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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
22
2017

氷点

1966年 / 日本 / 監督:山本薩夫、原作:三浦綾子 / ドラマ / 96分
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殺人犯の子供の血は汚れているか。
【あらすじ】
自分の子供を殺した殺人犯の娘を引き取って育てる。



【感想】
昼メロほどではないにしろ、ややドロドロした展開の氷点です。1966年公開の作品ですので50年以上前の作品ということになる。古い作品のいいところは現代とのギャップを楽しめるというところにもありますね。

旭川市在住の医師辻口啓三(船越英二)と夏枝の夫婦は、夏枝が村井靖夫と密会している間に、3歳になる娘ルリ子を佐石土雄に殺されてしまう。

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真面目で嫉妬深い小市民的性格の辻口啓三。器の小さい役というのは、船越英二はピッタリですねえ。小物っぷりが共感できるなあ。娘・ルリ子の死体発見現場に啓三、夏枝、不倫相手の村井(この時点では不倫はしてない?)も居合わせるが、落ち込む夏枝を慰めている村井を見て啓三は嫉妬している。娘の死に直面し、自分の腕に娘の遺体を抱えているときですら嫉妬してしまうという啓三の醜さは、わかるような気もするのだ。こんなときなのにねえ。

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妻・夏枝(若尾文子、左)は娘の死で落ち込み、あらたな子供を欲しがっていた。啓三は不貞の疑いのある夏枝を許すことができない。夏枝を罰するために殺人犯佐石土雄の娘を引き取って、夏枝に育てさせることを思いつく。発想がいかれてるが大丈夫か、この人。

魅力的な夏枝には若尾文子。相変わらずの妖艶さ。夏枝の不倫相手・村井(右)には成田三樹夫。数々の悪役だとか「探偵物語」の服部刑事役で有名な成田さんですが、こんな役もやってたんですねえ。東大中退という学歴に驚く。うーむ、悪そうなお顔なのに優秀だったのか。

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啓三に佐石の娘を紹介した医師・高木雄二郎(鈴木瑞穂、右)。テーブルに足を乗っけるというのはハリウッド映画でたまに見かけましたが、こんなところでも目にするとは。お行儀が悪い。啓三とは対照的に高木は豪放磊落な印象。「女は子宮でモノを考える」を連発。監督はよっぽどこのセリフ、気に入ったんだろうなあ。複数回使われている。実際、印象に残るセリフなのだ。

女は本能に従って生きる(夏枝は、娘・ルリ子の代わりに新しい子供を引き取って子孫を残したがる)というような意味なのだろう。女性蔑視という印象もある言葉だけど、高木が使うと不思議とそんなに悪い印象はない。愛嬌があるキャラクターなんですよね。

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この人、顔が面白いからかな?

高木は夏枝の前で無神経に「女は子宮でモノを考える」と言ったり、啓三は佐石の娘を夏枝への復讐のために引き取ろうとしたり、村井は夏枝と関係を持とうと迫る。「女は子宮でモノを考える」と女をバカにしながら、男もマヌケで何も考えていないという。この構造の滑稽さがちょっと面白い。どっちもどっちか。

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ルリ子の空白を埋めるために引き取った陽子(大楠道代、右)。その後、美しく成長する。陽子の弾けるような美しさに嫉妬する夏枝(左)。

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陽子に想いを寄せる眉毛の濃い好青年・北原(右)。なんと、津川雅彦さんです。わー。

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陽子をかわいがってくれる夏枝の友人・藤尾辰子には森光子。

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陽子を妹として見れず、愛してしまう兄・徹(山本圭、左)。有名な役者ばかり出ていますね。で、この兄妹ですが「あそこまで競争だ」「負けないわよ!」と駆けっこをするわけですが。この歳でそんなことやるー? というところに時代を感じる。若すぎるぞ。

それでですね、自分の生い立ちを知らずにすくすくと成長した陽子ですが、自分が殺人犯の娘と聞かされて自殺を図る。親が殺人犯だからといって、娘が差別的扱いを受けていいかといえばそんなことはない。陽子は「自分の先祖をさかのぼっていけば、悪いことをした人の一人や二人はいる」みたいなことを言っているんですね。それでも自分に殺人犯の血が入っていることが許せないのだ。ここがこの物語の恐ろしいところではないか。

理屈では、殺人犯の親に対して自分はなんの責任もないと知りながら自殺を図る。感情では許せないということなのかな。もし、陽子の知り合いに殺人犯の娘がいた場合、陽子は理屈ではその子に責任はないと知りながら、やはりその子を差別してしまうのではないか。この差別感情は、作品が発表されてから半世紀以上たった現代においても通用するテーマなのかもしれない。とても残念なことですが。

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脈絡なく、妖艶な若尾文子を貼る。

どうでもいいが、高木がしばしば使う「フラウ」はドイツ語で「夫人」の意味。気取って「ワイフ」という英語が使われた時代もあったけれど、それと似た感じで使われたのだろうか。言葉もそうだけど、馬がソリを引いていたり、牛乳配達があったり、生活にも時代を感じる。

この映画に出てくる人々は、みな多かれ少なかれ罪を犯している。嫉妬から妻への復讐のために陽子を引き取る啓三、陽子の素性を知るや陽子に冷たくあたる夏枝、自分の生い立ちを許せずに自殺を図る陽子。生きていれば誰もがなんらかの罪を犯していく。それでも人を許すことは難しいし、許せないがためにより苦しんでいく。


ウィキペディアを見たら、日本テレビの番組「笑点」は立川談志が「氷点」をもじって付けたとあった。さすが。
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