15
2016

君が生きた証

RUDDERLESS / 2014年 / アメリカ / 監督:ウィリアム・H・メイシー / ドラマ
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そこから先の長い人生。
【あらすじ】
銃乱射事件で死亡した息子。息子の曲を演奏していたら、一緒に演奏しようとうるさくいってくる奴がいる。


【感想】
原題「RUDDERLESS」は「舵のない」という意味。映画内のバンド名にもなっている。思い悩む主人公サム(ビリー・クラダップ)は、息子の死後にボート暮らしを始める。ボートの舵と人生の迷いがうまく掛かっている。

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仕事熱心な広告マンだったサム。大きな契約が取れたお祝いに、大学生の息子と打ち上げをしようとする。「授業なんかサボれ」と強引に息子を誘ったが、彼は約束の時間になっても現れなかった。その頃、息子のいた大学では銃の乱射事件が起きていた。

※以下、映画の重要な部分に触れています。

映画が始まってずっと、飲んだくれているサムを観続けるわけですが、それは息子が銃乱射事件に巻き込まれて死んだためだと思っていた。でも、中盤になって息子ジョシュは被害者ではなく加害者だったことが明かされる。これが実に巧みで、観客の思い込みを利用した見事なトリックになっている。静かな映画なので、集中力が切れそうな中盤にこういった驚きが入れてあると映画に引き込まれますね。眠くなりかけてたのよ。

ジョシュが死亡した原因が明らかになることで、映画が別の意味を持ってくるのが面白い。サムは巻き込まれた被害者の遺族だと思っていたのが、加害者の遺族という立場になる。

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サムは広告代理店も辞め、世捨て人のようになって息子の曲を演奏していた。「なぜ息子があんな事件を」その理由が知りたいがため、息子の書いた詩と向き合っていた。ある晩、酔っぱらってライブバーで演奏したところ、内気な青年クエンティン(アントン・イェルチン)に惚れこまれてしまう。

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サムを追っかけてきて、ひたすら一緒に演奏したがるのです。クエンティンはひたむきではあるものの、ちょっと面倒くさい人というか。サムにしてみれば、クエンティンに息子を重ねてしまうのでしょう。ほっとくわけにもいかず、なんだかんだでバンドを組むことに。

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ただ、息子とはいえ、銃乱射事件の犯人の曲を歌っていることはクエンティンには明かせずにいる。それもやがては息子の元恋人(左)によってばらされてしまうのだけど。

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スプリング・ブレイカーズ」に出ていたセレーナ・ゴメスですね。「自分の曲でもないのにチヤホヤされてどういうつもり?」みたいなことをいうわけです。おおお。ひどいことを。サムがやむにやまれず息子の曲を演奏していたということはまったくわかってくれない。でも、周囲はそういうものかもしれない。

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サムとクエンティンの歌が本当にすばらしかった。実際に自分たちで演奏しているのがすごい。サムにとっては、演奏している間だけが息子と繋がることができる時間であり、苦しみから解放される瞬間なのだろう。たとえ銃の乱射犯であっても、サムにとっては愛する息子なのだ。

しかし、そんなひとときの喜びも被害者や被害者遺族、息子によって人生を狂わされた人たちにとっては許しがたいだろう。だけど、加害者の遺族がそれからの人生を死んだように生きねばならぬというのも残酷すぎるように思えるのだ。ここらへんは本当に難しい話ですねえ。

犯罪の加害者遺族に焦点をあてた映画というのは、今までに観たことがなかった。きっとサムは「なぜ息子はあんなことを‥‥」と答えの出ない問いを何万回と繰り返していくのだろう。幸せな人生など望むべくもなく、後悔と自責の念にまみれた人生を送るしかない。彼にはたしてどれほどの責任があるのかもわからないのだが。これは自殺などが起きた場合も同じかもしれないですね。

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楽器店の店主はローレンス・フィッシュバーン。懐が深い、いい役でしたね。楽器店より銃砲店のほうが似合いそうだけど。

サムはボートも上げてしまい、バンドも辞めて、今後はなにを希望に生きていくのだろう。それが気になった。

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監督は名脇役のウィリアム・H・メイシー。これが初監督ということですが、一作目とは思えない見事な作品になりましたね。インタビューで、「アクション」(撮影開始)をどういったらいいかわからず、鏡の前で練習したというエピソードは笑ってしまった。結局、自分ではいわずに助監督にいわせたという。なにそのかわいいエピソード。

いい映画でした。すばらしい演技と歌声を披露してくれたアントン・イェルチンが事故でなくなってしまったのが、とても残念です。


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