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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
27
2017

アイアムアヒーロー

2015年 / 日本 / 監督:佐藤信介、原作:花沢健吾 / ホラー / 126分
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牛もウナギも国産にこだわるなら、ゾンビも国産にこだわりたい!
【あらすじ】
ゾンビが出たので逃げる。



【感想】
ゾンビ物を観るとき、どうしても金字塔である「ウォーキング・デッド」からマイナスして考えるという方法をとってしまう。それぐらい「ウォーキング・デッド」はすばらしいし「ウォーキング・デッド」以外のゾンビ物は観る必要はないとすら思っていたのだ。

だがですよ、そんなゾンビ業界に一石を投ずる作品。たいへんがんばっていたんじゃないでしょうか。この映画もゾンビが現れてパニックになって逃げるというスタンダードなゾンビ物。だからこその難しさというのはあるんでしょうねえ。もう大半のことは、やり尽くされているので。だが、この映画はちょっと変わったゾンビ物ではなく正統派のゾンビ物を目指している。挑戦してるなあ。


◆主人公「鈴木英雄」の丁寧な描き方
大泉洋さん演じる漫画家アシスタントの鈴木英雄がすばらしいですよ。名前がまたいいですね。鈴木という平凡さの極みにある苗字に対し、名前の英雄(ひでお)は英雄(えいゆう)と読める。だが、本人には英雄らしさはどこにもない。苗字のように平凡な鈴木君が自己の限界を乗り越えて英雄になる成長物語としても捉えられる。

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大泉さん以上のはまり役はいないんじゃないでしょうか。ただごとならぬ凡人感。役者が凡人を演じても、どこかすごさを感じたり、容姿の良さがネックになって、ちょっと一般人とは違う雰囲気が出てしまう。だけど、大泉洋さんの持っている「近所のお兄ちゃん」という佇まいがいい。すごさをまったく感じさせないというのは、かなりすごいこと。威圧感・オーラゼロにて生まれながらの平社員顔、それが大泉洋だ! 

褒めてます。本当に。悪口ではない。

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英雄と同棲している徹子(片瀬那奈)が英雄の駄目さをより引き立てる。英雄は安月給の漫画家アシスタントで、一向に芽が出る様子もない。徹子はパンツ一丁でベッドに寝っ転がり、テレビを観ている。同じ部屋にいる英雄のことなどなんにも気にしてない。この空気がいいですね。

閉塞感のある安アパートでの生活で、色っぽい雰囲気になることもない。光の翳り具合も、二人のうらぶれた生活を象徴する。テレビでは駄目男について放送しており、徹子がボリュームを上げてみせるさまがまた嫌な感じでいいですね。現状にイラつく女の様子が実にねえ‥‥。こんな生活いやあ!

徹子が刺々しくなるのもわかる。34歳という年齢からくる焦り。夢ばかり語りまったく売れない英雄。英雄が趣味のショットガンを構えて遊んでいるのを見ると、本当にイラつくのだろう。おまえ、そのショットガンを売って家賃にあてろよ、と徹子は英雄にショットガンを押し付けて家から追い出してしまう。


◆邦画での銃のリアリティ
邦画に銃を持ち込むというのは難しいんでしょうねえ。どうしても日本人が銃を扱うとリアルさに欠ける。アメリカのように、そこにも銃、ここにも銃というわけにはいかない。幸運なことですが、日本人にとって銃はあまりにも日常から遠い。でもそうなると銃を巧みに操る日本人のリアリティが確保できない。そこで、趣味がクレー射撃という設定になったのだろう。苦しいけれど、でもこれが一番説得力のある解決法かもしれない。

英雄に銃をもたせて部屋から追い出すのも、ストーリー上やむを得ずの強引さではある。英雄が「銃の使用許可証がないと銃刀法違反になっちゃうから‥‥」と許可証をもらうところは笑ってしまった。ケンカの最中にそれ? って思うが、英雄の真面目さがまたいいんですね。


◆新しいゾンビ像
この後の徹子のゾンビへの変身ぶりが怖くてねえ。今までのゾンビはおおまかに分けて2種類あったように思う。「ウォーキング・デッド」や「バイオハザード」のような、ゆっくり動くスタンダードなゾンビ。「ワールド・ウォーZ」「28日後...」のような走ったり壁を登ったりという、アスリートのようなゾンビ。この映画のゾンビは生前の習慣が残っており、生前の習慣にちなんだセリフをしゃべったり、行動をとるのが面白い。行動に多様性があっていいですね。いいゾンビ!

