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2016

トスカーナの贋作

copie conforme / 2010年 / フランス、イタリア、ベルギー、イラン / 監督:アッバス・キアロスタミ / 恋愛
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本物より素晴らしい偽物は、本物より価値があるか?
【あらすじ】
作家とファンが夫婦ごっこをしてたら、本当に好きになりました。



【感想】
ジュリエット・ビノシュの出演作では「ショコラ」という映画が好きでした。「ショコラ」では、街に突然現れた風変わりな女性を演じていました。この映画で演じている女性もちょっと変わっている。活発な役が多いですね。男の後ろをおとなしく歩くことなどなく、大股でずんずん先を歩いていくようなたくましさ。今回は派手に口論しておりますよ、初対面の人なのに。

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イタリア、南トスカーナ地方の小さな村で講演をした作家ジェームズ(ウィリアム・シメル、右)。作家のファンで講演を聞きに来ていたギャラリー経営者の女(ジュリエット・ビノシュ、左)。芸術について議論を交わしていたところ、カフェの女主人に夫婦と誤解される。二人は間違いを訂正することもなく、ゲームのように夫婦のふりを続けていく。夫婦喧嘩(ニセ夫婦だけど)も勃発し、嘘の喧嘩なのに本気で涙を流したり。めんどくさい人たちだな。

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初対面なのにジュリエット・ビノシュ(役名はなし)がとにかく好戦的なんですよね。3分に1回ぐらい噛みついている。ファンというから作家であるジェームズの前では萎縮しそうなのだけど、全然そんなことはない。彼の意見に賛同できないときは真向から反論する。それもかなり感情的なのだ。日本人と欧米人との差もあるでしょうが、それでも攻撃的に見える。

ジェームズが書いた本のテーマが「すばらしい偽物は本物よりも価値がある」というものだった。たしかに、そういうことだってあるかもしれない。それは技術の話に限ればだけど。オリジナルが持っているアイディアは特別なもので、そこにこそ価値がある。贋物は技術や性能では本物の上をいくことは可能だけど、あくまでコピーでしかない。その話はここではあまり関係ないので、もうこれ以上書かないですが。

本質論のようなものが繰り返し語られる。同じ言葉でも、ある有名人がいえば名言で、名もなき一般人がいえばなんの変哲もない言葉になる。わたしたちは外形にとらわれて本質を見すごすことが多いのかもしれない。

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そんなことを侃々諤々、議論している二人です。理屈っぽいデートだな、オイ。作家のジェームズはジョージ・クルーニーに似ていますね。ジェームズを演じたウィリアム・シメルの本業はオペラ歌手で演技は初挑戦ということですが実にいいですよ。

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この映画は、人の描き方がとてもリアルに思える。会話をしているのに、どこか上の空であまり聞いておらず、突然関係ないことをいって遮ったり。レストランで喧嘩をしてジュリエット・ビノシュの機嫌が悪くなるのだけど、彼女は庭で行われている結婚式を見て機嫌がみるみる直っていくんですね。突如、彼女の顔に現れる少女のような憧れ。これを見ると元気になるとか、心が浮き立つというものがありますが、彼女にとって結婚式の男女がそういった存在なのかな。実際の結婚生活はうまくいっておらず、幸せそうなカップルに自分を重ねているのかもしれない。

皮肉屋で結婚に対して悲観的なジェームズは「やれやれ」みたいな感じで、対照的な反応がまた面白いのだけど。

街の広場に老夫婦がいる。遠くから見ると、夫のほうが妻に怒鳴っているように見える。ちょっと危ない男なのかと不安になる。男の背中に隠れていてわからなかったが、カメラが近づいていくと彼は電話をしているだけで妻に怒鳴っていたのではなかった。

この場面がねえ、ちょっとしたところですが意味があるようにも思える。夫婦には本人たちにしかわからないことがあるとか、外から見ているのと実際にはかなり違うというような意味にもとれる。何気ない場面に、意味を入れているようで面白い。

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最後は、ジュリエット・ビノシュが15年前に夫婦で来たという思い出のホテルに入っていく。それも嘘かもしれないけど。これ、きっと泊まるんでしょうねえ。

最初は偽物の夫婦を演じていた二人だけど、この二人は本物以上に価値のある偽物であるという。実にきれいなオチ。ホテルの窓から教会の二つの鐘が見える。一緒に音を奏でているものの、鐘の揺れ方はそろってはいない。これもまた夫婦や結婚生活を示唆しているように思えるのだ。示唆ばっかりの映画である。あれはこうではないか! こんな意味が隠されているのでは! などとめんどくさい観方をしたい人にはお薦めです。わたしだけど。

二人が広場の彫像を見るとき、まったく違う視点から見ていて意見が食い違う。男女は同じものを見ていてもまったく違うことを考えているのかもしれない。議論が好きな夫婦やカップルで観ると楽しい映画かもしれませんね。めんどくさい人向けか。

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