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2017

柔らかい殻

THE REFLECTING SKIN / 1990年 / アメリカ、カナダ / 監督:フィリップ・リドリー/ ドラマ / 96分
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無垢ゆえに生み出された残酷さ。
【あらすじ】
近所にヴァンパイアのおばちゃんがいるので怖い。



【感想】
観る人を選ぶ映画がありますが、まさしくこの映画がそうなんだろうなあ。観ているうちにヤン・シュヴァンクマイエルを思い出した。画家であり小説家であるフィリップ・リドリーの初監督作品。

舞台は1950年代のアメリカ、アイダホ。8歳の少年セスの目を通して描かれる世界。

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セスはカエルの肛門から息を入れて膨らませパチンコで破裂させたり、人の家に侵入して物を壊したり、大人から見れば暴力的で残酷な振る舞いをする。父親が焼身自殺をして悲しむよりも、飛び散る火の粉の美しさにうっとりする。彼ははたして特別に残酷な少年なのか。

大人になれば理解できることが増えるが、子供の頃に感じた畏れ、思い込みなどはきれいに忘れてしまうことが多い。この映画には奇妙な大人たちが出てくる。鳥の死体を抱えて歩く双子、情緒不安定で父親とセスを罵る母親、黒づくめで亡夫の思い出を語るドルフィン、被爆した兄。

奇妙に描かれた人物たちは本当は奇妙でもなんでもないのかもしれない。セスの目を通しているから、彼らは奇妙に映っているのではないかとも思える。この映画でもっともまともに描かれているのが連続殺人鬼である男たちというのも奇妙である。彼らが一番まともに映るのだ。

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ロード・オブ・ザ・リングシリーズのアラゴルン役で一躍有名になったヴィゴ・モーテンセン。若い頃が観られるのも嬉しいですね。しかし、ヴィゴ・モーテンセンはストイックで真面目な役が多いなあ。あんましパッパラパーみたいな役は演じないのだ。観てみたいけども。

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セスというより子供全体にいえることだけど、子供というのは天使でも悪魔でもなく、何も描かれていない紙のような存在なのかもしれない。まだ何も描き込まれていない紙の白さを大人はときに純粋さと誤解するが、純白というより無なのではないか。

だからセスはカエルを破裂させ、胎児の死体を大切にし、父親の焼身自殺の際は飛び散る火の粉にうっとりする。自分の心が惹かれるまま、あるがままに行動したことが観客である大人の目からは残酷さ、暴力的に映っているにすぎない。ヤン・シュヴァンクマイエル作品や、有島武郎を読んだときに感じたものに近い。なぜこんなにも子供の感覚を持ち続けていられるのだろうという驚きがあった。

ドルフィンがセスを拒絶しないのは、彼女にはセスの悪意のなさが理解できているのだろう。

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セスは、ドルフィンが殺人者たちに殺されることを知りながらとめない。セスはドルフィンが吸血鬼だと信じ込んでいた。たしかにこの黒づくめは怪しいぞ。

ドルフィンの死を知った兄の慟哭によってセスは現実の世界を知る。自分がしたことの罪深さに気づき、セスは叫び続ける。彼は柔らかい殻をやぶり、少しだけ大人へと近づいたのだ。子供の頃、感じていた怖さを思い出させるような作品でした。子供時代に戻りたいような、でもやっぱり戻るのは怖いかも。小麦畑の美しさが印象的でした。

2017年2月28日~2017年3月27日まで、GYAO!で無料配信しています。
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