08
2017

グッドナイト&グッドラック

good night, and good luck / 2005年 / アメリカ / 監督:ジョージ・クルーニー / 実在の人物を基にした映画 /  93分
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マスメディアの凋落を責める前に。
【あらすじ】
赤狩りに反対したい。



【感想】
1950年代、冷戦下のアメリカ。ジョセフ・マッカーシー議員が中心となって、共産主義者を摘発する赤狩りが行われていた。法的手続きを無視して摘発を行う赤狩りに対し、エドワード・R・マロ―とCBSの番組スタッフ達は、マローがホストを務める番組「See it Now」で、証拠もなく共産主義者と決めつけられて空軍から除隊勧告を受けたマイロ・ラドゥロヴィッチ中尉を取りあげる。この放送がマッカーシー議員の逆鱗に触れ、番組はさまざまな方向から圧力を受けることになる。

赤狩りによって言論の自由が危機に晒されたアメリカで、権力に対して戦いを挑んだマスメディアを描いている。

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ジョージ・クルーニー監督作品。まーた、こんな面白くない作品撮ってー。史実に基づいた固い内容で娯楽要素は少なめです。人によっては退屈かもしれません。あまりヒットしそうもない内容ですが、こういった作品でも資金が集まり映画になっているのがすごいですねえ。

アメリカという強大な国はしばしば凶暴な振る舞いをするが、それでもアメリカを他国よりも信用できるのは、揺り戻しの力が働くことにある。赤狩りを行った後、「あれは間違ってたなあ」と映画にして世界中にそのあやまちを晒すことができる。アメリカは間違いの多い国に思えるが、それでもアメリカほどあやまちを認めることに寛容な国はないように思える。

とはいえ、毎回けっこう派手にやらかしますよね。さては、謝ったらすむと思ってるのでは‥‥。

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番組を取り仕切るエドワード・R・マローを演じたデヴィッド・ストラザーン。常に沈鬱な表情を浮かべ、煙草をくゆらせている。ニコリともしないのがいい。昔は煙草を吸いながらテレビに出ていたことに驚く。スパスパ吸っとる。

マロー自身は共産主義者ではないが、共産主義者と決めつけられた人々への弾圧を見逃すことはできない。CBSの会長からは放送をやめるように言われ、スポンサーは番組を降りてしまう。マローも、共産主義者ではないかという疑いを掛けられる。番組は打ち切りの危機に陥り、軍からも圧力が掛かる。マローとスタッフ達はどんな圧力があろうとも屈しない。

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CBSの会長からは再三、この問題を扱わないように説得される。会長からの食事の誘いを、マローは「CBSをつぶすのに忙しくて」と断るのが洒落ている。本当にねえ、冗談を言うときニコリともしないんですよ。かっこいいなあ。己の職を賭してまで、人は信念や正義のために戦えるのだろうか。会長も立派な人ですね。マローのような自分の局をつぶしかねない問題児を抱えて、好きに番組を作らせているのだから。

1950年代のマスメディアにできたことがなぜ現代のマスメディアにできないかと、マスメディアだけを責めるのはたやすい。だが、マスメディアを責める前にわたしたち庶民はどれほど賢くなったのだろう。マローはテレビの可能性を信じている。テレビが娯楽に寄りすぎるのを危惧してもいるが、テレビによって庶民が考える材料を得られるとも考えている。現代のテレビはマローが望んだような、人を啓蒙するようなものに育っただろうか。

そうは思えない。くだらないコンテンツに溢れているとしたら、それは視聴者もそういったものを求めているからなのだろう。マスメディアだけに責任を負わせるのは違うように思う。だが、それでも公器としてのテレビに期待するところはあるし、わたしたちが理解できようができまいが庶民を啓蒙するようなものもたまには作ってもらいたい。1950年代に比べて、現代の正義感や倫理観が劣るとしたら、あまりにも進歩がないし情けないように思うのだ。

だけど、言論の自由について考えず、好きな物だけ観ていられる現代はそれなりに正しい方向に進歩してきたということなのかな。だから、のほほんとしていられるという。でも、それは先人の功績であって今の人のものではない。人が成し遂げたものの上であぐらをかいて、好きなことばかりやり続けていたら、どんどんバカになっていくような。バカは加速する。加速した結果、今のわたしがいる。だから、たまにこういった映画を観て襟を正すのもいいかもしれない。

マローの落ち着いた語り口と、決然とした意志を湛えた瞳がすばらしい。派手さはまったくないがいい映画でした。ジョージ・クルーニーは映画に携わる者の良心として、この作品を撮らないわけにはいかなかったのだろう。意義ある作品だと思います。娯楽作品として観るにはやや退屈ですので、退屈なものを観たくて観たくてたまらないときにお薦めです。


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