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2017

海にかかる霧

HAEMOO (해무) / 2014年 / 韓国 / 監督:シム・ソンボ / サスペンス、実際に起きた事件を基にした映画 / 111分
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船の上では俺が大統領! 大統領というより独裁者でした。
【あらすじ】
不況で生活が苦しいので密航のアルバイトを始めた。



【感想】
韓国で2001年に起きたテチャン号事件を基にした作品。この「実際に起きた事件に基づいている」という一文が曲者で、そう聞くと本当らしく聞こえるけれど実際に起こった事件とは掛け離れていることも多い。この作品は女性をめぐっての争いがありますが、実際のテチャン号にはそもそも女性は乗っておらず、だいぶ娯楽寄りに脚色されています。

以下、ネタバレしております。わたしはテチャン号事件を知らずに観たので、途中かなり驚きました。

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不況にあえぐ漁村。船を愛し、従業員の生活を守りたいがゆえに中国からの不法移民の密航を手伝うことにした船長カン・チョルジュ(キム・ユンソク、左、黒い服)。リーダーシップを発揮し、無愛想ながらみんなの兄貴分的ないい人なのかと思っていたら、だんだん独裁者っぽく変貌してくる姿がこわ面白い。

きっとお金があったときはいい人だったんでしょうねえ。人は変わるからなあ。金はなくともなんとか従業員の給料は確保しようとするし、いい船長だったんですよね(過去形)。

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背に腹は代えられぬということで、洋上で密入国者の受け入れを行う船員たち。嵐の中、次々と船に乗り移ってくる密航者たち。どうにか二十人以上を受け入れることに成功した。

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「船の上では俺が大統領で父親だ!」と大暴れの船長。人格変わってしまった。いうことを聞かない密航者には鉄拳制裁あるのみ。ひどい。鉄拳というか海に突き落とす。船長役のキム・ユンソクは「哀しき獣」でも不死身のターミネーターのようでしたが、こういう危ない役が実に合いますねえ。

韓国も密航を手をこまねいて見ているわけではなく、きちんと監視している。監視員の立ち入りがあると、船員は密航者を魚を保存する魚艙に押し込める。ワイロを渡して監視員に見逃してもらった後、魚艙を開けてみると壊れた冷凍装置から漏れたフロンガスで全員中毒死していた。ここはかなり驚きました。ただ、中盤でのこの衝撃が大きすぎたので、以降が失速してしまったような。

途方に暮れた船員一同だったが、船長の決断によって密航者たちを海に捨てることに決める。「岸に流れ着いたら一巻の終わりだ。死体を斬って血を出して魚にくわせるんだ!」と、船長のリサイクルスピリッツあふれる命令によって、死体を斬り刻むことに。地球に優しいな!

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え、えらいことなってしもうた‥‥、と地獄のような光景を見つめる密航者のホンメ(ハン・イェリ)。彼女だけは船員の一人と特別に親しくなり、暖かい機関室に入れてもらって難を逃れていた。えこひいきである。密航者がバラバラにされて海に投げ込まれるのを絶望的な気持ちで眺めている。

ここらへんからバトルロワイヤルのような船員同士の殺し合いが始まり、頭がおかしくなる船員が出たり、グチャグチャな展開になる。あまりに殺し合いが多すぎて雰囲気が軽くなってしまったような。序盤の緊張感はなんだったのかという。挨拶代わりに殺しにくる感じがある。

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そんな中、愛し合う二人。船員の一人ドンシク(パク・ユチョン、右)はホンメに一目惚れし彼女をかくまっていた。激しく愛し合うのはべつにいいのだけども。ドンシクは親戚のおじさんを船長に殺され、ホンメは仲間の密航者たちを皆殺しにされている。傷ついた二人がお互いを慰め合うということかもしれないが、一分前に目の前でおじさん殺されてるからなあ。死にたてホヤホヤなのに。性欲がとまらない。どうかしてませんか。一分前だぞ!

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性欲がとまらないといえば、チャンウク(イ・ヒジュン)である。セリフの半分以上が「セックスしたい」ではないか。船が死体だらけになっても「俺、まだセックスしてないのに~」と女を探し続ける。なんでしょうね、この人。一つのことを追い求めるすばらしさを我々に教えてくれている。夢をあきらめないで! という気持ちで応援しておりましたが意外とあっさり死んでしまった。死んでいいと思います。

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弱々しく見えたホンメのたくましさが光った。彼女は兄を探す目的で密航したといっていたが、本当は恋人を探すためだったのかもしれない。恋人を探すといえば船員に守ってもらえなかっただろう。

ラストでは二人の子を連れている。一人は船員ドンシクの子で、もう一人は兄(実は恋人?)の子なのだろうか。もっとも弱そうな者が実はもっともしたたかだった。とにかく人が死ぬ映画でした。


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