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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
10
2017

ナイトクローラー

NIGHTCRAWLER / 2014年 / アメリカ / 監督:ダン・ギルロイ / サスペンス / 118分 
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モラルを売ってお金に換えよう。
【あらすじ】
報道スクープ専門のパパラッチとしてのし上がりたい。



【感想】
ジェイク・ギレンホールが出ている作品は変わったものが多い。今回は、いち早く現場に駆けつけて凄惨な事件を取材するパパラッチの世界を描いている。またしても癖のある作品です。いいぞ~。12キロ減量して撮影に臨んだというジェイク・ギレンホール。ギョロ目が怖い。

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この人がまあ、ひどい人でねえ。主役がこれでよく作品が成り立ったなあと感心。悪人を主役にすることはできても、嫌な人を主役にするのは難しいように思える。悪人といっても、法律に違反しているが共感を得られる場合がある。必殺仕事人のような法で裁けない悪を裁くとか。

そうじゃなくて、この映画の主人公ルイス(ジェイク・ギレンホール)は法律に違反していてモラルもない。最悪じゃんかあ‥‥。嫌な人間を2時間観続けることはなかなか苦痛のはずですが、それでも十分惹きつけられた。魅力的な悪人はときに強烈な磁力を持つが、嫌な人には磁力はないと思っていたのだけど違うのかなあ。くさやとか、納豆が好きになるのと同じ現象なのかな。謎の魅力。

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盗んだ金網やマンホールの蓋を売りさばいて暮らしていたルイス(右)。稼ぐためなら手段を選ばなかったがうまくはいかない。くず鉄屋に自分を雇ってくれるよう売り込むが「コソ泥は雇わない」と冷たくあしらわれる。このくず鉄屋が立派な人かといえばそんなことはなく、ルイスが持ち込んだ盗品の金網だけは買い取る。

ルイスという人間は、現代の歪みを煮詰めた存在に思える。人脈も学歴もないルイスはまともに就職すらできない。真面目にコツコツ働いていれば道は開けるといいたいが、もはや真面目にコツコツやる場所に行くことができない。本当に彼だけが悪いのか、彼という存在を生み出した世間にも責任の一端はあるのか。

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偶然、事故現場に遭遇したルイスは凄惨な映像を撮ってマスコミに売りつけるナイトクローラーと呼ばれるパパラッチの姿を目にする。警察無線を傍受する機器を手に入れたルイスは次々と凄惨な映像を撮り、テレビ局に売り込むことに成功する。悪のサクセスストーリーの始まりである。

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テレビ局側にもモラルがぶっ壊れた人間はいる。深夜番組を担当するニーナ(レネ・ルッソ、右)は他局との視聴率争いで押され気味。より過激な映像を求めていた。ルイスに「白人の女が喉を切り裂かれて逃げるようなのがいい」と注文。正気ですか‥‥。

ニーナは最初はルイスのことを見下している。ルイスが語るインターネットから引っ張ってきたビジネス格言や組織論を鼻白む思いで聞いている。だが、ニーナの要求に応えて過激な映像を提供し続けたルイスは、ニーナとの力関係を逆転させることに成功する。彼女の体を求め、高額な報酬を要求し、徹底的に自分に従わせる。ただ生意気だった若者が、手がつけられない魔物に変身していく様子はゾクゾクするような面白さがある。

彼はインターネットを教師としていて、対等な関係というより、議論に勝ってどちらが上かを示したがる。彼の語り口が高圧的で、うまく人間関係が築けないのもそこに原因があるように思える。ただ、ルイスが語っていたビジネス格言や組織論は最初こそ単なる受け売りで上滑りしていたのに、彼が階段を一段上るごとに本当に説得力を持ってきたようで恐ろしい。やがてはニーナもルイスに洗脳されてしまう。

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死体の位置はこっちの方がより刺激的な映像になるな‥‥、と位置を整えるルイスさん。演出も企業努力なのだ。

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部下も雇ってビジネス拡大。よりモラルなき者が勝利を収める。人が死ねば死ぬほどお金になるぞ~。目の前で銃撃戦が起こるようにセッティングに余念のないルイスさん。おまえ、犯罪だぞ。

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いよいよ魔物っぷりに拍車がかかってまいりました。

この物語で面白かったのは、彼が全くなんの制裁も受けないところである。ブラック企業の経営者をデフォルメすると、こんな感じなんだろうなあ。ルイスは起業に成功し、車も増やしてさらに事業を拡大していく。彼のような人間を社会が評価し続ける限り、ますますモラルは崩壊していくのだろう。じゃあ、その原因がわたしたちにないかというと、これはちょっと怪しい。過激な報道をするマスコミの情報を得るということが、この狂った競争に加担している。衝撃的な事件の映像、悲しむ遺族、芸能人の不倫など、実は知る必要がないものを必要と信じ込んで観ているだけなのかもしれない。

ファニーゲーム」を観たときも思ったけれど、残酷な映像に眉をしかめていると、画面の向こうから「じゃあ、なんでこんな映画観てんの? 本当は楽しんでるでしょ」と問いかけられているような。良識ぶった軽薄さを見透かされる決まりの悪さを覚える。

ルイスのような人間が増えるということはやはり恐ろしい。あなたやわたしが事故に遭ったとき、ルイスは苦しんで死ぬのを撮影してから救急車を呼ぶだろう。警察には「助けようとしたが間に合わなかった」と平然と説明するのだ。モラルを売る気になれば、案外簡単にお金に換えられるのかもしれない。

後味は良くないし、誰にでもお薦めとはいきませんが興味のある方は是非是非。ギョロ目のルイスさんが怖すぎる。


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