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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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13
2020

ワンダー 君は太陽

wonder / 2017年 / アメリカ / 監督:ステファン・チョボスキー 、原作:R・J・パラシオ / ドラマ / 113分
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【あらすじ】
人と違う顔に生まれて。



【感想】
遺伝子疾患によって人とは違った顔に生まれてきたオギー・プルマン(ジェイコブ・トンブレイ)。27回もの手術を受けたせいで学校へは通わず、10歳まで自宅で学習してきた。だが、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)はオギーが5年生になる日から学校に行かせようと決意する。

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顔に痛々しい手術痕の残るオギー。クラスにうまく溶け込めず、いじめの標的にされてしまう。それでも得意の理科をきっかけにジャックという友達ができ、しだいに学校が楽しくなってくる。

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オギーに感情移入するより、両親の視点から映画を観てしまう。今まで母親のイザベルにベッタリだったオギーが、迎えに来たイザベルをほったらかして友達のジャックと遊びに行ってしまうところなど、観ていて本当に嬉しくなってしまう。いじめられて凹んでいた子が‥‥よくぞ、ここまで‥‥という。ううう‥‥。

両親や姉がオギーのことを全肯定しているのも観ていて嬉しい気分になる。顔が崩れた状態で生まれてきた我が子を受け入れることに苦悩しそうなものだけど、家族はまったく普通にオギーを受け入れているんですね。そういった葛藤が描かれていてもよかったような。あまりに出来すぎな家族に感じたのだ。

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オギーを執拗にいじめるジュリアン(右)。ある程度、年齢がいけば子供たちもオギーの傷だらけの顔に同情できるのかもしれない。だが、子供たちに容赦はない。

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幸いオギーには理科の才能と、明るい性格、理解ある家族がいた。どんな人も受け入れてくれるのが理想の世界ではあるけれど、世界はそれほど寛容でも優しくもない。子供の世界でもどこでも戦いはあって、私たちは自分の居場所を自分で確保していかなくてはいけない。オギーも戦って居場所を手に入れる。

オギーが努力家だったり、家族や周囲がみんないい人で、そんなにうまくいくのかなという部分はあるのですが、嫌な気分にならずに観られる映画でした。ま、ジュリアンは嫌な奴で、きっちりとジャックが制裁を加えるのですっきりします。

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世界がこれほど寛容さに満ちていればなあと、思ってしまった。


10
2020

殿、利息でござる

2016年 / 日本 / 監督:中村義洋、原作:磯田道史 / 江戸時代、コメディ、実際に起きた出来事を基にした物語 / 129分 
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【あらすじ】
殿様に金を貸して利子をとりたい。


【感想】
タイトルやジャケットがコメディ色が強いので、江戸時代が舞台のコメディ『超高速参勤交代』のような作品かと思って観ました。全然違いました。落語の人情噺を思わせる内容。とてもいい作品でした。

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1766(明和3年)の仙台藩の宿場町、吉岡宿。吉岡宿には、宿場町間の物資の輸送を行う「伝馬役」が課せられていた。伝馬役にかかる人足、馬などの費用に藩の助けはない。吉岡宿の町人たちが費用を負担していたが、町人は生活に困窮し町では夜逃げが相次いでいた。町の窮状を憂いていた穀田屋十三郎(阿部サダヲ、下左)は、京都から帰ってきたばかりの茶師、菅原屋篤平治(瑛太、下右)に相談する。

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菅原屋からは無謀とも言える提案がなされる。町の有力者たちが銭を出し合って千両(現在で3億円)を作り、その金を藩に貸し付けて利息をとって伝馬役の費用にあてるという案だった。

人に知られずに良いことをするという意味の言葉に陰徳というものがある。今は死語かもしれない。志がとても高いんですよね。町のためにお金を出しあった人々は、思い上がらないようにこの善行を他言することを禁ずる。寄合では上座に座らないという取り決めもする。何もそこまでと思うのだけど。社会がうまく回るためには、こういった自己犠牲を厭わない人々の献身があってこそなのかもしれない。

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仙台藩の出入司(財政担当者)を務める萱場(松田龍平、右)がまたいいんですよね。表情一つ変えず、町人たちの申し出をはねつける冷酷な官吏。悪役がこれでもかというぐらい憎々しいからこそ、庶民側に感情移入できるというもの。松田龍平がねえ、本当に顔面を思いっきり踏んでやりたいぐらい憎たらしいのだ。すばらしいですよ。いい役者だなあ。

