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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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20
2020

ブラック・クランズマン

BLACKkKLANSMAN / 2018年 / アメリカ / 監督:スパイク・リー / 潜入捜査、コメディ / 135分
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【あらすじ】
黒人刑事だけど白人至上主義団体に潜りこんで捜査する。そんな無茶な‥‥。



【感想】
『マルコムX』『ドゥ・ザ・ライト・シング』『インサイド・マン』などのスパイク・リー監督作品。黒人刑事が白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)に潜入捜査した実話をつづった小説を映画化。人種差別を扱うと重厚な作品になることが多いですが、この作品はかなり軽い仕上がりになっているのが珍しい。

人種差別はまだ存在するものの、かつてのような苛烈さはなくなっている。コメディとサスペンスを掛け合わせたような作りで楽しめるというのは、幸せな時代かもしれない。ラストはトランプ大統領を批判するようなメッセージが入っています。

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1979年、コロラド州コロラドスプリングスの警察署で、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン、右)。デンゼル・ワシントンの息子ですが似てませんね。デンゼル・ワシントンは『遠い夜明け』『グローリー』『ザ・ハリケーン』など差別を扱った作品によく出ている。どれもいい作品。

ロンは新聞広告に載っていたKKKのメンバー募集に電話を掛け、自分は黒人でありながら黒人を激しく罵倒、入団面接にこぎつける。無茶な人だよ‥‥。しかし、KKKて新聞にメンバー募集出してたのか。それはそれで狂っておる。

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ロンは黒人なので面接に行くことはできない。代わりに同僚のユダヤ人フリップ(アダム・ドライバー、右)が手助けする。ロンは頻繁にKKKのメンバーと電話でやりとりを行っている。電話中にした会話はすべてフリップに伝えているだろうけど、食い違いが出そうで怖い。ロンではなくフリップが直接やりとりすればいいのに。ロン、いらないような‥‥。ところがこの部分、実話とのこと。なんだか奇妙な捜査をしていますね。

右から2番目、スティーヴ・ブシェミかと思ったらマイケル・ブシェミだそうで、スティーヴの兄弟なんですね。似てる!

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潜入捜査をするフリップ。赤のチェックの上着にジーンズ、一般的な農家のかっこうにも見える。白人至上主義者は、アメリカではこういったかっこうが多いのだろうか。アダム・ドライバーってキアヌ・リーヴスに似ているな。髪型だけかなあ。

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黒人をリンチして殺していた時代のKKKではなく、その後の時代のKKKを描いている。差別が消えたかのように見えて、まだくすぶり続けているような時代。現代にも通じる。今この作品が撮られたというのも、トランプ大統領の出現によってアメリカの移民排斥が加速したことへの危惧があるのかもしれない。とはいえ、作り自体はかなり軽い。冗談になるようなならないようなラインというか。

正直、それほど見せ場はないんですよね。潜入捜査ものでいうと、正体がバレるというのが一番の恐怖ですが、それもあまりドキドキ感がないし、なにせロンは電話番なのである。フリップが危険な役をしているのだから、フリップが主役でも良かったような。ロン、電話で面白いこと言ってるだけじゃーん。

ま、面白いこと言ってるからいいのか。

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ロンの恋人パトリス(右)。彼女は白人警官を憎悪していて「豚」と呼んでおり、黒人解放闘争を訴える政治組織ブラックパンサー党の信奉者。黒人こそが美しい、ブラック・イズ・ビューティフルというスローガンを支持する。白人至上主義が駄目なら、当然、黒人至上主義も駄目なわけだけど。

この映画はブラックスプロイテーション映画の形をしているようにも見える。ブラックスプロイテーションは愚かな白人、頭の良い黒人が登場して、黒人が白人をやっつけるという構造が特徴的。ロンという頭の良い黒人が、KKKを手玉にとってやっつけるのはまさに構造どおり。でも、ブラックスプロイテーションにはパトリスのような存在はいないわけで、そこでバランスをとっているとも言えるのかな。

