無理な対立をでっち上げるのではなく、ファイの反乱を自然と応援できる巧みな脚本になっている。

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誘拐グループ白昼鬼のリーダーであり、いろいろ屈折した面倒臭いおじさんソクテ(キム・ユンソク)。この人、毎回存在感あるなあ。他の映画でもそうだったけど、どんだけ撃たれても刺されてもなかなか死にませんね。普通の人なら5、6回は死ぬぐらいやられてる。普段は物静かでなんとも言えない不気味さがある。淋しさと凶暴さが同居したような人ですよ。こわー。

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誘拐グループ白昼鬼の面々がねえ、本当に全員キャラが立っている。一人も無駄がないですよ。みんな血も涙もない人間ではあるが、ファイとの信頼関係は強い。ファイは全員を父として育っており、それぞれ狙撃、格闘、ナイフ、鍵開け、運転、音楽などの特技をファイに教え込む。

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ファイは戸籍もなく学校にも通っていない。偶然出会った女子高生に仄かな恋心を抱く。普通、自分だけ学校に行ってなかったら屈折しそうなものですが、ファイにそういった屈折や劣等感は感じない。そこには焦点を当てなかったのだろうなあ。なにせいろいろ忙しい作品なのだ。

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誘拐犯たちと信頼関係を築けている描写が良かったですね。この運転手の人(左)はいい人だったなあ。誘拐犯ですけど。

病院での格闘場面、地上げ屋グループと誘拐犯たちの格闘、カーチェイスなどの見事さはさすが。ファイの苦悩もよく表現されていて、ストーリーがいいですね。「デスノート」や「カイジ」などが好きな人は好きそうな感じ。

ファイは三度、家族を失う。一度目は誘拐されて、二度目は家族と思って育った誘拐犯たちを敵にまわし、そしてようやっと再会できたと思った両親をまたしても失うことになる。無理はあるが破綻しそうでしない、よく練られた脚本に思えます。ファイに格闘術を仕込んだ誘拐犯たちが、ファイによってやられていくというのはなかなか面白い展開ですねえ。こういうの好き。父を超えていく感じがある。


【観た人用】
屈折に屈折を重ねたリーダー、ソクテですが彼はファイの実の父親なんですね。施設にいたときにファイの母親をレイプしている。なぜ冷酷なソクテが誘拐した幼いファイを殺さなかったかというと実の子だからなのでしょう。

ユンソクはファイの父親をファイに殺させることで、自分が本当の父親になれると思ったのかもしれない。だから、あの切羽詰まった状況でファイに撃たせたのだろうか。あまりにも屈折しすぎて、もうよくわからんけども。最後、ユンソクはファイに銃口を向けるがあえて撃たなかったようにも見える。

ファイが描いたスケッチブックのエンドロールも良かったですね。足の親指を切り落とされた女性(ファイの姉のような存在)の親指は、スケッチブックには描かれている。白昼鬼のメンバーとファイはカブトムシに乗って楽し気に空を飛んでいる。あれがファイの理想の世界だったのだろう。ファイの優しさをうかがわせるいい終わり方だった。


展開が早く、グイグイと話の面白さに引っ張られていく面白い映画でした。そこそこ血が出ますので苦手な方はご注意ください。アクションも充実しており、正統派の娯楽作品だと思います。ハッピーエンドと言えるかどうか難しいですが、お薦めです。



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2017

ベテラン

베테랑 / 2015年 / 韓国 / 監督:リュ・スンワン / サスペンス、コメディ / 123分
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悪役ががんばってるのはいい映画!
【あらすじ】
財閥の御曹司がやりたい放題するので、とっ捕まえたい。



【感想】
財閥の横暴と、正義感溢れる刑事たちの対決を描いた作品。前半かなりコメディ要素が強いので、ちょっと苦手かなと思いましたが後半はシリアスな展開に。社会問題を描いたものは重苦しくなりがちですが娯楽映画として見事に着地させていますね。

韓国はナッツ・リターン事件などで財閥の人間の傍若無人な振る舞いが問題になった。この映画でも派手に暴れておりました。わかりやすい勧善懲悪映画で何も考えずに楽しめる作品。悪人はなるべくド派手な死に方してほしいなあ!

