05
2016

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

THE IMITATION GAME / 2014年 / イギリス、アメリカ / 監督:モルテン・ティルドゥム / 実在の人物を基にした映画
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英雄は前線にいるとは限らない。解読不能といわれた暗号機エニグマに挑んだ男の孤独と苦悩。
【あらすじ】
ドイツの暗号機エニグマの暗号を解読したい。


【感想】
第二次大戦中、ドイツの誇る暗号機エニグマの暗号を解くため、数学者、チェスの英国チャンピオン、言語学者など、6人の才能が集められた。その中には数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)もいた。暗号解読におけるアランの才能は際立っていたが、周囲とのコミュニケーションがとれないアランは上司や仲間たちから孤立していく。

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ベネディクト・カンバーバッチの作品はそんなに観たことがないのですが、この映画は一番の当たり役ではないでしょうか。すごく良かったですよ~。天才数学者といわれたアランの人柄がたまりません。採用面接の段階で、上司には反感を持たれる。みずからの能力を「自分が天才かはわからないが、ニュートンやアインシュタインと同程度」と説明する。上司に高く売り込もうという意図はない。自分のことを素直に評価しただけなのだが、上司からは尊大な自信家と思われてしまう。そこんとこまったくわかってないアランの様子が面白い。あれ~、この人、なんで怒ってるんだろう?という。

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そんな調子だから、当然仲間ともうまくいかない。アイツとアイツはいらないからクビにして、浮いた予算をマシンの方にまわせとか、平気でいってしまう。合理的判断なのだろうけど、周囲からはひどい人間だと思われていく。アランはコミュニケーション能力になんらかの障害があったのかもしれない。アスペルガー症候群のようにも見える。ちょっと頭の使い方が周囲と違う。誰かがジョークを言って笑い合っても、アランだけはその意味がわからずにポカンとしている。

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そんなアランと周囲の溝を埋めたのがジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)である。まだ女性差別が大きかった時代に、暗号解読者として女性を起用したイギリスは先進的だった。イギリスというと、どうしても保守的なイメージが強いですが、サッチャーのような女性首相を早くから出しているし、そもそも女性に王位継承権がある。意外と柔軟なのかな。

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アランはゲイで女性には興味がなかったが、二人の友情は微笑ましい。ジョーンは両親から実家に戻るようにいわれるが、アランはジョーンが暗号解読の仕事を続けられるようにとジョーンに結婚を申し込む。

アランは自分がゲイであることをジョーンになかなか告白できないんですね。ゲイが法律違反で、逮捕される時代だったということもある。ダンスをしているときも、ちょっと顔が引きつっていて、この辺りもおかしかった。でも、周りはアランがゲイだと知っていたような節がある。あんなに頭が良い人が、自分のこととなるとまったく頭が回らないのも面白い。ゲイと告白したときのジョーンの優しさには胸を打たれるものがある。

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チームはついに暗号解読に成功するが、そのあとの展開もよかった。暗号というのは解いたことを敵に知られてはならない。敵はまたあらたな暗号を作成してしまうからです。だから、ここぞという戦略上重要な局面において勝利するような使い方をする。だから、相手の攻撃があるのを知りながら、暗号が解けてないフリをするためにあえて味方を見殺しにする必要も出てくる。誰を生かし、誰を殺すのか、誰も決められないようなことを決断しなければならない葛藤が当時はあったのでしょう。

映画ではこの判断をアランたちがしていますが、実際はどうなんだろう。政治的問題も含むので、上層部が行ったのではないでしょうか。アランはイギリス諜報部MI6の上司に、暗号が解けていることを軍にも黙っているよう進言する。この上司がやり手でねえ、一見無茶苦茶に思えるアランの提案を受け入れる。

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ちょっと話が脱線しますがサイモン・シンの「暗号解読」に、これと似た興味深い話がある。第一次大戦中、イギリスは海軍省暗号局によってドイツの暗号解読に成功していた。イギリスは、ドイツの外務大臣ツィンマーマンの非常に重要なメッセージを入手し解読する。だが、イギリスは暗号を解読したことはドイツに絶対に知られたくない。この電報が打たれたメキシコ電信局にスパイを忍び込ませて、電報をわざわざ盗ませる。盗む前に、イギリスは内容を知っているわけです。この電報をきっかけにして、アメリカはドイツの敵として第一次大戦に参戦せざるをえなくなった。イギリスは目論見どおりアメリカを戦争に引きずり込むことに成功した。

サイモン・シンの「暗号解読」はエニグマについても取り上げていますし、暗号の歴史についても書かれています。ちょっと読むのに根気はいりますが、間違いなく面白いです。

アランを中心とした暗号解読チームはエニグマの暗号を解読する成果をあげた。これによって1400万人の命が救われたと映画内では語られる。だが、暗号解読は国家の最重要機密であったため、彼らの功績が表に出ることはなかった。

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それどころかアランは同性愛者として迫害を受けてしまう。なんだかもう本当に観ていてやりきれない気持ちになりました。だけど、すばらしい作品でしたよ。暗号解読のきっかけとなったポーランドチームについて触れてませんが、これも「暗号解読」のほうには取り上げられています。


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