FC2ブログ

旧作映画の感想、ネタバレしてます。
28
2017

ギヴァー 記憶を注ぐ者

THE GIVER / 2014年 / 南アフリカ、カナダ、アメリカ / 監督:フィリップ・ノイス、原作:ロイス・ローリー / ディストピア / 97分
dL__20170531111022267.jpg
管理社会は本当に悪しきものか?
【あらすじ】
管理社会で幸せに生きてきたけど、真実を知ってしまいました。



【感想】
大好きなディストピアものです。みんな同じ服で同じ思想。いいぞ、いいぞ~。

d6.jpg

ちょっと異質の管理社会映画でして、明確な悪役がいるわけでもなく、民衆がすさまじい圧迫を受けているわけでもないんですね。だからかな、あまりこの社会を脱したいとも思わないし、脱した時のカタルシスもないという。やや盛り上がりに欠けるようにも思えましたがいろいろと面白い。

文明が荒廃した社会から立ち直り、人々は完全な理想郷を作り出すことに成功していた。コミュニティでは争いや憎しみ、暴力はなく、もちろん戦争もない。恋愛もセックスもない。ジョナス(ブレントン・スウェイツ)は就職の年齢に達し、長老から「記憶を受け継ぐ者」に選ばれる。

人類が封印したさまざまな記憶をギヴァ―(記憶を与える者)から受け継いでいく。ギヴァ―はジェフ・ブリッジスです。記憶は選ばれた者だけが継承していく。完全に記憶を消し去ってしまうと、その記憶がよいか悪いか判別できなくなるからでしょうか。

d1__20170531111038668.jpg

認識についての表現が面白い。色という記憶も禁じられていて、たとえば「赤」を知ったときに世界が初めて色づいて見える。ギヴァーに色の記憶を伝えられるまでジョナスの世界はモノクロなんですね。なぜ色が禁じられているかというと、色は差別を生むからという。

ギヴァーは美しい雪景色の記憶も見せるが、雪も禁じられている。雪は飢饉や災害をもたらすこともあり、コミュニティでは天候はコンピューター管理されている。物事にはたいていメリット・デメリットはあるが、それを受け入れて生きるのか、拒否するのか。

コミュニティでは感情すらも封印され、人々は薬を摂取することで感情を抑制している。ジョナスは記憶を受け継いだことにより感情のすばらしさを知り、感情なしでは生きる意味はないとすら思うようになる。ギヴァーは相手の手を握ることで記憶を相手に映像で見せる。なお、異性同士が触れ合っていると通報される仕組みです。わたしが通っていた高校も、管理社会だったのか。

gL__201705311110253dd.jpg

ずっとある物事を知らずに生きてきたとして、人は体験せずにそれを想像できるのだろうか。色を知らなかったジョナスに、言葉だけで色を伝えることはできたのか。もし記憶を受け継ぐ者に選ばれなければ、ジョナスは特に不自由は感じず、色のない一生を送っただろう。

自由のない世界に生きている人に、自由を伝えることはできるのか。その状態が「自由ではない」と認識することができるのは、すでに自由を獲得している人なのかな。もちろんそれは認識の上での話で、自由がないところで育ったとしても「なんかおかしい」とか「ひどい」とは思うだろうけど。思うよねえ‥‥。思わなかったら怖いなあ。

d0_20170531111039ad0.jpg

そんな管理社会を束ねるのが主席長老(メリル・ストリープ)。感情を知ったジョナスが友人フィオナ(オデヤ・ラッシュ、右)にキスをする場面がある。この場面を長老たちが監視している(ヒマなのか?)のだけど「今、何をしたの?」という感じで意味をわかっていない。

sAL__2017053111102469d.jpg

ところが主席長老だけは「けしからん!」と怒っている。彼女も、記憶を受け継ぐ者だったのかもしれない。そうでないとキスの意味がわからないはず。彼女は記憶を受け継ぎながらも、管理社会こそが理想の社会と信じ、世界を管理する側にまわったのだろう。

フィオナはジョナスの助言を受け入れ、感情を抑制する薬をやめて感情を取り戻していく。そしたら、さっきまでキスの意味も知らなかったのに、もう自分から。これだからさあ!

ジョナスは人々の記憶の解放を考え、ギヴァーに相談する。ここがよくわからないのだけど、記憶を持った者があるエリアまで行くと、なぜか人々の記憶が解放される。ギヴァーは「おまえを待っていた!」と、ジョナスを応援する。で、ジョナスを送り出してくれるんだけども、その記憶開放エリアまでバイクで30分ぐらいに感じるんですよねえ。近い。

べつに、ジョナスが出てくるの待たなくても自分で行けたのでは‥‥。うーむ。おじいちゃん、今までなぜ行こうとしなかったのか。

ghAL_.jpg

この管理社会が明確な悪かというと、どうもよくわからない。発育が悪い赤ん坊を殺してしまう場面があって、そこだけが悪いようで、あとは特に問題がないような。みんな楽しそうだし、なんなら住んでもいいと思いました。わたし、今も恋愛禁止の管理社会におりますので。みんなもそうだよねえ。そうっていって!

管理されている者は、自分が管理されていることをわからない。そういうことをたまに思い出すようにしたい。管理する政府との派手な対決、革命などを期待してみると期待はずれかもしれません。地味な話ですが楽しめました。地味ディストピアお好きな方は是非。


関連記事
スポンサーサイト



0 Comments

Leave a comment