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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
24
2017

ミスティック・アイズ

WRECKERS / 2011年 / イギリス / 監督:D・R・フッド / サスペンス / 85分
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信じていたものが崩れていく不気味さ。
【あらすじ】
新婚夫婦のところに弟が突然やってきた。



【感想】
デイヴィッド(ベネディクト・カンバ―バッチ)とドーン(クレア・フォイ)の夫婦は、デイヴィッドが少年時代を過ごした村へ引っ越す。のどかな村で新婚生活を送ろうと考えていた二人だが、そこへデイヴィッドの弟ニックが転がり込んでくる。弟は戦地で心に傷を負っていた。

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男前のトカゲこと、ベネディクト・カンバ―バッチが出ておりますよ。この画像だとあまりトカゲっぽくないけども。邦題の「ミスティック・アイズ」はベネディクト・カンバ―バッチの瞳のことを指しているのだろう。たしかにこの人の水色の瞳は不思議な魅力がある。

特に大きな事件が起きるわけでも、ひっくり返るようなトリックがあるわけでもない。信じていたものが少しずつ覆っていく、じんわりとした不気味さがある。イギリス映画らしい作品ですね。人気出なさそうだな、これ。あまりにもじんわりしすぎてる。

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物語の序盤は、突然、新婚生活に割り込んできた粗暴な弟ニック(ショーン・エヴァンス)に惹きつけられる。戦争で心に傷を負ったこともあり、行動が少しおかしい。夜フラフラと無意識に出歩いたかと思えば、戦友が死んだ場面がフラッシュバックし泣きわめいたりもする。それと、ニックの行動に違和感を与える描写がうまいんですね。大丈夫かな、この人? と思わされる。

デイヴィッドとドーンは煙草を吸わないせいか、家に灰皿がない。だからニックは皿を使って灰皿代わりにしているのだけど、特に二人の許可を得た様子もない。注意するほどでもないのだけど、ちょっと嫌な感じという。あれ、この人、大丈夫かな? と思うか思わないか、ギリギリのラインなんですよ。

一応、仲良く暮らしていた三人だが、徐々に関係は軋みだす。

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興味深かったのは田舎町の描写。自然が溢れ、人々は純朴で、教会でみんなで歌を歌ったりして仲も良さそう。だが、それは上辺だけで、ニック(左)はドーン(中)に「あの家のオヤジは娘と関係を持っている」だの「あそこは誰それが暴力を振るって」だの、村の良くない話を吹き込んでいく。

今まで見えていたものが、がらりと姿を変えていく不気味さがある。それはデイヴィッド(右)についても言える。

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ドーンから見たデイヴィッドは、優しくて紳士的で理想の夫だった。だが、デイヴィッドはドーンに対して、大小さまざまな嘘をついている。次第にそれが明らかになっていくのが恐ろしい。自分が信じていた人が、実はまるで違う人間で、だとすると自分が見ていた彼はなんだったのだというドーンの脅えや怒りは共感できる。

もう誰が本当のことを言っているのか、わからなくなってくる。芥川龍之介の「藪の中」のような。人間に裏表があるという考え方は間違っているのかもしれない。表というのは、今まで自分から見えていた部分にすぎないのであって、違う面が出ると裏切られたと感じてしまう。だが、表も裏も、その人であるのだ。

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ドーンはデイヴィッドに裏切られたことを知り、あっさりと浮気をする。これはドーンの裏の顔と見ることもできるが、そもそもそういう人だったとも言える。誰かを見るとき、「自分が知っているのはその人の一部にすぎない」と意識して接することはほとんどない。自分が見た印象がすべてであるのが普通だ。いちいち「この人は本当は‥‥」などと考えていたら面倒だし、疲れてしまうから。そこのところを、この映画はうまく突いてくる。

デイヴィッドは母親を突き落としたかもしれないし、家畜の鶏を殺したかもしれない。最後はニックを殺したかもしれない。ニックに女装の趣味があり、デイヴィッドと関係を持っていたかもしれない。ドーンの子供は恐らく浮気相手の子供で、デイヴィッドはそのことに気づいたかもしれない。町の人たちは純朴で気のいい人などではなく、さまざまな問題を抱えているかもしれない。すべては「かもしれない」なのだ。信じていたものが次々に覆っていく気味の悪さを感じた映画でした。

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「WRECKERS」という原題ですが、意味を調べると「破壊者、解体業者、(事故車などを牽引する)レッカー車」などの意味がある。普通にとらえると「破壊者」という意味なのかな。最初、この破壊者は弟のニックを指しているが実はデイヴィッドだったという。

でも、「レッカー車」という意味にも捉えられるような。事故車である弟を牽引する兄という。レッカー車の方が事故車より優位な立場かというとそうも思えない。レッカー車というのはレッカー車だけでは存在する意味がない。事故車を助けるために作られたのがレッカー車であり、事故車とレッカー車は共依存の関係にある、というのは強引すぎるこじつけかもしれないけど。

なかなか言いたいことを言ってくれないような、もどかしさを感じる映画でした。スッキリしない! モヤモヤしたい人にお薦めです。


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