03
2017

ロブスター

THE LOBSTER / 2015年 / ギリシャ、アイルランド、オランダ、イギリス、フランス / 監督:ヨルゴス・ランティモス / ディストピア、コメディ / 119分
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独身は罪。結婚できない奴はエビになれ!
【あらすじ】
45日以内にパートナーを見つけないとエビにされる。



【感想】
社会批判や風刺を作品に盛り込みすぎると説教臭く感じることもあるけれど、この監督の作品は笑って観られる。奇妙な世界観の映画。

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独身者になると身柄を確保され、独身者だけが集まるホテルへ送られる。このホテルで45日以内にパートナーを見つけられなければ、みずから選んだ動物に姿を変えられて森へ放たれる。独り身になったデヴィッド(コリン・ファレル)も、この狂気に満ちたホテルに送られてしまう。

主人公が放り込まれる状況がとにかく滅茶苦茶で笑える。この映画は登場人物がみなおかしなことをやっているのだけど、誰もニコリともしないんですね。淡々と事が進んでいくのが面白い。

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独身者たちがホテルで何をするかというと、様々なスケジュールをこなしている。これは狩りの様子。この社会制度に反発して森へ逃げ込んだ独身者どもがいる。あいつらを許すな! ということで、みんなで狩りに行きます。狩りに行けば親しくもなるし、そこで出会いだってあるじゃんかあ! ということなのかな。見事獲物を捕まえた人は、一人捕まえるごとに45日の期限が一日延長されます。これは捕まえるしかないぞお。

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左の女性は狩りの達人で、長い期間このホテルに滞在している様子。彼女はパートナーを見つけようなんて思ってないんですね。森でひたすら独身者を狩れば暮らしていけるのだ。この人はキャリアウーマンを示しているのだろう。仕事命で男なんかに食わしてもらう必要はない。

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中央左のかわいらしい女性は人気があり、みんなが狙っている。パートナーもすぐにできる。右の友人はパートナーが見つからず動物期限が迫っている。この友人に対し、人気のある彼女は「あなたが動物になっても、わたし、あなたが親友だったこと忘れないから!」という。もう、おまえ、優しいんだかひどいんだか。持てる者から、持たざる者への傲慢さに満ちた言葉よ。右の彼女は頭にきてビンタするという。そりゃ、そうなりますね‥‥。

友人の中から独身者が一人減り、また一人減りという。実生活でもあるなあ。監督~、こんな残酷な映画作る必要あるー?

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さて、これは性的な行為ではありません。メイドさんが男性の下腹部を刺激することで性欲を高め、パートナー探しをがんばってもらおうというもの。当たり前ですがホテルでは性行為はなし。こするだけ。当然、マスターベーションも禁止で、もし破るとトースターで手を焼かれます。あちちちち!

アホすぎてすばらしい映画。

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もうこんなところいられるか! と森へ逃げ出したデヴィッド。独身者だけが暮らすコミュニティに入れてもらう。しかし、ここで運命の出会いが。音楽の趣味も合うし、あれ、ひょっとして気の合うパートナーできたかも?

ところが森のコミュニティは理想郷などではなく、ここにはここの狂ったルールがあった。こちらでは恋愛は一切禁止でパートナーを作ることは裏切りとみなされる。君ら、ほんとに極端だな。多様な価値観を許さない考え方は、カルト教団とか独裁国家を思わせる。どちらの集団も狂っているのだ。

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恋愛禁止の掟を破ったデヴィッドのパートナー(レイチェル・ワイズ、中)は、リーダーから視力を奪われる手術をされてしまう。二人は独身者コミュニティからも逃げ出すことになる。

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視力を奪われた女性とレストランにいるデヴィッド。彼はトイレへ向かい自分の目にナイフを突き刺す間際で映画は終わる。

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この行為の意味がよくわからなかった。パートナーを選ぶ条件として「価値観や趣味が同じ」ということを挙げる人がいる。序盤に出てきたかわいらしい女性は、よく鼻血を出していた。彼女を落とすために、自分の鼻を打ちつけて鼻血を出している男がいた。

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これもデヴィッドの目つぶしと同じ行為だろう。相手と同じ状態になる、同じ価値観を持ちたいという。だが、どう見てもバカげている。わたしたちはバカげていることを、さも重要なことと思い込んで必死になっているだけなのだろうか。本当に何もかも同じなんてあり得ないのに、現代人は価値観の一致という幻想にこだわりすぎてしまう。その結果、パートナーができないことを揶揄しているのだろうか。

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思えば、動物にされてしまうことが本当に不幸なのかもよくわからない。人間以外の他の動物のように、小難しいことを考えずに交尾してしまえばいいじゃないか。それだって生き方の一つだぞ、といわれているようにも思う。

デヴィッドは45日間を過ぎたときにはエビになることを選んだ。自分なら何の動物を選ぶだろうか。想像してみたけれど、安心して過ごせる動物などいないことに気づく。自然界ではどんな動物でも生きのびることは困難だし、食物連鎖の頂点にいる動物でも人間に狩られることがある。犬や猫ならちょっとはマシかもしれないが、それだってどんな飼い主に飼われるかわかったもんじゃない。「好きな動物を選べる」という選択肢があることがそもそも贅沢なんだ、ということなのかな。そこに気づけよという。

誰にでもお薦めできる映画ではないのですが、とても面白くて好きな映画です。監督の頭がおかしいと思います。




こちらもヨルゴス・ランティモス監督の作品。本当に変わった作品を撮ります。今後どんな作品を撮ってくれるんだろー。楽しみ。
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