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広域捜査隊のベテラン刑事ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン)。ファン・ジョンミン、勢いを感じるなあ。主演した「新しき世界」「国際市場で逢いましょう」どちらも良かったですね。ひょうきんで、ちょっと抜けているように見えてかなりの腕利き。叩き上げのベテランということで「ベテラン」というタイトルなのでしょうが、今一つピンとこなかった。もうちょい、なんかない?

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こちらが「困ったら全部お金で解決だ! わははは!」とやりたい放題の財閥御曹司チョ・テオ(ユ・アイン、左)。いやあ、もう最高でしたよ~。こんな嫌な奴おるー? ってぐらい完全に嫌な奴という。偉い。悪役が輝いてこその勧善懲悪映画である。ユ・アインの振り切った演技には尊敬しかない。

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富裕層のパーティーでは居合わせた女性の顔面に料理を塗りたくったり(ちょっとむかついたので)、ボディガードにタバコの火を押し付けたり、順調な滑り出しである。挨拶代わりにボディーガードの足を折ったり、妊婦の腹を蹴ったり、非道なやつ! ついでに覚醒剤もやっております。

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テオは会社の前で賃金不払いに対するデモをしていた運転手を自室に招き入れる。運転手は子供の前でボコボコに殴られ、殴られ代として小切手を渡される。彼はさらに階段から突き落とされ、意識不明となる。運転手の子供から連絡を受けた刑事ドチョルは事件を調べ出すが、財閥の妨害にあってなかなか真相にたどり着かない。ドチョルの妻にも買収の手が伸び、警察内部から妨害もあり、上司からも圧力がかかってくる。

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財閥の御曹司テオの懐刀として動くのがチェ常務(ユ・ヘジン)。いやあ、いいお顔。武闘派タラコ唇である。裏の仕事はお任せとばかりに、買収から殺人教唆までなんでもやるぞ~。身代わり出頭までこなすという忠誠心の高さよ。この人も輝いてましたねえ。

身代わり出頭のとき、悪い人みんなで昼ご飯を食べるのですが、あの場で毒を盛られて殺されるのかと思った。違ったけど。

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賄賂になびかないドチョルと広域捜査隊の活躍によりテオは逮捕されて、めでたしめでたし。でも、いくら韓国の財閥が滅茶苦茶やるからってここまではないだろうよと思いました。

映画内で賃金未払いについてデモをした運転手が殴られる事件ですが、検索すると実際に似たような事件が起きている。タンクローリー運転手のユさんをSKグループ会長のいとこ崔泰源(チェ・テウォン)が金属バットで10回ほど殴打し、殴り代として2000万ウォン(約150万円)を渡していたという事件があったんですね(中央日報)。

映画では御曹司テオが捕まってハッピーエンドになっている。だが、現実には逮捕されたチェ・テウォンは社会的制裁を受けたという理由で、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決が出ている。執行猶予がつくとは驚き。財閥の力に屈した判決が出てしまっている。

韓国映画を観ているとよくある描写なのが賄賂もそうですが、先輩後輩の関係の強さなんですよね。ここが韓国の良さでもあり悪さでもあるのだろうけど。捜査を続けようとする広域捜査隊にいろんな妨害が入る。捜査を継続するよう上司を説得するときも「上司の家の引っ越しを手伝った」とか「あなたの娘に何かをしてあげた」とか、個人的な関係に拠っている。この部分、コメディなのか本気なのか、よくわからないところなんですよね。

御曹司のテオが滅茶苦茶やっているわけで「法律に違反しているので」という当たり前の理由ではなく、個人的関係を持ち出して上司を説得する。法治主義というより人治主義なのかな。韓国で歴代3位の観客動員数を記録する大ヒットとなったのは、財閥への不満が高まっており共感するところが多かったのだろう。

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個性的な広域捜査隊の面々も良かったですね。蹴りが見事なミス・ボン(右から2)、ひょうきんな同僚(オ・ダルス、左から2)。オ・ダルスは「国際市場で逢いましょう」でも、ファン・ジョンミンの相棒でしたね。いいコンビだなあ。

