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2017

刺さった男

LA CHISPA DE LA VIDA / 2011年 / スペイン / 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア / コメディ、ドラマ / 94分
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わたしたちの頭にも鉄の棒が刺さっているのかも。
【あらすじ】
頭に鉄の棒が刺さって動けなくなりました。



【感想】
タイトルをスペイン語翻訳にかけると「生命の火花」でした。「ドジな男」とか、そんな意味かと思った。違った。邦題の「刺さった男」というのは簡潔でいいんじゃないでしょうか。鉄の棒、刺さってるし。シチュエーションスリラーかと思ったら、そういうわけではなく、家族や自分の価値観を見つめ直すような作品になっています。ちょっとだけコメディタッチですね。

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失業中の元広告マン、ロベルト・ゴメス(ホセ・モタ)は二年間、就職先が見つからず失意の日々を送っている。スペインの失業率は高い。外務省のページを見ると2015年は22.1%となっている。ザ・ニュー・スタンダードの記事を見ると、25歳未満の若者の失業率は48.8%とあり、「45歳以上で失業すると再就職する機会はほぼゼロに近いと言われている」とある。やり直しのきかなさというのは日本でも感じるけれど、スペインはより厳しいのかもしれない。

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ロベルトは恥を忍んでかつての仕事仲間に雇ってもらおうとするが、みな冷たく相手にしてもらえない。再就職の目途もたたず、家に帰る気にもなれず、ロベルトはかつて妻と新婚旅行で行った思い出のホテルへ車を走らせていた。現在はホテルは取り壊され、遺跡の発掘現場となっていた。発掘現場に侵入したロベルトは事故に遭い、落下してしまう。転落場所には鉄筋があり、後頭部に刺さって身動きが取れなくなってしまう。ドジっ子である。

すぐに救助隊がかけつけるがロベルトの状態は危険で動かすことはできない。テレビで事故現場が中継され、ロベルトは一躍有名になってしまう。

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ロベルトは元広告マンだったこともあり、この状況を利用して金儲けを考える。マーケティング会社と連絡をとり、自分の単独インタビューを高額で売り込もうとする。注目を集めることが金になるというのはどこでも同じなんですね。命がけのYouTuberのような。「頭に鉄の棒、刺してみた」である。死ぬけど。

妻(サルマ・ハエック、左)はロベルトの考えに反対する。彼女はお金はともかくとしてロベルトが助かればそれでいいと考えている。バンドをやっている息子(右)や娘も同じ気持ちなのだ。

この映画を観ていてなんだか悲しい気分になったのは、ロベルトが金の呪縛に絡めとられていて、お金がないと幸せになれるわけがないと信じ込んでいることである。だが、綺麗事を言っても、実際にお金はある程度必要というのもあるわけで。ロベルトがすべて間違っているかというとそうも言い切れない。

でも、彼にはすてきな妻と子供たちがいるのに、まったく家族は見えていないという悲しさもある。彼の頭に刺さった鉄の棒というのは、金の呪縛を示しているのではないだろうか。その鉄の棒は、わたしたちの頭にもきっと刺さっている。

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マーケティング会社の男(左)は、ロベルトの単独インタビューと引き換えに高額の報酬を約束する。妻はこの申し出を断るが、ロベルトには「単独インタビューを引き受けた」と嘘をつくんですね。ロベルトにとってはお金を遺すことだけが家族の幸せに繋がるという信念があり、妻はその考えを尊重したのだ。ロベルトは最後の最後まで金の呪縛から抜けきれなかった。だから、彼は鉄の棒により命を失ったのではないだろうか。

コメディタッチでちょっと笑えるところもあります。でも、手段を選ばず、なんでもお金にするという考え方はねえ。観ていてげんなりしてしまう。マーケティング会社の人間たちがひどいというわけでもないし、ロベルトも同じ人種なんですよね。現代の風潮をシニカルに取り上げてるから、後味が悪くなるのも仕方ないことかもしれない。それにしても、うーむ、ですよ。家族以外だと、警備員のおじさんぐらいしかいい人でないしなあ。


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