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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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21
2020

コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語(シーズン1~3)

CALL THE MIDWIFE / 2012- / イギリス / 原作:ジェニファー・ワース / 医療 / シーズン1~3
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【あらすじ】
助産婦と妊婦ががんばる。



【感想】
1950年代、ロンドンの下町イーストエンドを舞台にナースとシスターの活躍を描いた物語。第二次大戦から間もない時代、街は復興しているものの人々の暮らしは貧しい。それでも街は活気に溢れている。驚くべきことに、イギリスはすでにこの時代、医療費無料を実現しているんですね。ナースやシスターたちの明るさ、なんとしても人を助けるんだという覚悟に胸を打たれる。Amazonプライムでシーズン3まで配信されていますが、とても良かったです。2020年3月28日現在、シーズン11まで制作されています。

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あんまりよくできているもんだから、何も言うことがないという。みんな、いい人だよおおお、としか。全員好きだな。本当にねえ、嫌な人が一人も出てこないドラマなのではないか。かといってご都合主義だったり、リアリティに乏しいわけではない。

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主人公のジェニーを演じたジェシカ・レインが美しい。いい場面だなあ。髪型や服装は古いですが、とてもよく似合っている。この時代、多くは自宅出産なんですね。妊婦が産気づくと、ナースやシスターが暮らすノンナートゥスハウスに電話が入る。電話を受けた彼女たちは、夜中だろうと妊婦の元に自転車で駆けつける。大変な仕事ですね。

一話には「すべての母親は英雄である」という言葉がでてきますが、激痛に堪えて子供を産む姿にはたくましさを感じる。笑気麻酔が登場するのも物語の途中からで、それまでは激痛はひどいものだったのでしょうねえ。医療技術が発達しておらず、衛生環境も悪い当時は、出産は命がけの行為だったのだろう。今でも大変なのでしょうけども。

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シスターたちも助産婦をしておりますが、みな人格者というわけではない。というか、ナースよりも過激なような。人の悪口も言うし、かなりきつい人もいる。シスター、エヴァンジェリーナ(左から2番目)とか。肝っ玉母さんという感じ。好き。たくましくて、したたか。

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この頃の人は現代に比べるとかなり力強い。貧しい人も多いけれど、ポンポン子供を産んじゃうところがある。思えば、私の父も4人兄弟だし、母は5人兄弟だった。それでもこの時代としては平均的なのかもしれない。今は2人いれば多いほうだろう。

産気づいたときにノンナートゥスハウスに電話を掛けてくるが、電話だって家にない。公衆電話を使っている。多くは貧しい人なのだ。人の幸せが、人と人との関係にあることを思い出させてくれる。

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トリクシー(左から1番目)の恋愛もよかったですね。ダンスを知らない牧師と踊るところとか。浮気をした白人の妻から産まれた黒人の子供をそっと受け入れる夫だとか、振舞いに美しさを感じる場面も多い。本当にねえ、よくできている作品は言うことがないんですよねえ。悪口を書きたいんだ、私は。早くシーズン4以降も配信してほしいもの。お薦めです。

19
2020

魂のゆくえ

FIRST REFORMED / 2017年 / アメリカ、イギリス、オーストラリア / 監督:ポール・シュレイダー / ドラマ / 113分
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自分だけは汚れていないと信じていた。
【あらすじ】
信者からの相談を受けたが、いろいろ大変だった。



【感想】
『タクシードライバー』のポール・シュレイダー監督作品。イーサン・ホークが出ているとつい観たくなります。本当にいろんな役をやりますよねえ。幅が広い人の面白さがある。当たりハズレもなかなかですけど。今回はなんとも難しい映画。

『ハリー・ポッター』のように誰でもある程度、面白く観られる映画もあれば、こちらから行間を埋めなければならない映画もある。この映画は相当埋めなければならない感じ。埋めて埋めて埋めたところでよくわからないという。理解力が‥‥。

ニューヨーク州北部の古く小さな教会ファースト・リフォームド。トラー牧師(イーサン・ホーク)は敬虔な信徒メアリーから相談を受ける。メアリーの夫マイケルが環境問題に悩み、「こんな世の中に子供が生まれてくるのは不幸だ」と出産に反対しているという。トラーはマイケルの相談に乗ったが、彼はやがて鬱病からか自殺。トラーは、マイケルが残した資料を調べるうちに自分の所属する教会も環境破壊企業からの献金を受けていることを知る。

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トラー自身も、かなり重い葛藤を抱えているように見える。息子を従軍牧師として戦地に送り出し、戦死させてしまったこと。それがきっかけで妻とは離婚している。結果として戦争にも加担し、息子を失うことにもなった。彼は自分を罰したかったのではないか。

食事は少な目で、体調が悪いのに酒を飲み続け、トイレの詰まりをとる薬品を酒に入れている。キリスト教で自殺は禁じられている。積極的に自殺するわけではないが、いつ死んでもおかしくない行為をしている。未必の故意に見える。彼が病院で検査を受け、癌を宣告されてもまったく動揺しないのは死による救いを求めているからに思えた。

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トラーは、ファースト・リフォームドという古く伝統のある教会の牧師をしている。だが、日曜に礼拝に訪れる信者はごくわずか。所属するメガチャーチに助けてもらい、観光客のガイドをすることでなんとか活動が続けられるという有様。教会の水漏れは自分で直すし、壊れたオルガンもメガチャーチからの資金でようやく直してもらえた。

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トラーは自らを厳しく律し、これ以上ないほどの倹しい生活をおくっている。家には来客用の椅子が一脚あるほか、ほとんど物がない。不思議なくらいガランとしている。これは彼の心象風景の投影に見える。あまりにも寒々しい。息子を亡くし、妻とも別れた彼にはもう何も残っていない。ただ、一脚の椅子があるということは、心の底では誰かを求めているのだろうか。

