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2016

誰よりも狙われた男

A MOST WANTED MAN / 2014年 / イギリス、アメリカ、ドイツ / 監督:アントン・コルベイン / サスペンス
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フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作。
【あらすじ】
諜報機関に勤めています。やりたいことはあるけれど、いろいろ邪魔される。


【感想】
イギリス諜報機関MI6に所属していたジョン・ル・カレ。彼の同名スパイ小説を基に映画化。スパイ小説というと、敵の組織に入り込んで重要な書類を奪うとか、スリリングな銃撃戦、美女とのあれやこれやなどが思い浮かぶがこの映画はそういうのはないのだった。おまえのスパイって、どうせジェームズ・ボンドだろ?という話ですけども。他にスパイ知らないし。

うーん、地味な話である。原作者が元スパイだからリアル路線なのかなあ。主にアジトでこそこそやって、いろんな組織と会議したり。まるで会社員ではないか。

そして、残念なことにフィリップ・シーモア・ホフマンの最後の作品になってしまいましたね。ああ、親愛なる太っちょだったのに。

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ドイツのハンブルクが舞台。テロ対策チームの指揮を執るバッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、イッサというイスラム教徒に目をつける。イッサ(右)は人権派弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス、左)を介して、父の遺産を手に入れようとする。バッハマンは遺産がテロに使われないか、イッサを泳がせて監視している。

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諜報機関の人間というと、国家の安全のためならば個人の人権は犠牲にしてもかまわないという印象がある。バッハマンは冷酷そうに見えるが、ギリギリのところでイッサを守ろうとしているようにも見える。バッハマンは家族がいる様子もない。すべてをテロ対策に捧げてきたのかな。映画内では家族や普段の生活は描かれないが、バッハマンの背中から伝わってくるものがある。そんなこといって、実は家族いたりして。

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バッハマンたちの苦闘虚しく、横槍が入りすべて駄目になってしまう。状況が複雑すぎるように思える。悪の絶対的権力者がいて、その人間が状況を完璧にコントロールしているわけではない。もはやどんな権力者も、錯綜する状況の断片しか知りえないのかもしれない。

結局はCIAが裏で手を回して、同じドイツの諜報機関にバッハマンは出し抜かれたように見える。だが、出し抜いたほうとて明日には誰かに出し抜かれるのではないか。フィリップ・シーモア・ホフマンの「ファック!」というやり場のない叫びが心に残る。

本当に状況がわかりにくくてねえ。そのわかりにくさの中での自分の中の光、正しさを追っていくしかないのだろうけど。思えば、フィリップ・シーモア・ホフマンの出ている映画はわかりにくく複雑なものが多かった。こちらまで降りてきてくれないんですよね。降りてくるほうが簡単だし、いい評価ももらえるもんだから、つい人は降りていきたくなる。フィリップ・シーモア・ホフマンは「ここまで上がっておいでよ」と、わからないこっちを見てニヤニヤしている印象がある。惜しい人が亡くなった。

わかりにくい映画ですが、たまにはそういうのもいいんじゃないでしょうか。



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