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2017

100歳の少年と12通の手紙

OSCAR ET LA DAME ROSE / 2009年 / フランス / 監督:エリック=エマニュエル・シュミット / ドラマ / 105分
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口の悪いおばちゃんに叱り飛ばされたい。
【あらすじ】
ピザを売りたいので難病の少年の相手をする。



【感想】
難病ものというと、やたらに泣かせようとして辟易することもありますが、そんなこともなく観られました。おばちゃんのたたずまいがいいですね。本当は情に脆いのに、あえて乱暴に振る舞うので家族からは誤解されている。この人は甘ったるいことはいわないし、自分をよく見せようともしない。いい人と思われたくないから悪態もつくし、周囲にはぶっきらぼうに映ってしまう。難儀な人だよ。

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10歳の少年オスカー(アミール)は白血病を患い、小児病棟に入院していた。彼が学校で悪戯をしても先生は気を遣って怒らないし、両親も腫れ物にさわるようにオスカーのことを扱う。大切にされているようでいて人間扱いされておらず、オスカーは周囲に苛立っていた。

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宅配ピザの配達にきていたローズ(ミシェル・ラロック)は病院の廊下でオスカーと衝突。ピザを落としてしまい、オスカーを怒鳴りつける。「気をつけな! ピザが台無しだよ。失せなチビ!」って、すごいなオイ。

ところが、怒られたオスカーはローズにすっかり懐いてしまう。自分を公平に扱ってくれるのはローズだけだったのだろう。

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ローズは、オスカーの主治医デュッセルドルフ医師(マックス・フォン・シド―、左)からオスカーの話し相手になってくれるよう頼まれる。でも、死にそうな子供の相手なんてイヤとはっきり断る。正直なおばちゃんだこと。

だが、おじいちゃんも負けておらず、ピザの注文が欲しいんじゃろ~? と持ち掛ける。やりますな、ご老人。ローズは渋々オスカーの相手を引き受けることに。

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しだいに距離を縮めていくオスカーとローズの様子は微笑ましい。ローズはかつてプロレスラー(嘘かな?)だったといい、現役時代の体験を面白おかしくオスカーに語って聞かせる。レスラーたちの鮮やかで怪しげなコスチュームや試合の様子も、どこか奇妙で愉快。

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ローズのオスカーとの向き合い方がいい。オスカーを子ども扱いしていない。だから、彼から「(ローズより)僕の方が先に死ぬ」といわれても「そうね」と正直に答える。わからないとか、そうとは限らないとか、お茶を濁そうとはしない。人生の価値は長さではないとか、あなたの人生には意味があったとか、そういうこともいわない。

子供に対して変な嘘もつかないし、言い訳もしない。対等に接しているように見える。子供は嘘に敏感という人がいるが、そうではないように思うのだ。大人が必死で考え抜いた嘘ならば子供もやはり見抜けないのではないか。大人が、相手を子供だと思って単純な嘘をつくから見抜かれてしまう。それは恐らく自分の子供時代を参考にしているからで、子供の頃にあまり考えていなかったからかもしれない。考える子は考えている。けっこうな悪だくみもする。ご注意ください。なんだか話が逸れた。

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ローズは嘘がつけない人間なのだと思う。これはねえ、けっこう大変なんですよね。相手に誠実に向き合いすぎるから苦しい。そもそも人付き合いがそんなに好きじゃないんですよ。

ローズは相手が不治の病の子供でも態度を変えない。オスカーが両親に対してきつく当たることに対し「(自分が先に死ぬから)何をいってもいいの?」と叱る。オスカーのことが大事だからこそ、弱さを武器にしてはいけないことを伝える。きちんと注意するローズの優しさにちょっとホロッとくる。

ローズの優しさは医師とのやりとりにも表れている。オスカーを救えなくて無力感に苛まれている医師に「バカみたい。先生は神様じゃない。単なる修理屋」と、きつい口調でいう。きついんだけどローズなりの優しさが言葉の底にあって、変に甘ったるくならないところがいいんですよね。こういう人にこそハイヒールで踏んでほしいものですよ。ええ。

難病ものというと物語が暗くなりがちですが、ローズが語るプロレスの試合を入れることで重苦しくもならずに楽しむことができます。残り時間の少ないオスカーの成長、ローズの芯の強さ、いい物語でした。



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