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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
06
2017

砂上の法廷

The Whole Truth / 2016年 / アメリカ / 監督:コートニー・ハント / サスペンス / 94 分
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誰もが嘘をついている。
【あらすじ】
弁護をしたいけど依頼人が口をきいてくれない。



【感想】
邦題は「砂上の法廷」。「砂上の楼閣」という言葉があるけれど、砂の上に建てられた法廷というのは関係者の証言が嘘だらけということを表したのかな。なんかすっきりしないタイトル。すっきりしない映画なのだった。

監督はコートニー・ハント。アメリカとカナダの国境で密入国を手助けしてお金を稼ぐ女性たちを描いた「フローズン・リバー」を撮っています。まだ本作と合わせて二本しか撮ってないんですね。もっと撮ってほしい監督。「フローズン・リバー」もそうだけど、地味な作品だから資金が集まらないのかなあ。

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今回のキアヌ・リーヴスは敏腕弁護士。アクションがまったくないんですよ。たまにはこういうキアヌもいいと思います。

Yahoo!映画の評価を見たら平均で☆3つ(評価411件)という辛めの評価。法廷場面はよく取材してあり、練られた脚本だと思ったのですが、法廷場面が長くて盛り上がりに欠けるからかなあ。地味ですが切れ味のある短編小説を映画化した感じがしました。

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大物弁護士が自宅で殺され、容疑者として逮捕された息子マイクの弁護を引き受けることになったラムゼイ(キアヌ・リーヴス)。だがマイクは口をきいてくれず弁護のしようもない。圧倒的に不利と思われた裁判だったが、事件を語る証人たちの言葉に嘘があることにラムゼイは気づく。

ネタばれせずに書くのが無理なので犯人を書いてしまいますが、実はキアヌが犯人という。なかなかね、珍しいんじゃないでしょうか。主役の弁護士が犯人ということではなく、キアヌが犯人というのも。ああ、キアヌはこういう役もやるようになったんだなあ‥‥と謎の上から目線で感心。

そういえば「ザ・ウォッチャー」で犯人役をやっていたか。殺す前に踊りを踊るという変な連続殺人鬼だったけど。踊っている場合ではない。ポンコツ野郎である。

で、この映画で面白いのは、出てくる証人がたいてい嘘をついているんですね。キアヌが助手に「証人はすべて嘘をついている。証人を見たら全員不倫してると思え」みたいなことを言うんですね。みんな悪意はなくとも、ちょっとずつ嘘をついている。

被害者の隣人は、パーティーの場で被害者ブーン・ラシター(ジム・ベルーシ)が妻に対してひどいことを言っていたと証言する。

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証言は事実なのだけど、この男性はその場でブーンを止めたと言っているんですね。注意して見ると、ブーンを止めたのは隣人ではなくキアヌなんですよね。この小さな嘘は隣人の見栄なのかもしれない。こういうちょっとしたところが面白い。映画の本筋と何も関係ないけど。

キアヌは証人たちをまったく信じておらず、見栄、仕事を失いたくない、恥を掻きたくないなどの理由から嘘をつくと断定している。人間観察の鋭さにニヤリとさせられる。

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証人だけでなく、登場人物すべてが少しずつ嘘をついている。キアヌの助手(ググ・ンバータ=ロー、左)も、恋人に対してストーカーをして前事務所を解雇された過去がある。キアヌのセリフが効いてくるのは、実はキアヌは事件の被害者の妻ロレッタと不倫していたのだ。キアヌが「証人を見たら全員不倫してると思え」と偉そうに言ってたけど、おまえやんけ! ってなりますよ。いいかげんにしたまえ。映画を観終わって振り返ったとき「あのセリフって‥‥」となる。

裁判あるあるなのかな、そういう細かい部分も面白い。陪審員たちは裁判の形勢が一方的になると不利になった側を応援する傾向があるとか、裁判を早く終わらせたがる裁判長がいるとか。こういうのは取材に基づいて仕入れたあるあるなのかもしれない。脚本にそういった小ネタが仕込まれていて、丁寧に作られている感じがする。

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被害者ブーンの妻ロレッタ(レニー・ゼルウィガー)。レニー・ゼルウィガーは「ブリジット・ジョーンズの日記」や「コールド・マウンテン」が印象的でした。あの頃と顔がまったく変わってしまいましたね。最後まで気づかなかった。

物語は意外な方向へ展開する。当初は犯人だと思われていた息子マイクは、父親であり被害者であったブーンから性的暴行を受けていたことを証言する。助手ちゃんは、独自の観察力からマイクは母であるロレッタをかばっているのではないかと疑い、被害者を殺したのはロレッタという結論に達する。

ここで助手は悩む。マイクが性的暴行を受けていたというのは無罪になるための虚偽の証言の可能性がある。だが、自分はマイクの弁護士(の助手)である。弁護人は依頼人の利益を最大化するのが目的である。でも、事件の真実(ロレッタが実は被害者を殺したこと)を覆い隠していいのだろうか。これは弁護士に共通の悩みなのだろうなあ。特にアメリカはこういうの多そうだけど。依頼人が嘘をついていると確信していながら無実を勝ち取ってしまうやり手弁護士は、この葛藤をどう処理しているのだろうか。

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この悩みを助手はキアヌにぶつけるんですね。キアヌからは「余計なことを考えるな。弁護士は依頼人を無実にするのが仕事だ」と一喝される。偉そうなこと言って、殺したのおまえじゃーん、てなるけど。キアヌが真犯人なわけだから、助手が考えたマイクがロレッタをかばっているという説自体が誤りとなる。そうなると依頼人の利益と真実どちらを弁護士は優先すべきかという命題自体が崩れてしまう。この職業倫理と正義の問題はもっと突き詰めてほしかった。ちょっといろいろ中途半端というか。

ありふれていて、新聞の片隅に載るような小さな事件であっても、本当はいろんな思惑が錯綜して真実が覆い隠されているのでしょう。扱う事件が小さいと言えば小さいし、法廷でのやりとりが多いので人によっては退屈に映るかもしれません。キアヌが出てくると、犯人を腕力で捕まえるスーパー弁護士みたいなのをイメージするかもしれませんが、事実が二転三転していく地味ながらも良い作品でした。助手を採用するときのキアヌとのやりとりも面白い。ただ、もうちょっと意外性があると嬉しい。それと、いろんな人の証言がとっ散らかったままで事実かどうかよくわからない。でも、その残尿感のような気持ち悪さこそが監督の狙いかもしれないですね。ああ、スッキリしたい!


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