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2017

ヘイトフル・エイト

THE HATEFUL EIGHT / 2015年 / アメリカ / 監督:クエンティン・タランティーノ / 西部劇 / 167分
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美しい虚構の上に成り立った国。
【あらすじ】
雪山の山荘に閉じ込められた8人。みんな、ウソつきでした‥‥。



【感想】
面白かったなあ。久しぶりのタランティーノ作品。ふだんは映画を観て「これは誰が撮った」とはわかりませんが、タランティーノだけはわかるかもしれない。タランティーノに憧れた作品は多いが、それでいて、これを他の人が真似できるとは思えないのだ。

下品で皮肉の効いたセリフがマシンガンのように連射され、正しいと思った人間には裏の顔があり、人間関係は複雑に錯綜する。あまりのややこしさに眠くなったところで頭がド派手に吹っ飛ばされて眠気も吹っ飛ぶという。お腹いっぱい。最高。

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雪に閉ざされた山荘というと密室劇の定番で、山荘に来てからは場面が転換することはほとんどなくて舞台作品みたいだなと思っていた。公式サイトを確認したらタランティーノが脚本を書いた朗読劇だったんですね。それが好評で映画化に繋がったという。

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南北戦争終結から数年後の冬、猛吹雪が迫るワイオミング州。ジョン・ルース(カート・ラッセル、左)は賞金首デイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー、右)を引き渡すため、レッドロックの町に向かっていた。吹雪をやり過ごすため「ミニーの紳士服飾店」に立ち寄るが、そこには濃すぎる面々が待ち構えていたのです。

カート・ラッセルではなく、ジェフ・ブリッジスかと思っていた。似てるなあ。このカート・ラッセルは、だいぶジェフ・ブリッジス寄りのカート・ラッセルですよね。99%ジェフ・ブリッジス成分のカート・ラッセルというか何いってんの。

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タランティーノ作品といえばこの人。サミュエル・L・ジャクソンが今回も良かったですねえ。ちょっといい人に見せての後半の暴走っぷりったらない。サミュエル演じる元北軍騎兵隊少佐マーキス。観察力に優れ、いち早く洋品店の異変に気づき、怪しい連中をあぶり出していく。床に落ちたジェリービーンズなどの伏線もいいですね。馬小屋で相手の尻尾をつかもうというさりげなくも緊張感のあるやりとりとか。

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面白顔のティム・ロス。悪そうなお顔。全員が全員、裏の顔を持っているのが面白い。南北戦争は終結したものの、終結から間もないこともあって、未だに戦争を引きずっていがみあっている。

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賞金首であるドメルグは、たびたびジョン・ルースから暴力を振るわれるが、彼女はかわいそうな存在かと思いきや、相当ひどい差別的な言葉を口にする。誰が正義で誰が悪などなく、登場人物8人が憎しみに満ちている。まさにヘイトフル・エイトなのだ。

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印象的だったのはリンカーンからの手紙を朗読する場面。この手紙はマーキス少佐が持っていたもので、彼は自分が黒人なので白人からひどい扱いをされないようために手紙を肌身離さず持っている。リンカーンと文通しているということが彼の身を守ってくれる。実際、この手紙を利用したからこそ、彼はジョン・ルースの馬車にも乗せてもらえた。したたかに白人を利用している。

この手紙の内容は美しい。お互い(白人であるリンカーンと黒人のマーキス少佐)が手をたずさえて困難な局面を乗り越えていこうという内容なのだ。だが、手紙は嘘っぱちの偽物という。

物語を通して見えるのがアメリカという国の成り立ちで、人種、性別、戦争によって憎しみが渦巻き、誰もが誰かを迫害している。リンカーンですらネイティブ・アメリカンの虐殺をとめなかったという罪がある。すべての人間が加害者であり、被害者であり、噓つきで、それが山荘に集められた8人に凝縮される。リンカーンの手紙は嘘だが、その内容はとても美しい。美しい嘘の上に成り立ったのがアメリカという国なのかもしれない。

物語が説教臭くならず、たまに誰かの頭が吹き飛んじゃったりすることで楽しく観られるってのがまた最高ですね。登場人物の数が多く人間関係もややこしいはずなのに、話がうまく整理されているのも見事。本当にタランティーノはすばらしいですよ。役者はこぞって出演したがるし、作品は受けるし、これほど映画に愛された人もいないんじゃないかなあ。タランティーノ作品の中では「ジャンゴ 繋がれざる者」の次に好きです。

通常版でも167分と長めの作品ですので、長いのと下品なのがお嫌いでない方は是非。


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