人種差別を軽妙な冗談でくるんだ作品に見えるが、その冗談が冗談で済まなくなるかもしれないという現在の状況を示唆している作品に思えた。面白かったかというと、正直、そんなにという‥‥。

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『ミザリー』のキャシー・ベイツに似た人種差別主義者のおばちゃんが出てくるんだけど、この人、もっと活躍しそうだったのになあ。いいキャラ。なにせ顔が面白い。私は白人でも黒人でも、顔が面白い人を応援する。顔が面白い人にがんばってほしい。


18
2020

ミルカ

BHAAG MILKHA BHAAG / 2013年 / インド / 監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ 、原作:ミルカ・シン、ソニア・サンワルカ / 実在の人物を基にした映画 / 152分
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【あらすじ】
インド代表の陸上選手になりたい。



【感想】
インドの伝説的な陸上選手ミルカ・シンの伝記映画。1947年にイギリス領インド帝国からインド・パキスタンが分離・独立する際の混乱で多くの人が殺された。ミルカも親兄弟を虐殺されている。歴史的経緯を何も知らず観ましたが面白かったです。インドやパキスタンの方が観ると、いろいろなことを考えてしまう作品なのだと思います。

しかし、インド映画は長いんですよね。なにせ隙あらば踊るから。3時間越えが当たり前。しかし、この映画はそれほど踊っていませんでした。たまに踊るぐらい。でも2時間半は超えている。

悲劇的な内容ながら、どことなくほのぼのした雰囲気もあって重くなりすぎない。

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頭にお団子を乗せたミルカ・シン(ファルハーン・アクタル)、これはシク教徒の髪型だそうです。まるで本当のスポーツ選手のような体。よくここまで鍛え上げましたね。

陸上でインド代表選手となったミルカ。ローマオリンピックで、「ミルカ、走れ!」というコーチの言葉が、幼い頃に殺された父の言葉のように聴こえ、つい後ろを振り返ってしまい、4位に終わってしまう。ミルカの父はインド・パキスタンがイギリスから分離独立をした1947年に故郷の村でイスラム教徒に殺されている。100万人が殺されたとも言われる虐殺の犠牲者だった。

ヨーロッパが世界各地を植民地化したことが、のちにこうした悲劇を引き起こし、インド・パキスタンの対立は今日までも尾を引いている。何百年も前の侵略が現在まで影響しており、歴史は点ではなく線なのだと思わされる。

ミルカが活躍した第二次大戦後にスポーツ選手となることは、大変なプレッシャーがあったのではないかと想像できる。日本でも血染めの鉢巻きをして走った吉岡隆徳(たかよし)、円谷幸吉などのことが頭に浮かぶ。国民の期待を一身に受け、スポーツが戦争の代替行為だったようにさえ感じるのだ。映画ではミルカの苦しみはあまり描かれてないものの、すさまじいプレッシャーだったのではないか。

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さておき、ミルカが恋をする女性が美しい。当時のインドは親が結婚相手を決めるようで、彼女は残念ながら他の男性と結婚してしまうんですね。大失恋に見えたのに、そのあとの場面であっさり他の女性に恋をするミルカ。

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そんで踊るという。これね、編集が悪いのでは。失恋の傷ゼロに見えるぞ。さっきまで死ぬほど落ち込んでたのに。

ミルカの姉が夫から日常的に暴力を受けていたり、インドでの女性の差別的な扱いも描かれている。

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実際のミルカさん。かなり似ている気が。

のちにインド・パキスタンの陸上親善試合で勝利することで当時のトラウマを乗り越えた、などと書くのは簡単ですが、実際にはいろいろあるのだろうなあ。走ることに気が進まなくても首相から要請されたり、個人が自由にやりたいようにやるなどできない時代だったのでしょう。

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やっぱり踊るんか、君ら。

ただ「勝って良かったね」という話ではなく、背後にいろいろなものを感じさせてくれる作品でした。日本版は152分ですが、ノーカット版は3時間を超える大作だそうで、やっぱり踊っているな! 間違いない。

面白かったです。


05
2020

MR.ROBOT / ミスター・ロボット(シーズン1~4)