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また、冷酷な金貸しを装いつつ、店をつぶしてでも宿場を救おうとした甚内(妻夫木聡、右)の心意気がたまらないですね。わけあって兄と疎遠になり、それでも何一つ言い訳をするでもなく、誤解されたままにやるべきことを黙々と行う。心打たれる場面。いつもの妻夫木さんとは少し違う寡黙で穏やかな佇まいが良かったです。また役者としての階段を一段上がられましたな(何様)。

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町人たちの訴えに耳を貸した武士たちもそれぞれ良かった。また、仙台藩藩主としてフィギュアスケーターの羽生結弦選手が出ているのですが、ピタリと役にはまっているのがすごい。役者にまったく見劣りせず、堂々として気品がある。なんでもできるのね。

実話が基になっているということに驚く。人々の善意が繋がって大きなことを為し得たという実に後味のいい作品でした。善行を人に言わないという姿勢が美しいですね。現代のSNSやYouTubeやブログという発信していく文化が悪いということではない。情報を共有して楽しみつつ、こうした陰徳を積むという美しい行為も、矛盾なく両立できるのではないか。陰徳を積むという言葉を死語にはしたくないものです。


05
2020

女神の見えざる手

MISS SLOANE / 2016年 / フランス、アメリカ / 監督:ジョン・マッデン / サスペンス / 132分
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今日も勝つわよ!
【あらすじ】
銃規制法案を成立させたい。



【感想】
イギリスの弁護士ジョナサン・ペレラが初めて書いた脚本を映画化。初めてってすごいですね。映画学校などには通わず、手に入れた脚本を片っ端から読み、半分まで読んだところで残りの半分を自分で書いてみる、そしてオリジナルと比較して勉強したという。ということは応募したのは初めてでも、書いたのは初めてではないのか。でもすごい。

凄腕ロビイスト、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は銃規制法案を成立させようと奮闘する。主人公がどのような信念で動いているかなどは語られず、ポーカーフェイスで思考や行動が読めない。それがストーリーに引き付けられる理由の一つかもしれない。とてもよくできたサスペンス映画で面白かったです。

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スローンは勝つためなら手段を選ばない。味方もだますし、法律ギリギリのきわどいやり方も躊躇わない。相手が偉かろうが専門家だろうが、卓越した論理、データ、弁舌を駆使して圧倒する。まさに女王。し、しびれる~。忙しいので特定の男性とは付き合わない。性についても割り切っていてお金で男性を買って済ませてしまう。終わったら「さっさと帰って」と言います。いいんです。女王なので。

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この映画の心理的トリックというのでしょうか、ロビイストに対する偏見をうまく利用している。それがトリックとして効果的に作用してくる。ロビイストは巧みに世論をコントロールして、依頼主の要求を叶える。頭は良いけどモラルがなくて、勝つためならば主義主張など関係ない、銃で何人死のうがおかまいなしに見えるのだ。私の偏見かな。銃規制反対派のロビイスト(元同僚)たちは手段を選ばず、ガンガンきます。さすがアメリカ。

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シナリオが本当に見事でした。銃規制に賛成か反対かよりも、最終的には銃規制反対派を率いるスローンへの個人攻撃へと移行していく報道など、いかにもありそうな話。

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公聴会で証言することとなるスローンの買春相手の男性。おそらくはスローンへの罠として仕組まれたことだったのでしょうけれど、彼が良心を見せる意外な展開に。さんざん、帰れって言われたのに偉いお人。

最後までスローンがなぜ銃規制に反対するのかは語られない。家族が被害に遭っていたのか、それとも正義感ゆえの行動だったのか。語らないところに魅力があるし、観客がああでもない、こうでもないと自由に想像できるのが良質な作品なのかもしれない。楽しい。

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彼女は最後、ある罪に問われますがその刑期は同僚女性が大学に復学して学ぶのとほぼ同じ期間なんですよね。また社会に戻ってきたとき、一緒に仕事をしたいということなのかな。

後味の良い作品で賞讃しかないけれど、実際はといえば銃規制反対派が勝利し続けているという苦い現実がある。