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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
09
2017

パニック・トレイン

LAST PASSENGER / 2014年 / イギリス / 監督:オミッド・ノーシン / サスペンス / 97分
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じっくりと撮られた、止まらない系サスペンス。
【あらすじ】
電車が止まりません。



【感想】
止まらない系サスペンスという言葉があるのかな。検索したらなかった。電車やバスが止まらないというのには大別して3種類ある。爆弾が仕掛けられ、あるスピード以下になると爆発するから止まれない「新幹線大爆破」「スピード」、なんらかの故障で止まれない「アンストッパブル」、犯人に車両を占拠されて止まれない「サブウェイ123」「タイム・トゥ・ラン」などです。偉そうに分類してみた。

原因はいろいろだが、ようするに止まれないのだった。この映画はタイプ3の犯人に占拠されて止まれないに当たりますね。うーむ、それほど意味のない分類。

ストーリーや雰囲気、舞台となる電車の古さもあって80年~90年代の映画なのかと思いきや、公開は2014年でした。そこがこの映画でもっとも驚いたところ。携帯電話が出ているから、それほど古い作品ではないと途中で気づいたのだけども。話の展開や、キャラクターの性格、車両、頼りにならない警察など、全体的に古さを感じる映画。だけど、その古さは悪いということじゃなくて、古いもののいい部分を取り入れようとしたように思える。よくまとまっている作品に思えました。

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シングルファザーの医師ルイス(ダグレイ・スコット)は息子のマックスを連れて深夜列車に乗っていた。線路脇に倒れている人影を発見したルイスは、車掌に異常を知らせようと探すが車掌は乗っていない。停車する予定の駅にも止まらず、列車は暴走を続ける。ルイスは他の乗客と協力して列車を止めようとする。

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ルイス親子と偶然乗り合わせたサラ(カーラ・トイントン、右)。いやあ、いい女感がにじみ出てましたねえ。ルイスの子供にコーヒーをこぼされてしまいコートが汚れる。でも、まったく笑顔を崩さずに「今日はそういう日だからあきらめるわ」と微笑む。せめてクリーニング代をというルイスの申し出も受けない。

あらすてき。そう思っていたら、トイレでコートを洗ったが汚れが落ちなかったとかで新しいコートをルイスに要求する。サラに強引に電話番号を渡されるルイス。サラはルイスとまた会う理由を取り付けたかったのだろうけど、ルイスにしてみれば「クリーニング代じゃ駄目なのか。クリーニングで落ちなかったらコートを弁償するのは仕方ないけど。でもでも、そんなこといったらセコイ男と思われるしー」と困り顔。結局サラに押し切られてしまうルイスなのだった。ルイスのうだうだっぷりに、謎の親近感。

サラ役のカーラ・トイントンが美しく撮れていましたよ。サラはルイス親子に好意を持ち、ルイスに積極的にアピールしてくる。ルイスが医者だからか? 医者だからだな! 相手が医者とみるとすぐこれだよ!

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列車を降りる際、ルイスの唇を突然奪うサラ。子供の前ですよ! 慌てるルイス。そんなルイスに「次はもっとがんばって」と妖しく微笑むサラであった。なにこの余裕。怖い。おまえ、さては常習犯だな。

サラの人柄はじっくりと描かれるものの、これ以降はもうそれほど活躍しないのだった。短い映画にも関わらず、なかなか事件が起きないのも珍しい。ハリウッド映画だと序盤のつかみを強烈なものにすることが多いですが、イギリス映画だからかな。それぞれの人物説明に長い時間を使っている。丁寧なので感情移入しやすい。30分ぐらい、ルイスとサラがどうでもいいことを話していたような。

早く何か起きないかなー、誰かひどい目にあわないかなーって、思ってしまった。

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そんでですね、ルイスは他の二人の乗客と協力して列車を止めようと試みる。この乗客たちはそれぞれ親子関係にトラブルを抱えている。お互いをうまくいっていない家族のようにみなし対立するが、トラブルに対処するうちに打ち解けていく。いい話ではあるものの、二人とも、ちょっとステレオタイプなキャラかなあ。

犯人の不気味さはよく描かれていた。犯人は序盤にわずかに映るだけで、ほとんど登場しない。まるでスピルバーグのホラー「激突!」を思わせる。「激突!」は犯人がまったく映らないが、この映画でもほとんど映らず、一言のセリフもない。

ただ、ドアを打ち破ろうとするルイスたちに、銃などを使うのではなく大音量の警笛のみで応戦するのは心細い。破られたらどうするのだ。うーむ、列車を占拠するならもうちょっと計画性が欲しいもの。銃、刃物、スタンガン、催涙スプレー、拘束用の結束バンド等は用意して欲しい。準備大事、そなえよ常に。

イギリスの列車事情が垣間見えるのも面白い。まるで昭和を思わせる車内。こんなのが現役で走っているのだろうか。子供がドアに触れたら、走行中なのにドアが開いてしまったり。本当にこんな危ないことがあるのかな。ルイスが車内で携帯電話を使うとき、騒いでいる若者に「ちょっと静かにしてくれ」というのも国柄を感じさせる。日本ならば、まず車内では掛けないだろうし、掛けるなら自分が通路に出る。

それから、ルイスが病院から呼び出される描写がある。この病院、医者が一人しかいないのだろうか。ルイスはいつまでたっても行けないわけで、患者が大変なことになってしまうような。不思議。

あらゆることに古さを感じる映画で、犯人の動機にしても、テロ、経済格差、人種差別などを関連させてないところに珍しさを感じた。だいたいここら辺を絡めてくるのが当たり前なのだけど、映画が映画内で完全に完結しており、終わったらすっきりと帰れるような作品なんですね。今も世の中のどこかでこういった事件が起きているとか、虐げられている人々がいるとか、暗い含みを持たせることがない。初期のジャッキー・チェン作品のように後腐れが何もない。もうちょっと何かあってもいいじゃないか、というぐらいない。気持ち良く帰れる感じを狙ったのだとしたら、意図は十分達成されたように感じる。地味でそこかしこに古さを感じつつも、よくまとまっており楽しめました。Yahoo!のレビューを観たら、評判悪かったですね。こういうの、受けないのかー。

作品解説をみたら、この映画はわずか500ポンドで作った予告編をネット公開して投資を呼びかけ、250万ドル集めて作られたとある。まさかクラウドファンディングで資金調達していたとは。映画は古いが、資金調達は新しいという。サラ役のカーラ・トイントンが光っていました。あんな人がグイグイ攻めてくるのなら、わたしだって医者になりたい。


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