FC2ブログ

旧作映画の感想、ネタバレしてます。
Top page  1/272
13
2019

LOGAN / ローガン

LOGAN / 2017年 / アメリカ / 監督:ジェームズ・マンゴールド / SF、ヒーロー / 137分
cV1__201910131413195e3.jpg
異能の苦しみとその末路。
【あらすじ】
ミュータントたちの逃避行。



【感想】
Xメンのウルヴァリンことローガンが主役の作品です。人間にはない超人的な力を使って悪を打倒するという華やかなヒーロー。それはヒーローの一面ではあるけれど、Xメンシリーズは超人的な力を持つがゆえの苦悩、マイノリティ差別などのマイナス面をテーマとしてきた。

本作はXメンからも離れ、ローガンという一人の男がミュータントの少女を連れて逃げるロードムービーのような作り。Xメンシリーズは大作になることが多いのだけど、本作はとてもこぢんまりとしている。そんでローガンがやたら具合悪そう。もうローガンだけじゃなくて、みんな具合悪そうだし、悲しいのだよ。

vL__2019101314132765a.jpg

だいたいこんな感じが多い。ヨヨヨ‥‥。髭モジャモジャおじさん。

cAL__20191013141321bb0.jpg

そして、ローガンの逃避行の相棒となるプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)。頭は切れるし、頼りになる最強の能力者でしたが、なんとこの世界(2029年)では認知症を発症しており、薬を切らすと周りの人を麻痺させるような強烈な現象を起こしてしまう。悲しみの迷惑おじいちゃんと化していた。

bAL_.jpg

もう一人の主人公ともいえるのが、ミュータントである少女ローラ(ダフネ・キーン)。どこかさびしげな表情がとてもいいんですね。それだけではなく決然とした意志と凶暴性も併せ持っている。アクションもすばらしかったです。

ローラは、ウルヴァリンの遺伝子から作られたクローンで、ウルヴァリン同様に両手の甲にアダマンチウムの爪、さらに足にも爪が埋め込まれており、殺人マシーンとして育てられた。そのせいで善悪の価値観が滅茶苦茶。店内で会計前にお菓子を食べてしまい、注意しようとした店員を殺しかける。とんでもないお子。

ローラのような子供のミュータントを兵器として育てることに疑問を持った研究所職員たちは、研究所からミュータントたちを逃亡させる。ローラも逃げ出すことに成功するが、組織からは命を狙われることに。

xL__201910161758170eb.jpg

Xメンはとても長いシリーズとなった。チャールズ・エグゼビア(車椅子の男性)を演じたパトリック・スチュワートがだいぶお歳を召しているからか、一度終わりをきちんと描こうとしたのかな。ずいぶんと悲しい形になってしまった。もっとも、このシリーズは平気で過去にさかのぼるから、また違った形で続編は可能でしょうけども。

とてものん気なことをいえば、みんな幸せに暮らしていてほしかったのです。ローガンはリムジンの運転手として必死にお金を貯める一方、酒に溺れている。チャールズは認知症で、他人に迷惑をかけないように巨大な鉄の筒のようなところに閉じ込められている。なんだこの暮らし。みな、若い頃はそれなりに楽しそうだったじゃんかあ‥‥。才能の巨大さに押しつぶされた人たちを見るような気持ち。

Xメンを観るたびに、才能を持つ者の悲劇は感じていましたが、今回はねえ、「人生どうしてこうなった」というか、ずいぶん悲しいですよ。人生、いいときばかりではない。

b7_AL_.jpg

Xメンという異能集団は悪から人類を救ってきたものの、その異能さゆえに人類から恐れられ差別されてきた。才能があってもちっとも幸せじゃないという。それどころか、ローガンは手に埋め込まれたアダマンチウムの毒によって体を蝕まれているし、チャールズは認知症で苦しみ、超能力が仇となり、周囲に迷惑をかけている。ローラは一般常識すらなく、周りとうまくコミュニケーションがとれていない。

才能が持つ負の面が強く押し出されているように感じた。この映画の伝えたいことではないのだろうけれど、才能について考えさせられた。Xメンほどではないにしろ、スポーツ選手や芸能人、経営者にはその才能を利用しようといろんな人が寄って来る。才能は富をもたらすこともあるけれど、人格を変えたり、人生を狂わすこともある。

ローラは才能を伸ばす英才教育を受けたものの、世間をまったく知らず買い物一つできないし、コミュニケーションもうまく取れない。才能が刀のようなものだとしたら鞘がなければならない。鞘というのが人格で、昔の人がいう「立派な人になりなさい」というのは鞘を作れということなのかとも思う。今はあまり言いませんが。

なぜかと言えば立派な人間というのがお金にならないからだと思う。それならば刀の部分を鍛えたほうがいい、ということなのではないか。刀はお金になる。プログラミングや外国語を学ばせたり、学歴の高い人間を作るほうが収入に繋がる。才能はお金を産むためのもので、お金がなければ人は幸せになれないという考え方もあるのだろう。鞘を持たずに剥き身の刀を持つ人は、その磨かれた刀で人を傷つけることをためらわない。

cL__20191013141326f58.jpg

もう一つ印象的だったのは劇中で使われた西部劇『シェーン』のセリフ。

「人の生き方は決まっている。変えることはできない。俺も変わろうとしたが、一度人を殺したものはもう元には戻れない。正しくても人殺しの烙印を打たれる。もう谷から銃は消えた

