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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
19
2017

彼は秘密の女ともだち

UNE NOUVELLE AMIE / 2014年 / フランス / 監督:フランソワ・オゾン / 恋愛、コメディ / 108分
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ただ一人の理解者さえいれば生きていける。
【あらすじ】
女装趣味を隠さず生きることにした。



【感想】
性的マイノリティをテーマにした作品は、どうしても重苦しくなってしまう。周囲の無理解や偏見との戦いは避けられず、本人や家族は心に傷を負っていく。それでも、ありのままの自分でいることを貫き通して強く生きていくというものが多い。

ところがこの作品にはそういった重さはない。社会も偏見はありつつも、それなりに理解がある。フランスはやはり進んでいるのかな。従来のテーマだとフランスでは映画にする価値は失われており、もう一歩、二歩、進んだところを描いているように感じる。

監督は「スイミング・プール」「危険なプロット」などのフランソワ・オゾン。監督自身がゲイであることを公表している。

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妻・ローラは病気によって亡くなり、シングルファザーとして子育てをしている夫・デヴィッド(ロマン・デュリス)。「タイピスト!」にも出ていましたね。この人、ちょっと癖のある性格の役が多いなあ。

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子供の頃からの親友・ローラ(右)に先立たれ、失意のクレール(アナイス・ドゥムースティエ、左)。クレールは生前のローラとの約束を守り、デヴィッドと幼い娘リュシーを見守っていく。

ある日、クレールがデヴィッドとリュシーの様子を見に立ち寄った際、デヴィッドが女装して育児をしているのを目撃してしまう。デヴィッドは異性装者だったのだ。異性装者というと、なにやらかっこいい響きがある。漢字にすればたいていなんでもいけるのではないか。女性下着頭部装着者とか。ゴリゴリの変態だった。駄目だった。

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デヴィッドは自分の女装癖をクレールに告白する。クレールはためらいつつもデヴィッドを受け入れていく。デヴィッドはクレールに付き合ってもらって婦人服や化粧品を購入したり、ナイトクラブで遊んだり、女同士のように友情を深めていく。

クレールは、ありのままの自分でいようとするデヴィッドに刺激を受けたのか、夜の夫婦生活でも大胆になっていく。

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クレールには、イケメン・高収入・スポーツ得意・性格良い・性的マイノリティに理解がある、という非の打ちどころのない夫・ジル(ラファエル・ペルソナ、右)がいる。もうコイツでいいじゃないか! と思うのですが、だんだんとデヴィッドに惹かれていく。

クレールには同性愛を匂わせる描写がある。親友のローラとかなり親密だったが、二人とも世間体を気にしてか異性と結婚している。自分が同性愛者であることを無意識に抑圧していたのかもしれない。それがデヴィッドとの接触によって再び開花したようにも映る。

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左目のマスカラを塗るときは左手、右目は右手でやると塗りやすいらしい。クレールから教えてもらって喜ぶデヴィッド。こういうちょっとしたことって、その性別でないとわからないですよね。

女装したデヴィッドから迫られるものの「あなたは男だから無理!」と拒絶するクレール。もうここら辺は性別が錯綜していて、観ていて混乱する。デヴィッドは女装はしているが性の対象は女性のようなのだ。一方、クレールは本質は同性愛なのかもしれないが、異性愛もいける。だから、デヴィッドを女性と認めるとすればOKのはずである。体の中心に棒はついてますけど。

ややこしいなあと思ったが、これがこの作品の狙いなのかもしれない。女装の異性愛者とか、同性愛者とか、もうそんなことはどうでも良くて、最終的には性別を超えた「ありのままの自分」というところにくるのではないか。ありのままの自分を受け入れてくれれば、それが異性愛だろうが同性愛だろうが関係ないという。だからもう差別とか偏見とかね、そういう部分で戦う映画ではないのだと思う。

実際、この映画では差別や偏見に苦しむ描写はほとんど観られない。街に出たデヴィッドが通行人から奇異の目で見られる場面もあるが、ひどいことを言われたりすることもない。ナイトクラブには同性愛者のカップルがおり、ショッピングなども普通に楽しんでいるのだ。

ラストは、デヴィッド、クレール、娘のリュシーが仲良く並んだバックショットで終わる。三人は家族になったのだろう。デヴィッドのストレッチデニムの着こなしは完璧で惚れ惚れする。クレールとジルの夫婦関係は終わったのだろう。ジルは本当になんの落ち度も過失もないわけで、かわいそうだなあ。クレールは人間としてデヴィッドの方が好きになってしまったのだろうから、これはもう仕方ないことなのだろう。

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この場面、どこだったか思い出せないけどいい画ですね。「あなた、この人(異性装者や自分と異なる嗜好の人)を受け入れられる?」と、観客の偏見を試すような、クレールのいたずらっぽい表情。

軽い気分で観られるフランスらしいコメディ映画でした。良かったですよ。最後に出てくる娘・リュシー、かわいらしかったですねー。天使のようでした。


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