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観衆に拍手を求める高跳びゾンビはキャラが立ってましたねえ。この映画ではゾンビではなくZQN(ゾキュン)といいます。人間がZQNに咬まれると、しばらくしてZQNに変身してしまう。黒い血管が浮き上がり、目が血走って濁りながら変身していく様子は迫力がありました。特殊メイクは藤原カクセイさんが担当されたそうですが、すばらしかったですね。今までは「ゾンビは洋物に限る」とアメリカ産ばかり持て囃されてましたが、国産だっていけるじゃないかあ! ムシャムシャ。

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街中がパニックになるというお約束の描写も臨場感がある。「ワールド・ウォーZ」はこの場面がとても良かったですが、この映画でも車が突然突っ込んで来たり、大通りに出ると群衆が押し寄せてくる様子がかなりの迫力。ここは本当にいいですよねえ。ずっと観ていたかった。

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有村架純さん演ずる女子高生ゾンビ。理由はわからないが完全にはZQN化しないという。かわいいから?

うーん、続編ではこの子からZQNの抗体が作られたりするのかな。半分ZQNになってしまうものの、完全に凶暴化するでもなく怪力を得る。彼女は英雄を助けてくれるものの、後半は何もしないで寝てるだけ。その何もしない彼女を見捨てないというのが英雄の人間性の証左なのだろうか。

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◆ゾンビ映画の王道的展開
お約束となるコミュニティのカリスマ的支配者の独裁、権力をめぐる内部抗争などもあります。まあ、これはこれでという。ただ、時間がないから駆け足なように感じた。

で、この人がZQNになったとき自分の目を潰してしまうのだけど、なぜ目を潰したまま人間を追って来られるかがわからなかった。高跳びZQNが脳がないのに高跳びをやっているのも、ちょっとおかしいような。半分頭が潰れてるだけで脳はあるのかな。細かいとこが気になる。

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◆平凡な英雄が、ヒーローへ
ロッカーに隠れていた英雄が恐怖を乗り越えて仲間を救いにいくところは熱い展開でした。最後の闘いまでショットガンを使わずに残しておいたのも、盛り上げるためによかったように思います。「は~い」と、気の抜けた感じでショットガンを撃つところは新しいヒーロー像を感じた。

そういえば、コミュニティの支配者からショットガンを渡すようにいわれたとき「免許のない人が持つと銃刀法違反になっちゃうから‥‥」という断りの文句には笑ってしまった。自分の身を守りたいからという理由ならわかるが法律違反て。この緊急時に、おまえはなにをいってるんだという。そのズレ方が英雄の良さでもある。

最後、英雄はバッタバッタとZQNを撃ち倒していくが、ZQNたちがずいぶん気を遣っているようにも見えた。英雄に一斉に襲い掛からずに、時代劇の斬られ役のように一体ずつゆっくりやられていくという。さっきまでのやる気はどうしたんだ、君たち! やっぱり所詮はゾンビだからなあ。やる気が続かないのかなあ。


映画化された時点では原作が完結してなかったので続編はあるのでしょうか。続編も観たいと思いました。これほど丁寧にいい作品を作っても、ゾンビ物としてみるとやはり「普通だった」と思ってしまったのも本当のところです。それほどにゾンビ物で新しい何かを出すのは難しいように思えます。

そういえばラーメンズの片桐仁さんも売れっ子漫画家役でチラッと出てましたね。ZQNになってほしかった。弱そうだけど。カズレーザーさんもZQNに混じっていますね。もしまったくゾンビ物を観たことがない方で、グロさに耐性がある方は是非是非。片瀬那奈さんがまあ怖いですよ。


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