ローガンやチャールズは理由に正当性はあったが多くの人を殺してきた。正当防衛は法律でも認められているが、はたして法律が許せばすべて問題がないかといえばそうも思えない。強盗に襲われたとして、強盗の命を奪ってしまったとしても、人の命を奪ったことで損なわれる何かはあるように思うのだ。じゃあ、強盗に黙って殺されればいいのかといえば、もちろんそんなことはないのだけど。ないにしろですね、何かが重大に変わってしまっていて、それはもうどうしようもない。理由は有れど、人を殺したということは消しようもない。

v_AL_.jpg

もう一つ気になったのが、逃避行の途中、ローガン達に助けられた畜産農家の家族。チャールズの能力で逃げ出した動物たちが帰ってくる。それをきっかけに夕食をご馳走になり、彼らの家に泊めてもらうことに。

ローガンはそもそも夕食を断っていたが、チャールズは申し出を受けるようローガンを促す。ローガンは無愛想に見えて、自分たちが関わり合いになって家族に迷惑がかかることを恐れていた。だけどチャールズの態度こそ重要なものに思える。人との関りを断ってはならないという。ローガン達を泊めたことが原因で、結果として家族は組織から殺されてしまうけども。ひどい話。だが、ローラやローガンが人との関りの大事さを知るのはこの家族との出会いなんですよね。

家族が惨殺され、生きのびたお父さんはローガンがミュータントだと知ると、彼を撃とうとする。引き金を引いたものの弾は出なかったのだけど。ここで引き金を引いたことに残酷さを感じさせる。どこまでも差別は消えない。ううう。ここまでローガンを痛めつけるのかわいそ‥‥。

ヒュー・ジャックマンはローガン(ウルヴァリン)を17年も演じてきたんですね。それこそ分身のようなものだろう。チャールズ(プロフェッサーX)を演じたパトリック・スチュワートもでしょうけど。ローガンの墓標には十字架を傾けた「X」という文字が作られて映画は終わる。長かった物語もついに一つの終わりを迎えた。いい映画だと思います。しかし、あまりにもさびしい終わり方に感じた。


30
2019

マンイーター

ROGUE / 2007年 / オーストラリア / 監督:グレッグ・マクリーン / パニックホラー / 99分
33V1__201910011800271a4.jpg
ワニちゃんがきちんと映っているので良いと思います!
【あらすじ】
ワニ見学ツアーに行ったらボートが壊れた。



【感想】
ワニ、鮫、熊など、人がどうやっても勝てそうもない動物から追っかけられる映画が好き。絶望感を味わいたいのかな。よくわからないけども。

子どもの頃は、巨大生物ものがよく放送されていた。番組終盤には、たいてい「影を見た」とか「足跡が残されていた」程度で終わってしまう。いつしかテレビもこういったものを取りあげることが少なくなってしまった。映画の世界ではまだ生き残っている様子。伝統芸能として、やり続けてほしい。だって、巨大生物ってワクワクするんだもの。

xV1__20191001180031314.jpg

今回のものは、ワニ見学ツアーに行ったところ、ワニに襲撃されてボートが破損。現場に取り残された人々がワニに襲われるというお話。粗筋はあってなきがもの。

ホラー映画によくあるのが、罰当たりな人、わがままな人、いちゃついたカップルが罰として食べられるパターンですが、今回もわりとそんな感じ。パニックホラーなので、それは仕方のないことかもしれませんが、頭良いグループとモンスターの頭脳戦みたいな話はないものか。もうちょっと犠牲者さんサイドもがんばってほしいところ。クルクルパーか正義感強い人どっちかの印象。

ちょっといいなと思ったのはオーストラリア奥地の雰囲気でしょうか。観光客に対して閉鎖的なバーのオーナー。表面上は愛想よく応じるものの、主人公の飲み物にハエを入れて出すというサービス。

z1__20191001180032d09.jpg

で、肝心のワニちゃんですが、序盤は姿を見せそうであまりはっきりとは見せない。良いですね。背ビレだけで恐怖感を煽る。

ee_V1_.jpg

そして犬はかわいい。

クリップボード08g

暗くて今一つよく見えないのですが、巨大ワニのお顔。こういった映画ではあまりモンスターをはっきり映してくれないことが多く、欲求不満になりがちですが、わりと多く映っているほうだと思います。

クリップボード10n

ワニが獲物を食いちぎるときに体を激しく回転するデスロールですが、この映画では地上でやってくれています。水中だと少し見えにくいという配慮かも。制作者たちのワニ愛を感じる場面。デスロールなくして、何がワニ映画かという。たいへんけっこうだと思います。できれば、もう一回ぐらいやってほしかった。