MR.ROBOT / 2015~2019年 / アメリカ / サスペンス、IT / 全4シーズン
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【あらすじ】
世界を支配する巨大企業を倒したい。



【感想】
ハッカーが主役という珍しいドラマ。昼はインターネットセキュリティ会社に勤め、夜はハッカーとして活動するエリオット・アンダーソン(ラミ・マレック)。ハッキングを仕掛けて他人の生活をのぞき見る毎日。楽しそう。犯罪者を見つけると趣味で制裁を加える。エリオットもハッキングしているから犯罪者なんだけども。いいんだか悪いんだか、ちょっと困った人。

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目力がすごいエリオット。コミュニケーションは苦手だけど、身内や親しい者には不器用な優しさを示す。正義感も強い。かなり癖がある性格なのだ。あと、ジャンキーです。ゴリゴリのジャンキー。

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このドラマでは大企業Evilcorpが世界を牛耳る存在として描かれている。EvilcorpはGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のようなIT企業を思わせる。かつての悪役は、ならず者、暴君、宇宙人、怪物、悪徳政治家などが多かった。しかし、その役回りをこのドラマで演じているのは大企業であり、大企業に勤める富裕層なのだ。富裕層 VS 中間層・貧困層という対立が見える。

国際貧困支援NGO「オックスファム」は、世界で最も裕福な26人が、世界人口のうち所得の低い半数に当たる38億人の総資産と同額の富を握っていると発表した(AFP BB NEWS)。貧富の差は確実に広がっている。映画で描かれる悪役も、今後は大企業や富裕層が増えるかもしれませんね。

トリクルダウン理論というものがありました。豊かな者が先に豊かになり、貧しい者にその富を還元するという考え方。この理論を成立させるとすれば、豊かな者に思いやりやモラルがなければならない。現実は豊かな者は先に豊かになったものの、さらにその富を増やそうとしているようにしか見えない。特にモラルもないわけだし。トリクルダウン理論は幻想だったのか。

エリオットは富裕層が独占する富を一般庶民に還元するため、Evilcorpの壊滅をもくろむ。

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主人公エリオットの幼馴染アンジェラ。Evilcorpのせいで母親を亡くし、強い恨みを抱いていた。彼女はEvilcorpを内部から崩壊させるために中に入りこんだものの、いつの間にか自身も彼女が憎んでいた富裕層となり、彼らと同じような行動をとることになる。人は立場が変われば案外、同じような行動をとってしまうのかもしれない。

で、この散らかったデスクトップが気になる。アイコンをデスクトップにたくさん置くのもそうだけど、アイコンの横軸がずれている。等間隔に整列させてほしい。気になる。PCを使う人に対するこういった目くばせも、そこかしこにあって楽しい。エリオットの部屋にはPCを冷やすファンが置いてある。ファンが置いてあるということは、デスクトップPCを自分で組む人間だということを示している。少し前の世代のOSやブラウザが出たり、ハッキング画面はきちんとコンソール(文字ばかりのやつ)になっている。多くの映画であるような、ドクロが出たり、カウントダウンされるようなわけのわからない演出はないです。そもそも、そんな余計な機能はエンジニアは作りたがらないし、そんな暇もないという。各エピソードのタイトル(原題)に拡張子やエラーコードが使われているのも楽しい。

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お気に入りの悪役、タイレル・ウェリック。登場したばかりのときは、お金を渡してホームレスをボコボコに殴るとんでもない奴だった。なんでもお金で解決君である。シーズンが伸びて人気になったのか、退場場面がえらくかっこよかった。死を覚悟して森に消えるとき「ちょっと散歩に行ってくる」と言うのだけど、ド渋いです。惚れる! この間までホームレスぶん殴ってた人とは思えん。

タイレルの奥さんも色っぽいわ、極悪だわでたまらないですね。実にキャラが立っている。

PCの知識がある人にはより楽しめる作品かもしれません。まったくPCに触らない人には少し退屈なのかな。ストーリーはかなり捻っており、シーズン4は捻りまくったせいで賛否両論となってしまったようですが面白いサスペンスでした。