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トラーは環境破壊について調べるうちに、環境破壊に反対する思想に共鳴していく。彼は質素な生活をおくっている。環境破壊はよりよい生活をしたい、もっと消費をしたいという贅沢な欲求と深く結びついている。トラーが環境破壊に反対するのは当然に思える。

ところが、ファースト・リフォームド上部のメガチャーチが、環境破壊企業からの献金を受けていることを知ってしまう。今までファースト・リフォームドを維持していた資金もメガチャーチから出ていたわけで、知らないうちに環境破壊企業の世話になっていたのだ。それどころか、今度行われるファースト・リフォームドの記念式典では、政治家や環境破壊企業の宣伝にも協力しなければならない。苦悩した彼は自爆ベストを着こみ、全員を巻き込んで爆死することを決意する。

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え、急に? ってなりますね。オイオイ。極端な人だよ。いきなりテロリストの誕生である。

彼はその場にいる全員を殺すことで罪を背負う。罪を負ってでも環境破壊や腐敗をくいとめる。人の罪はキリストが背負うものだとメガチャーチの人間は言った。トラーは、みずからがキリストになる決意をしたということなのかな。やってることは、ただの爆弾魔なのだけど。

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自爆を決意した彼だが、敬虔な信徒メアリーが教会を訪れる。メアリーを目にした瞬間、彼は自爆を断念するのだった。そしてみずからの体に有刺鉄線を巻き付け、血を流し、みずからを罰するのだった。うーむ、ほとんど病気おじさんである。

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トラーの部屋を訪れたメアリー。二人は熱く激しい口づけを交わすのだった。はあー?????? となり、「君らいったい!?」と観客をはるか後方に置き去りにしたまま映画は終わる。なんだこれは。

環境破壊を声高に批難する人々も、環境破壊企業の恩恵を受けて暮らしている。特に先進国に暮らす人は、いくら環境破壊に反対だと主張しても、自分だけの力ではそこから逃れることはできない。環境破壊を食い止めようと過激な手段をとるのが正しいことなのか、最後はやはり愛なのではないかということなのかな。メアリーが妊娠しており、出産をあきらめないのは、何があろうと次の世代は続いていくことを示しているように思える。彼女は夫のように絶望しない。

この映画を観た人は「結局、答えなんてないじゃないか」と思うかもしれない。そうなのだ。誰もが納得するわかりやすい答えなんてどこにもない。だからといって開き直るんじゃなく、有刺鉄線を体に巻き付けて(自戒して)せいぜい苦しんで生きていく。企業と結託して開き直り、メガチャーチの人間のように贅沢を謳歌するという人もいるだろうし、自暴自棄になってすべてを破壊しようとする人もいるかもしれない。それでも個人にできることは、自戒しつつ、苦しみつつ生きていくほかないのではないか。

え、なに、どゆこと? 三行で教えて? というのはある。そもそも解決などない。生きていくだけで罪を犯し続けるだろうが、それでも開き直ってはいけない。では、私は今から有刺鉄線を買いに行きます。


15
2020

オンリー・ザ・ブレイブ

ONLY THE BRAVE / 2017年 / アメリカ / 監督:ジョセフ・コシンスキー / 消防、実際に起きた事件を基にした映画 / 134分
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【あらすじ】
山火事を消しています。



【感想】
消防士をとりあげた映画は『バック・ドラフト』がまず頭に浮かびましたが、本作は生活に馴染みのある建物消火ではなく、山火事専門の消防隊ホットショットの活躍が描かれる。2013年にアメリカ・アリゾナ州で起きた巨大山火事ヤーネルヒル火災に立ち向かったグラナイト・マウンテン・ホットショットの実話が基になっています。死の危険と隣り合わせの仕事。

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とにかく荒っぽい職場でねえ。荒くれ者のたまり場という雰囲気。お尻を出してふざけたり、同僚にいたずらを仕掛けたり、やっていることが子供っぽい。体育会サークルみたいな感じなんですよね。苦手‥‥。焼きそばパンとPiknik(ジュース)買ってこい、とか言われそう。だが、そんな彼らの態度も山火事を前にすると一変する。

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生死にかかわる仕事場の緊張を和らげることもあって、体育会系サークルのバカ騒ぎのような反動があるのかもしれない。公式サイトには、最低でも18.1キロある荷物を背負って移動するとある。16時間働き、土の上で眠り、起きたらまた16時間働くという日々を繰り返すことも。普通の人間にはとても堪えられないだろう。

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山火事の消火は、水で消すというより迎え火によって火で火を撃退するのだ。ときにチェーンソーや斧で木を切り倒し、火の周囲を囲んで線状に穴を掘り、燃える物を取り除いて防火帯を築く。過酷な仕事。

ジョシュ・ブローリン(右)、テイラー・キッチュ、ジェフ・ブリッジスなど面子が濃い。主演はマイルズ・テラー(左)。顔が近すぎるんじゃよ‥‥。

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大変な犠牲が出たヤーネルヒル火災ですが、生き残った人の罪悪感というのは大変なものなのでしょう。山を覆い尽くし、迫って来る炎の迫力は恐ろしいものがある。巨大な炎を目の前にし、緊急シェルターという寝袋のようなものをかぶって堪えるしかない絶望感はすさまじいものがあると思います。恐ろしくも悲しい映画でした。消防隊員の方には尊敬しかない。

世界の貯蔵タンク事故情報というサイトで、ヤーネルヒル火災について詳しく紹介されていました。