それからチンピラ役としてブレイク前のサム・ワーシントンが出ています。この映画の後に『ターミネーター4』『アバター』『タイタンの戦い』などの大作に出演し、ブレイクしていく。『マンイーター』なくして彼の現在の活躍はあったでしょうか。

あったんだろうなあ。『マンイーター』まったく関係ないだろうなあ。チンピラが更生したと思ったら、即くわれるという役でした。うーむ、まあ、いいでないの。

ワニもちゃんと映りますし、パニック映画としてはいい出来だと思います。もうちょっと参加者同士が揉めたりしてもよかったなあ。あと、クルクルパーの人もいなかったですね。いるんだけどなあ、普通は。わがままな人はいましたけど。


25
2019

アフターショック

AFTERSHOCK / 2012年 / アメリカ、チリ / 監督:ニコラス・ロペス / パニックホラー / 89分
33__20190925112749c3a.jpg
意外と怖くないパニックホラーだが‥‥。
【あらすじ】
地震が起きたら無法地帯になって大変だった。



【感想】
原案、製作、脚本にはゴア描写でお馴染みのイーライ・ロスが関わっています。そして主演もしている。大活躍。で、自分の関わった作品には嫁を出す男イーライ・ロス。今回も出してますね。大好きだな、嫁(ロレンツァ・イッツォ、中央)が。『グリーン・インフェルノ』『ノック・ノック』にも出ています。

クリップボード02f

地震が起きた後、無法状態となってしまった街を逃げ惑うパニックホラーです。地震や津波が出てきますので苦手な人はパスということで。意外とゴア描写も控え目で、おとなしめのホラーでした。短いのでサクッと観られます。不思議と怖くないんですよね。ホラーを見慣れている人はひょっとすると物足りないかも。

クリップボード029

ダメ男たちの旅行は『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』や『サイドウェイ』を思わせる。前半は本当に何も起きないんですよね。これ本当にホラーなのかな、という。前半、ダメ男たちのだらだらしたバカンスを描いたのは、後半の急展開との落差を感じさせるためなのかな。

アメリカ人のグリンゴ(イーライ・ロス、左)、友人のアリエル(アリエル・レビ、中)、お金持ちのポヨ(ニコラス・マルティネス、右)はチリ旅行を満喫していた。現地で美女をナンパすることにも成功し、ナイトクラブで楽しんでいたものの突如地震に襲われる。

クリップボード04g

明るく楽しいチリだったが、街の様子は豹変。地震により刑務所から脱走した囚人たちに追われ、街では暴動が起きる。車は止まってくれないし、誰も助けてなどくれない。

z1__20190925112751cc8.jpg
21L__201909251127539ce.jpg

アメリカ人のグリンゴ(左)はスペイン語がわからず、現地で恐怖におののく。言葉の通じない場所でこんな目にあったら嫌だなあ。ないとは言えない気がするのです。現実感のあるホラー。

3L__20190925112750902.jpg

人間の描き方がいいですね。金持ちの嫌らしさが滲み出るポヨ(左)。貧乏人に金を払って場所を譲らせたりもする。そんな彼が窮地に陥ったときにはいい面を見せる。また、友人のアリエルが死んだときも深い悲しみに暮れる。傲慢に思えた人の意外な一面が見られる。

また、グリンゴは囚人たちに拷問され、女性が隠れている場所を教えてしまう。拷問の末だから仕方ないのだけど、そのことを後悔もする。いい人も状況によっては悪い行動をとってしまう。グリンゴは自分のとった行動が許せず、囚人に石を投げる場面がある。当然、そんなことをしたらタダで済むはずもなく、彼は焼き殺される。でも、そうせざるを得なかった気持ちもわかるのだ。

私たちが観ているのは人のごく一部の面でしかなく、人間は多面的で、本当は嫌なところもいいところもたくさん持っているのかもしれない。こういった危機でもなければ、友人の多面性を目撃することはないのかも。街も同様で、今までは安全な観光地でしかなかったチリが治安の悪い観光客にとっては最悪の場所に変貌する。

rrAL__20190925112754d8f.jpg

で、この映画、ちゃんとした人がけっこうひどい死に方をするんですよね。ナイトクラブのお掃除のおばちゃんとか。主人公たちに逃げ道を教えてくれたのに、あっけなく死ぬ。主人公たちもなのだけど、この中で本当に悪い人なんて一人もいない。みんないい所、悪い所がある。ホラー映画はしばしば、罰や制裁として死んでいくことがある。何かが祀ってある場所に罰当たりなことをしたとか、イチャついたカップルとか、とりあえず殺されるだけの理由をこしらえて不幸な目に遭うという。

でも、現実はそんなこともなくて、ごく普通の人が災害や事件に巻き込まれて死んでいく。そういった不条理さがよく現れていた。イーライ・ロス(監督はニコラス・ロペスだけど)が関わった作品は、人の多面性が描かれているのがいいのだと思う。ホラーとしては、それほど‥‥と思いました。イーライ・ロスファンにはお薦めです。後味は悪めだけどイーライ・ロスのはだいたい悪めだから、気にしない。