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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
24
2017

ズートピア

ZOOTOPIA / 2016年 / アメリカ / 監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア、ジャレド・ブッシュ / サスペンス、差別 / 108分
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誰もが差別の加害者になりうるとしたら。
【あらすじ】
肉食動物の間でがんばるウサギ警官。キツネ最高。



【感想】
「アナと雪の女王」は観方によってはLGBT問題を扱ったものにも見えた。今までのディズニー映画からすると毛色が変わっているし、ディズニー映画にそぐわないのではないかとすら思えた。でも、それは「観方によっては」という話で製作者がLGBTについて意識していたかはわからない。どちらにもとれるという。逃げられるのだ。

だが、この映画は真正面から差別と偏見について取り上げている。ディズニーが社会問題を扱うようになったのかと驚きました。難しいテーマをとりあげても退屈にも重苦しくもならず、高い娯楽性も保たれている。奇跡的なバランスの上に成り立っている。

脚本を見ると実に7人の人間が関わっている。黒澤映画も共同脚本によって面白い作品を排出し続けた時期があった。これはとても重要なことに思える。やはり人が集まると脚本に穴が少なくなるし、ピンチからの脱出に思いもよらぬ方法がとられたりして面白い。

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ウサギとして初めての警官となったジュディ(声・ジニファー・グッドウィン、左)。警察学校では肉食動物たちにバカにされるものの、持ち前のすばしこさと負けず嫌いを発揮して首席で卒業する。両親ですらウサギが警官になれっこないとジュディを信じてないんですよね。おまえの将来はニンジン農家だと決めつけている。よく考えると怖い話。

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念願であるズートピアの警察に配属されたジュディ。彼女は警察学校での優秀な成績から、難事件の捜査を任されると期待していた。だが、彼女に与えられた仕事は交通違反の切符係だった。ここ、あとで本当に重要な部分になってきます。これがねえ、すごく活きてくるんですよ。

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負けず嫌いなジュディはバリバリと仕事をし、切符を切りまくる描写は躍動感があってすばらしい。きちんと子供も大人も楽しめますよねえ。

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ジュディはひょんなことからキツネの詐欺師ニック(声・ジェイソン・ベイトマン、中)と出会い、肉食動物が凶暴化する事件の捜査をしていく。

両者に共通しているのは、共に差別を受けてきたということ。力のないウサギであり、かわいらしい容姿によっても差別を受けるジュディ。キツネのニックは幼い頃に「ずる賢いキツネ」という偏見による差別で傷つき、いつしか「ずる賢い」キツネの振る舞いをすすんでするようになっていた。ニックがジュディの上司からジュディをかばう場面は本当に良かったですねえ。彼らの騙し合いと友情も楽しい。

この映画で肝になるのは、差別されてきたジュディが、ニックを凶暴な肉食動物と差別してしまう悲しさにある。状況から見てしょうがないといえるものの、それでも差別に悩んでいた自分が差別者になってしまう。悪意はなくとも差別をしてしまう怖さを感じる場面だった。

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肉食動物が凶暴化した原因は、青い花だった。この花を肉食動物たちに与えた黒幕がいたのだけど、見事なミステリーになっていました。そして、まさか序盤の演劇のやりとりが最後のどんでん返しに活きてくるなんて! 伏線の回収のしかたがすばらしい。青い花の対処法もわかり事件は解決する。肉食動物への差別問題もひとまずは解決したのだ。

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◆交通違反の切符係
最後、ニックは警察に入ってジュディとコンビを組むことになる。朝のミーティングで、上司は二人に「おまえたちは交通違反の切符係だ」と告げる。ガッカリするジュディとニックだが、お茶目な上司は「冗談だよ~。本当はちゃんとした事件の捜査だよ~」ということで二人は意気揚々と現場へ向かうのだった。めでたしめでたし。

これね、本当によくできていると思いましたよ。赴任早々、ジュディがガッカリするのは交通違反の切符係を命じられたときだった。切符係だってちゃんとした仕事なのに、彼女は差別している。そして事件は解決しても、彼女はやっぱり交通違反の切符係をバカにしたままなのだ。自分が偏見を持っていることに気づいてもいない。この部分はあえてこうしているのだと思う。大人向けのフックですね。この映画を観た子供が、大きくなって再び映画を観たら、こういった仕掛けに気づいて驚くだろう。洒落たマネを。

彼女は善良で正義感溢れる警官。だが、その彼女ですらなんらかの差別感情はあるのだ。怖いですよね。差別感情というのは「ある」「ない」ではなく、濃度が問題なのではないか。濃度がある一定の度合いを超えると危険なものになってしまう。自分だけは差別感情を持たない人間であるという考えは危うい。

差別がいけないのは当たり前だが、厳密に人の差別感情を糾弾していくと全員が差別者になってしまうだろう。窮屈になって冗談もいえなくなってしまう。だから、警告の意味も込めてジュディに切符係への差別感情を持たせ続けたのではないか。誰もが差別感情はあるのだという。人の命に係わるような差別は正されなければならないが、ある程度は許し合っていかないと暮らしにくくもなる。

ディズニー映画は子供が観るものという偏見がありましたが、今回は圧倒的な力で打ち砕かれてしまったので嬉しい。これからどんどん観ていこうと思います。

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脇役も良かったですね。モグラのゴッドファーザーとか、スピード狂のナマケモノとか、ニックの相棒の小さい奴とか。

ウサギを飼っていた友人がいってましたが、ジュディは緊張したときに鼻の辺りが膨らんでピクピクするそうで、これは実際にウサギが緊張したときに起きる仕草だそうです。耳がピンとなるとかは誰でも気づくけど、細かいところに凝ってるんですねえ。

誰にでも薦められる作品という言葉がありますが、この映画がまさにそうでした。子供が観られるからといって作品のレベルをまったく落としてないのがすばらしい。難しいテーマと娯楽性の共存は可能なんだなあ。ニックがかっこ良すぎるぞ~。最高です!



一つだけ疑問なのは、肉食動物は何を食べてんだろ。
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