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2017

フォックスキャッチャー

FOXCATCHER / 2014年 / アメリカ / 監督:ベネット・ミラー / サスペンス、実在の人物を基にした映画
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お金で人間関係を買いたい。
【あらすじ】
お金持ちが選手を集めて最強レスリングチームを作ることにした。



【感想】
この映画は実在の人物、実際に起きた事件を基にしていますが事実とは異なる箇所も多く、だいぶ脚色されているようです(ciatr)。以下は、あくまで映画の感想ということで。

ロックフェラー、メロンに並ぶアメリカ三大財閥の一つであるデュポン。大財閥の御曹司であるジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)は、レスリングチーム‟フォックスキャッチャー”を指揮し、ソウルオリンピック制覇を目標に掲げていた。

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ロサンゼルスオリンピックのレスリングで金メダルを獲得しながら十分な報酬も得られず、生活費にすら事欠くマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)。ある日、ジョンからフォックスキャッチャーにスカウトされる。最高のトレーニング施設、高額の年俸、これ以上ない待遇に喜んで参加することにしたマークだったが、実はジョンは統合失調症を患っており精神が不安定だったのだ。時間が経つごとに狂気を増していくジョン。ジョンに引きずられるようにマークの精神も蝕まれていく。

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当時のレスリング選手の苦境が描かれている。金メダリストとともなればマスメディアに注目され華やかな暮らしをしているイメージですがそうでもなかったんですね。アルバイトと変わらない額で講演を行い、その講演も会場が埋まるわけでもない。スポンサーもつかず練習時間の確保もままならない。マークは自分が世間から不当に扱われていると感じている。ことあるごとに優秀な兄のデイヴ(マーク・ラファロ、右)と比較されるのも、彼の性格を歪める一因となった。

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兄は選手としても指導者としても有能、レスリング協会からの評価も高い。幸せな家庭を築いている。マークはレスリング協会の幹部たちにろくに挨拶もできず、みずから高い壁を作っている。

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ジョンとマークが意気投合したのはわかる気がする。この二人は貧富の差こそあれ似てるんですよね。世間からある一定の評価を受けていても、それを素直に喜べない。

ジョンはデュポン財閥の御曹司でありながら、その財産はすべて親から受け継いだもので彼自身が成し遂げたことは何一つない。彼がもっとも認められたい母親には「レスリングは下品」とまったく相手にされない。貧しさがコンプレックスというのは理解も容易だが、豊かさもまたコンプレックスになるのだろう。

親からすべて与えられている、何一つ努力していない、お金しか持ってない、みんなにそう思われているのではないかという思い込みは十分にコンプレックスになりうる。またそれがコンプレックスといおうものなら、それすら「贅沢」と片付けられてしまうのだ。

一方、マークは金メダルというすばらしい実績がありながらも、その活躍は兄デイヴの力があってのものだと思われている。マークは兄の実力を認めつつも反発もしてしまう。だが、性格に難しさのあるマークを受け入れてくれるのは、やはりデイヴしかいないのだ。

友人が一人もいないジョンと、孤独感を募らせるマーク、お互いに通じ合う弱さを持っていたのだろう。

ジョンにとってのレスリングは、結局、母に認められるための道具だったのかもしれない。練習を見に来た母親の前で、オリンピック選手たちを前にレスリングの基礎を教える姿は滑稽を通り越して痛々しい。この場面はねえ、観ていて体がむずがゆくなる感じがしましたよ。

選手たちは誰もジョンを否定せず、表では神妙さを装って彼の話を聞いている。お金を出してもらっているからジョンのいうことはなんでも聞く。少年時代、母親がジョンの友人にお金を渡して友達でいてもらったという逸話と、なんら変わってないのだ。

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ジョンとマークの決定的な違いは、マークには兄のデイヴがいたことだろう。この二人には誰にも入り込めない信頼関係があって、それこそがジョンがマークと築きたかったもの、渇望してやまないものだった。だから、ジョンの憎しみは最終的にはマークではなくデイヴに向かったのではないだろうか。

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ジョンはギリシャ神話のミダス王の逸話を思い出させる。触れたものがすべて黄金となってしまい、食べることも飲むこともできず飢えてしまう。本来、生活を豊かにおくれるはずの富が呪いとなって降りかかる。


ジョンを演じたスティーヴ・カレルは「40歳の童貞男」が有名ですが、もう完全に別人ですね。鼻は特殊メイクだそうです。何を考えているのか今一つわからず、心を閉ざした様子が恐ろしい。

マークとデイヴのスパーリング場面もすばらしかったですね。レスラーの人間離れした瞬発力や力強さが現れていました。よくもあんなに鍛えてきたなあという。本当にレスラーに見えますよ。

お金でだいたいの物は買えるけど、本当に欲しいものはお金で買えないこともあるんでしょうねえ。などと、お金がないわたくしが。陰気な映画ですが面白かったです。ジメジメネットリ支配したい人にお薦めです。


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