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2016

フィアー・エックス FEAR X

FEAR X / 2003年 / デンマーク・カナダ・イギリス・ブラジル / 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン / ドラマ
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現実と妄想の狭間に立ち現れる赤い憎悪!そうです、なにかわかったようなことを書いておりますがなんもわからん。誰か教えて。
【あらすじ】
妻が殺されたので犯人を捜しますが、なんだかよくわからないことになってまいりました。


【感想】
ニコラス・ウィンディング・レフン作品はくっきりと二つに分かれる。「ドライヴ」や「プッシャー」などの魅力的な作品でファンを引き付けたと思ったら「オンリー・ゴッド」や、この「フィアー・エックス」でファンを奈落の底に突き落とす。落差がものすごいわ。今回は、まったくわからないほうのやつでした。

クリップボード02

ショッピングモールで警備員をしているハリー・ケイン(ジョン・タトゥーロ)。ある日、モールの駐車場で妻が何者かに撃ち殺されてしまう。犯人は捕まらず警察も役に立たない。ケインは同僚から防犯カメラのテープを入手し、犯人探しにのめり込む。だが、犯人探しに熱中するあまり、現実と空想の境をさまよいはじめる。もうけっこう危ういところにきております。あとちょっとで、完全にアカン人になりそう。

主人公ケインの性格がまたよくわからないんですよね。妻のことは愛していたが、犯人に対する恨みは感じていないようなのだ。ただ、仇討ちがしたいのではなく、なぜ殺したのかを執拗に知りたがる。ここがね、ものすごく奇妙なんですよね。普通は犯人許すまじ!となるのだけど、なぜかそんな場面はいっさいない。

ケインは防犯カメラのテープをチェックし、少しでも怪しい挙動を示す人間がいると、画面を撮影して部屋に証拠として貼りまくる。興味深いのは、そうして得られた証拠から犯人が割り出されたのではないということ。

クリップボード04

妻が隣家へと消えていく場面がある。これ、おそらくはケインの妄想なんですよね。妄想というより直観とか天啓といったほうがいいのかもしれない。ケインはこの直観に従い隣家に不法侵入することで犯人の手掛かりを見つけるのだ。じゃあ、今までの膨大なビデオチェックはなによ!って話ですけども。なんだろうねえ‥‥。

警察はポンコツで役立たずだけど、刑事の一人が興味深いことを口にする。「あんた、奥さんのこと全部わかってないだろ」というが、これは映画の鍵かもしれない。ケインは防犯カメラに映し出される妻の殺害場面を目撃する。だが、妻はなぜそこにいたのか、誰かと待ち合わせをしていたのか、ケインの仕事が終わるのを待っていたのか、本当のことはなにもわからないんですよね。

人は自分自身以外のことは結局わからないのかもしれない。相手に対する印象にしても、自分が信じたいものだけを信じているだけで、その印象と実像がずれすぎると「裏切られた」とか「相手の態度が変わった」などと思うのかも。そもそも自分自身のことですら本当にわかっているかは怪しい。ケインは現実と妄想の間を漂っている。

クリップボード06

ケインは犯人探しのためにあるホテルに宿泊する。この赤の色使いがいかにも妖しげでいいですね。不安を煽る重低音が雰囲気を盛り上げる。

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ホテルのエレベーターにはなぜか死んだはずの妻が乗っている。これはケインの妄想なのだろう。左側に「EXIT」と見えますが、こっちに行けば現実(妄想からの出口)ですよってことなのかなあ。

このホテルには他にも怪しげなところがあって、コールガールが部屋にやってくる。彼女はケインの部屋の電話を借りるんですね。電話線をわざとらしくまたぐところが印象的なのだ。あの電話線は現実と妄想の境を示すのだろうか。重要ななにかを示すようだが、まったくもってなんのことやらである。

クリップボード10

こちらは犯人。家庭的で優秀な警察官。だが、汚職警官を撃とうとしたところ、あやまってケインの妻を撃ってしまった。ケインはそんな事実は知らないんですね。犯罪を隠蔽するため、彼はケインのことも撃つが良心の呵責からか、とどめはさせない。ケインは病院に収容され、やがて退院する。

クリップボード18

犯人のことはわからず、事件は迷宮入りしたもののすっきりとした顔のケイン。執拗に集めてきた証拠も道端に捨ててしまい、自宅へと帰るところで映画は終わる。なぜあんなにサバサバしているのだろう。

ケインはずっと「なぜ妻は殺されたか」ということに執着していた。この「なぜ」の無意味さに気づいたのだろうか。結局のところ、物事は自分を通してしか認識できない。「なぜ」と問いかけて得られた「事実」も、自分が信じたい「事実」でしかないのではないか。とすると、もはや確定的な事実など存在しないことになってしまう。すべては無意味なのだ。そういった認識についての映画なのかなあ。

まったく意味がわからない奇妙な映画でしたが、ぶっきらぼうでなんか惹かれるんですよね。

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