勧善懲悪のサッパリしたいい作品でした。とにかく悪役のテオがねえ、見事なまでのクズっぷりでファンになりました。


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2017

ダウト・ゲーム

REASONABLE DOUBT / ドイツ、カナダ、アメリカ / 2014年 / ピータ―・ハウイット / スリラー / 91分
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主人公の小物っぷりが爆発しているので応援しにくい。
【あらすじ】
検察官だけど轢き逃げしてしまいました。



【感想】
我修院達也(若人あきら)を男前にした感じのドミニク・クーパー主演のサスペンス。

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こちらは我修院さん。「鮫肌男と桃尻女」での山田くん役があまりに強烈でしたね。こうして見ると、そんなに似てない。眉毛が似てるのかな。

ドミニク・クーパーはサダム・フセインの長男ウダイを演じた「デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-」が衝撃的だった。あまりの悪役ぶりに観ていて具合が悪くなるという。ありゃ、すごい作品でしたね。今回、あれよりは大幅に更生していますよ。

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やり手検事として順風満帆な人生を送っていたミッチ(ドミニク・クーパー、上)。だが、ある日、飲酒運転の上、人身事故を起こしてしまう。検察官の職を剥奪されることを恐れたミッチは救急車を呼んだものの現場からは逃走。ミッチの代わりに轢き逃げの容疑者として逮捕されたのは、前科のある修理工クリントン(サミュエル・L・ジャクソン、下)だった。

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とにかくいろんな作品に顔を出すサミュエル・L・ジャクソン。また出とる。名優でありながら、パッとしないサスペンスにもよく出てきますね。ギャラ、思ったより安いのかなあ。主演をする俳優は1年に多くて3本ぐらいしか出ない印象があるけど、サミュエルは93年にはなんと9本も出ている。毎年、よく働くなあ。

この作品は轢き逃げ事件を起こしたミッチの倒叙ものですね。犯人視点で進行していくサスペンスです。

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ミッチは美しい奥さんと産まれたばかりの子供に囲まれ、幸せな生活を送っていた。ミッチが自分の生活を守りたいがために現場から逃走してしまう気持ちはわかる。だが、義理の兄(仮釈放中)を使って偽証させたり、刑事のオフィスに侵入したり、やることが犯罪者じみていて感情移入しにくい部分がある。難しいですねえ。

ミッチは轢き逃げ事件の裁判で検察官として出廷。容疑者であるクリントンを追い詰めることになる。だが、悪役にもなりきれないミッチはなんとかしてクリントンが無罪になるようがんばるのだ。そりゃ、自分が犯人だからごめんという気持ちなのだけど。

いっそ、ミッチが完全なる悪役としてクリントンを追い込めば感情移入しやすかったのかもしれない。ミッチの人柄が善にも悪にも振り切らず中途半端なんですよね。轢き逃げはしたものの、ちゃんと救急車は呼んでいる。クリントンのために義理の兄に偽証させて無罪にしようとする。この義理の兄が刑務所から出てきたときは「エリートである自分とは関わらないでほしい」という空気を出していたくせに、困ったときは兄を利用してしまう。兄は事件に巻き込まれたおかげで、殺されるような目にも遭うし‥‥。

だが、多くの人はこのミッチのように善でも悪でもない状態なのかもしれない。ただ、そのリアルさは観客として応援しやすいかというと、そうでもなくて「うーん‥‥君、ちょっと‥‥」という、煮え切らない感がすごい。小市民であるより、いっそ大悪党になってほしかった。

最後、強引なまでのハッピーエンドでみんな幸せみたくなってますが仮釈放中のお兄さんの偽証、刑事のオフィスに忍び込んだこと、飲酒運転による轢き逃げはお咎めなしになったのだろうか。結果として嘘をつきまくった職場(検察)での信頼、奥さんとの関係は大丈夫なのか。検察に偽りのある履歴書を提出し、身内に犯罪者がいたことを隠していたということもある。うーん、どうみてもハッピーエンドにならない感じだけども。有罪!