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2016

ローン・サバイバー

 LONE SURVIVOR / 2013年 / アメリカ / 監督:ピーター・バーグ / 実際の事件を基にした映画、戦争
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民間人を解放することで、自分たちの命が危険に晒されるとしたら。
【あらすじ】
4人で敵地に潜入したら、200人に追いかけられた。



【感想】
2005年6月、アフガニスタンにてアメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズによって実行されたレッド・ウィング作戦。作戦は失敗し多数の犠牲者を出してしまう。この映画は、作戦に従事したマーカス・ラトレルの著書「アフガン、たった一人の生還」を基に映画化されました。

ネイビーシールズはタリバン幹部であるアフマド・シャーの殺害を目標とし、4人で構成された偵察部隊を派遣した。シャーへの狙撃が可能ならば実行し、不可能ならば本部に座標を伝えて航空支援による空爆を実施するのが目的だった。

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精鋭部隊が残虐非道な敵をバンバン撃っていくという爽快さはまったくない。圧倒的多数の敵に囲まれ、仲間が一人、また一人と斃れていく。やや重苦しい作りになっています。崖を転げ落ちる逃走場面はかなりの迫力でした。

現場の状況判断がとても難しいんですね。作戦実行のため、アフマド・シャーを探す4人の隊員。山に潜んでいると、シャーが潜む村から来たと思われる民間人に遭遇してしまう。一人は老人、一人は子供、もう一人は二十代の男だろうか。山羊を連れて放牧にきたのかもしれない。とりあえず彼らを拘束した隊員たちだが、その処置をめぐって激しく対立する。

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作戦中の民間人との遭遇は紛争地域では日常茶飯事なのではないか。もし、民間人を解放すれば、彼らは村に帰ってアメリカ人を見たと伝えてしまうだろう。そうなれば百人以上の追手がやってくる。見知らぬ土地で逃げ切れるかは定かではない。また、彼らを拘束したまま放置すれば寒さで死ぬだろう。彼らと交渉しようにも、言葉が通じず説得はできない。司令部に指示を仰ごうにも、山で通信が妨害されて連絡がとれない。

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部隊のうち2人は民間人を殺害し作戦継続を主張する。だが、マーカス・ラトレル(マーク・ウォールバーグ)は交戦規程に違反しているという理由で民間人の解放を主張する。最終的にマーカスの主張がとおり民間人は解放された。だが、解放された民間人は村に戻り、大量のタリバンが彼らを追いはじめる。

この映画は戦争中の美談として扱われているのだろう。だからこそ映画化されたのだろうし。だが、一歩間違えばかなり危うい話になったように思う。もし、司令部と通信が可能で、司令部の指示が民間人を殺害して任務を続行しろということだったら、彼らは老人や子供を殺したのだろうか。そこでマーカスが殺害を拒否した場合、軍令違反に問われるのだろうか。

目標のテロリストであるシャーは凶悪で、先週だけで20人のアメリカ人を殺していた。放置すればまた何十人も犠牲者が出るだろう。世の中には正解のない問題がある。任務や自分たちの安全を優先するなら民間人を殺すべきだし、それよりも大事なものがあるなら民間人を解放するという選択もある。マーカスは民間人を解放したが、結果として100人以上のタリバンから追われ、部隊の仲間は死亡。また、彼らを救援にきたヘリはテロリストのRPGによって撃墜され、ヘリに乗っていた隊員は全員死亡する。

これはもう何を大事に考えるという話でしかない。わたしにとってマーカスの判断は正しいものだけど、それでも彼の判断が元で犠牲が出てしまった。この人は、今後の人生でずっと仲間の死を背負っていくしかないのだろう。

ただ、彼らを拘束したまま安全な地域まで撤退して、その後に解放することはできなかったのかと思うのだけど。いろいろあるんでしょうねえ。また、こういったケースで民間人を殺害することも表に出ないだけであるのだろう。

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マーカスを匿ってくれたパシュトゥーン人がいるが、彼らがタリバンに狙われ続けているという話も気になる。アメリカは支援しているのかなあ。

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池上彰さんの本などを読むと、そもそもタリバンの台頭の原因はアメリカにあるし、アメリカと当時のソ連がアフガニスタンを滅茶苦茶にしたというのもある。自分で種をまいて自分で困るというのがいかにもアメリカらしいが、それとは別に現場は苦しんでいる。アメリカ側の正義を描いたプロパガンダ映画なのかもしれないが、現場の隊員や犠牲になる民間人を思えば何か苦い気分になります。自分ならばどうするかと考えながら観てもいいかも。


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