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2016

シークレット・サンシャイン

밀양 / 2007年 / 韓国 / 監督:イ・チャンドン / ドラマ
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「あの陽の光一筋にも、主の御心が隠れている」
【あらすじ】
子供が死んでしまい、救いをもとめて宗教にのめり込む。



【感想】
救いや許しについて描いた韓国映画。地味、暗い、主人公がおかしくなる、など観ていてあまり楽しい気分にならないという。困った困った。刑事役ではないソン・ガンホを久しぶりに観た気がする。

宗教に興味のある人にはお薦めです。

首都ソウルから、地方都市密陽(ミリャン)へ越してきたシネ(チョン・ドヨン、左)とジュンの親子。シネの夫は交通事故で亡くなっており、シネはシングルマザーに。夫の故郷密陽でやりなおそうとする。

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密陽に来る途中、車が故障してしまう。助けを呼ぶとジョンチャン(ソン・ガンホ、右)という自動車修理工場の男が来てくれた。ジョンチャンは一目見てシネを気に入り、以降なにくれとなく世話を焼いてくれる。しかし、シネから見るとジョンチャンは田舎者でがさつ、自分の人脈を自慢する「俗物」とバカにしていた。

人物の描き方がいいですね。都会からやってきたシネは地方を見下している。地方都市密陽の人々も、シネのことを都会暮らしを鼻にかけているようで気に入らないと思っている。どっちもどっちだなあ!

でも、こういう感情って多かれ少なかれ誰の心にもあるんじゃないでしょうかね。

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やっぱりソン・ガンホは顔が面白い。正面の女の子のパンツが見えそうで浮かれています。楽しそうだなオイ。

シネは町にピアノ教室を開き、ジョンチャンの手助けもあってしだいに町に溶け込んでいく。そんな矢先、シネの息子ジュンが誘拐され殺されてしまう。息子が殺される原因の一つはシネの虚栄心の強さだった。「土地に投資しようとしている」と見栄を張り、金を持っていると誤解した犯人がジュンを誘拐するが、シネにお金なんてなかったのだ。

誘拐犯の娘がシネの元を訪れるのですが、息子が行方不明になりおかしくなっていた彼女は娘を追い払ってしまうんですね。ちゃんと話を聞いていればジュンを救えたかもしれないのに。

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くだらない見栄のせいで我が子を失い、しだいに精神を病んでいくシネ。そんな彼女を救ったのがキリスト教だった。信仰にのめり込むことでなんとか精神を保とうとする。

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また、ジョンチャンがいいんですよね。好きな人がキリスト教に入ったから、俺も俺もという。この人にとってキリスト教なんてどうでもいいんですよ。節操のなさがたまらん。俗物100%ですなあ。

シネはまったくジョンチャンのことなど見てないし、その扱いは犬以下という感じですけども。

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息子を殺され、精神が崩壊しかかっていたシネだったが信仰により心に平穏が訪れる。犯人のことも許そうと刑務所に面会に訪れる。ところが犯人はすでに信仰に目覚めており「わたしは神によって許されました」と、心の平安を得ている。それがシネには許せなかった。なぜ自分が許す前に神が許すのだと、神に対して怒り出す。

結局のところシネの信仰は、神の言葉を自分勝手に解釈しているようにしか見えない。たとえば悲しいことがあって泣きたい気分のとき、悲しい曲をかけて、曲中の言葉を作詞者の意図と関係なく自分勝手に解釈して泣くような。これ正直にいえばわたしのことですけども。

彼女は自分よりも哀れな存在である殺人犯に許しを与えることで、精神的優位に立ちたかっただけではないのか。なのに殺人犯は勝手に許しを得て、楽な気持になっている。自分はまだこんなに苦しんでいるのに。彼女は神など信じていなかったし、犯人を許せてもいなかった。そのことに気づいてしまったのかもしれない。

その証拠に、彼女が面会に訪れる前、犯人の娘が街中でいじめられているのを見かける。でも、彼女はその子を助けないで見捨てるんですよね。もし、犯人を許していたなら彼女は犯人の娘を助けなければならないのに。

ここから絶望したシネによる神への勝手な復讐が始まる。盗みを働き、キリスト教の集会を妨害し、不倫をし、自殺を試みる。神が存在するなら自分を罰するはずだと思ったのかもしれない。おまえは何もできないだろうという。

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この映画でもっともまともな人間は誰かといえばジョンチャンだと思います。シネから何度もひどい扱いを受け、俗物とバカにされ、彼女がおかしくなっても献身的に傍にいようとする。

シネがキリスト教の長老を誘惑する場面がある。このとき長老はシネを抱こうとして「神様が見ているような気がする」と途中で抱くのをやめてしまう。シネは同じようにジョンチャンに迫るのだけど、ジョンチャンはシネを激しく拒絶する。

神様が見ているから悪いことをしないというのは「怒られるから」という子供の考えと同レベルでしかない。警察がいるから盗みはやめておこうと変わらない。そうじゃなくて、人の物を取ってはいけないとか、人として間違っているというのが正しいように思えるのだ。

ジョンチャンは弱り切っておかしくなっているシネにつけこんだりせず、彼女が好きなのに彼女を拒絶する。ここにジョンチャンの崇高さがある。

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「あの陽の光一筋にも主の御心が隠れてる」
薬局に勤めるおばちゃんの印象的な言葉ですね。

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最後、シネの家の庭が映し出される。密かに差し込む穏やかな光。どれだけシネがひどい態度をとっても、変わらぬ優しさでそばにいるジョンチャンという光。シネはその光に気づく日がくるのだろうか。

밀양 (密陽)という原題もいいですね。極力説明を省くようなつくりなので、ちょっとわかりづらく感じる人がいるかもしれません。いい映画だと思います。うーむ、でも好きではないのよ。



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