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2017

愛を読むひと

The Reader / 2008年 / アメリカ、ドイツ / 監督:スティーブン・ダルドリー / 恋愛 / 124分
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命に代えても知られたくないことがある。
【あらすじ】
好きになった人がナチスの看守をやっていた。



【感想】
監督は「リトル・ダンサー」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のスティーブン・ダルドリー。両方とも好きな作品です。

第二次大戦後のドイツ。15歳のマイケル(ダフィット・クロス)は通学中に気分が悪くなる。マイケルはハンナという女性に助けられる。体調回復後にマイケルはハンナの家に通うようになり、やがて二人は関係を持つようになる。

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ハンナ(ケイト・ウィンスレット、左)はマイケルに本の朗読を頼むようになる。

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二人の関係は、ハンナがマイケルの前から突然姿を消すことで終わる。その後、マイケルは大学の法学部に入学、授業でナチスの戦犯の裁判を傍聴する。彼女はその裁判の被告人として現れた。

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この映画の重要な見せ場は、ハンナが文盲(文字が読み書きできない)であることを隠すために裁判で嘘をつくところです。ここがちょっと不可解でした。彼女はこの嘘をつき通すことで死刑になる可能性すらあった。結果は無期懲役でしたが。

文盲であることを周囲に知られるというのは確かに恥ずかしいとは思うのだけど、そこまでして守りたいことなのだろうか。それはなに不自由なく読み書きできるからこそ気楽にいえることかもしれない。コンプレックスというのは他人にとってはどうでもいいことに映るが、本人にとっては常に重大な問題である。

それともハンナは、文盲であることをマイケルにだけは知られたくなかったのか。裁判の様子は新聞などで伝えられるだろう。それを恐れたのかな。だとするといじらしささえ感じる。マイケルとの美しい思い出を守りたかったのかもしれない。

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もう一つ疑問が浮かぶのがマイケルの行動。彼は今までのハンナの行動から、彼女が文盲であることに気づく。裁判で証言すべきか悩むものの、結局はしない。本来なら、不当に彼女の罪が重くなることは防ぐべきなのだろう。彼は彼女の気持ちをおもんばかって証言しなかったのか。それとも、事情はあるにせよ彼女の決断(教会でユダヤ人を焼き殺した)が許せなかったか、彼女と接点があることを周囲に知られることを恐れたのか。本当のところは本人しかわからない。

お互いがお互いのことを思っていたはずなのに事態は悪い方へ悪い方へといってしまう。そこに歯がゆさを感じる。裁判長が苛烈にハンナを責め立てる場面もいろいろと考えさせられる。

ハンナには教育もなく就ける職も限られている。女一人で生きていくなかで、どういう仕事かもわからないまま看守になり、結果として教会内の囚人を焼き殺すことになった。彼女が教会の扉を開けていれば囚人たちは逃げ出し、ひょっとすると暴徒化して街の人々(ドイツ人)を襲ったかもしれない。彼女にしてみればアウシュビッツで殺される人間が、ここで殺されても同じと思ったのかもしれない。彼女は責任感があったばかりに、非情な決断をしたとも考えられる。

ハンナが裁かれたのはドイツが負けたためであり、もし勝っていたならばもちろん罪には問われないだろう。これは本当に罪にあたるのだろうか。彼女のしたことは残酷なことだが、ナチスの罪をハンナ一人にかぶせているようで、観ていてつらいのだ。

戦争という大きな悪の中で、個人が正しいことをしようとすると死を招く。ハンナは責任を問われて死ぬことになってもユダヤ人を助けるべきだったのか。彼女が裁判長にいい返す場面がある。「あなたがわたしの立場だったなら、わたしはどうすればよかったのか」。裁判長は何もいえず黙り込んでしまう。

罪を憎んで人を憎まずというのは、こういったときに用いられる言葉なのかな。ハンナの死後、マイケルはハンナたちの罪を告発した本を書いた作家の元を訪れる。ハンナは彼女に缶に入れたお金を遺した。作家は錆びのついた缶だけを受け取り、お金はどこかへ寄付してくれという。個人としてのハンナの罪を許したが、ナチスの罪は許さなかったということなのだろうか。

ハンナは釈放の日に自殺をする。身元引受人であるマイケルと再会すれば、彼の美しい思い出を壊すことになると思ったのか。それとも彼女は、判決とは関係なく彼女自身の罪を許せなかったのだろうか。人の感情の複雑さ、難しさを感じさせるとても重苦しい作品でした。

あと、ケイト・ウィンスレットは景気よく脱ぎますね。スポーンって脱いじゃうからたいへんよろしいと思います。


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