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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
17
2017

君の名は。

2016年 / 日本 / 監督:新海誠 / 恋愛、SF / 106分
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新海誠作品の集大成。
【あらすじ】
男女の体が入れ替わりました。



【感想】
◆新海誠作品の主人公たち
新海誠監督のこれまでの作品は、主人公にあまりいいイメージがなかった。暗く沈みがちで周囲から理解されずに浮き上がっている。周囲が彼らを拒絶するというより、彼らのほうが周囲を拒絶しているように映った。主人公たちには目標があり、周囲の目など気にせず目標に向かい黙々と邁進する。

監督は「ほしのこえ」の制作をほぼ自分一人で行っている。膨大な作業をほぼすべて自分で行うという並外れた意志の強さと、作品に登場する主人公たちの芯の強さはかぶって見える。監督の姿が強く投影されているように感じていた。

「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」でも主人公たちの心の壁を強く意識させられ息苦しくなる。感性の鋭さ、繊細さを感じると同時に弱さが目についた。理解されないこと、不幸であることに酔っているようにも見える。だけど心の底ではたった一人、運命の赤い糸に結ばれた理解者を求めている。独りよがりで脆弱に映る。これまでの新海映画の主人公たちには「魁!!男塾」と「北斗の拳」を読ませたい。余命いくばくもない若者のオナニーを見せられているような居たたまれなさがあった。もっとマシなたとえがないのか。

ただ、鬱々と内に篭もって格闘するのもやはり必要なことに思える。脆弱でありながらもその姿には共感し惹かれる部分があった。孤独で夜中に叫び出したいような苦しみが人を成長させるように思える。

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ところが今回の主人公たちは違うんですよね。明るくなっている。ちょっと暗いところは持ちつつも、それでも普通に友人とコミュニケーションはとれている。それどころか、危機を回避するために積極的に外部に働きかけ、友人を巻き込み、対立のあった父親を説得しようとする。独力での問題解決にこだわってきた前作(続き物というわけではないが)までの主人公たちと大きく異なっている。


◆男女の入れ替わり
男女が入れ替わるという古典的モチーフは、これまではお互いの身体の特徴や男女の社会的立場がテーマになることが多かったが、この作品ではその部分は強調されない。都会と田舎の生活を対比させることに効果的に機能していた。現代では都会と田舎の差は縮まり、ネットワークのおかげで情報格差はない。違いがあるのは風景、人口、施設、慣習だろうか。三葉(みつは)が嫌っていた口噛み酒、組紐という伝統的なものが巡り巡って三葉を救うことになるのも面白い。

脚本と音楽の調和もすばらしい。男女が入れ替わった後のお約束ともいえる体の確認からの流れはコメディ作品なのかと思っていた。瀧と三葉が都会と田舎の生活をお互いに体験し、それが夢ではなく現実だと気づいたときにRADWIMPSの「前前前世」が流れ出すときの疾走感。ここは本当に気持ちいいしワクワクした。映画が始まって約30分だけど、ここから本当に映画が始まったように思える。洒落てるなあ。「ヒメアノ~ル」も、こんな演出がされてましたね。音楽は終盤でも効果的に使われている。

音楽の使い方にはきっと賛否があるだろうなと思います。「秒速5センチメートル」のときにも楽曲に頼りすぎており、曲のプロモーションビデオのようだという批評があった。では、それが作品を損なっているかといえばそうとも思えないし、面白ければPVになったとしても何も問題がないように思うのだけど。曲も映画を構成する要素なのだから、大いに頼ればいいように思える。

ただ、海外に売る場合はまたちょっと違うのかも。セリフが下に、歌詞が右に字幕で表示され、歌詞に重要な意味がある場合は観るのが大変になる。そういうことを考えると歌詞がないほうがいい場合もあるかもしれない。

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途中から話はSF的になり、そしてややサスペンス要素も入り込む。一つの作品で、あれもこれも楽しませてくれるようで嬉しい。そして今までの作品と同様に、空、星、街並みの描写の美しさがすばらしい。



◆明確なハッピーエンド
父親である市長を説得する場面が描かれておらず、そこが映画のピークになるかと思いきやそうでもなかったんですね。市長は妻の入れ替わりを見ているので、娘にも同じことが起きたと推測することはもちろんできるのだけど。心情を独り言でペラペラしゃべる描写があるわりに、そこはあまり親切ではないというのは少し気になりました。でも気になったのはそこぐらいかなあ。主人公二人の声は俳優があててますがとても合ってました。神木隆之介さんは本当になんでもできるなあ。

新海作品といえば、わりと不幸な形で終わる場合が多いんですよね。失踪感というのが一つの特徴だと思う。登場人物の心に開いた穴は埋まらず、失踪感を抱えながら静かに生きていく。それは作品としてはいいのかもしれないが、投げっぱなし感というか、またやってくれたなオイというのがあったんですよ。

いささか大衆迎合的といわれるかもしれないけれど、きれいに落ちている。今まで監督から虐められてきた新海作品の登場人物たちも成仏できるのではないか。わかりやすいカタルシスが与えられたエンディングになっている。わたしは単純なので、こういうのが好きなんですよ。もう、これでいいじゃないか。宇宙の果てに一人ぼっちとか、もういいです。

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だからといって、いきなり「君の名は。」は作れないのだろうなあ。今までの作品があったからこそ「君の名は。」に繋がったのだろう。新海誠監督の集大成のような作品に感じる。金曜ロードショーや日曜洋画劇場で、アニメといえばジブリ、エヴァンゲリオン、細田守監督作品でした。これからは「君の名は。」も毎年放送されることになるのでしょう。面白かったです。






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そういえば、てっしー(右)がいい奴だった。三葉(左)のことが好きだったろうに。早耶香(中)も、てっしーの三葉への好意を知りながら、てっしーが自分の所に来るまで待っている懐の広さを感じる。三葉はなんもわかってないだろうけど。
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