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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
08
2017

赤い天使

1966年 / 日本 / 監督:増村保造、原作:有馬頼義 / 戦争、恋愛 / 95分
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異常さの中で正気を保つためには、どこか狂わなければならない。
【あらすじ】
従軍看護婦として天津の陸軍病院に赴任した。



【感想】
昭和十四年、西さくら(若尾文子、左から二人目)は従軍看護婦として中国・天津の陸軍病院に赴任する。日中戦争の戦局は悪化、病院は患者で溢れていた。手術の場面は凄まじく、正視するにはつらいものがあります。

岩島婦長(赤木蘭子、左から一人目)が修羅場を潜り抜けてきた鬼婦長という感じで頼もしい。前線に戻るのを嫌がる兵隊のズルを見逃さない。

体温計をこすって八度五分まで上げる技術を持った兵隊がいる!」と、鬼婦長は看護婦たちに指導。この技術、小学校時代の私も持っていた。履歴書の一番上に書けるぐらいの上手さ。

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兵隊の中には前線に戻りたくないがためにあの手この手を使って逃れようとする者もいる。わざと怪我を悪化させたり、気がふれたフリもする。

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西は兵隊たちに献身的に尽くすが、ある晩、巡回中に坂本一等兵(千波丈太郎、中央)らに犯されてしまう。西の気丈さが際立っている。レイプされた翌日も通常通り勤務し、上司の岩島婦長には昨晩のことを淡々と伝える。岩島婦長のほうも慣れているのか、西の報告を静かに聞いている。岩島婦長は、坂本一等兵を前線に配置するよう仕向ける。のちに前線で重傷を負った坂本一等兵が西の元へ運ばれてくるのだ。

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岡部軍医(芦田伸介、左)は坂本一等兵を助かる見込みがないと見極め、処置をあきらめる。だが、西は自分をレイプした坂本に輸血するよう岡部に頼み込む。血液は不足しており、ここでは将校以上しか輸血はされない。岡部は、西が夜に自分の部屋に来るのなら輸血をしてもいいと持ち掛ける。西はためらわずに条件をのむ。

輸血をして手を尽くすが坂本はあっけなく死んでしまう。このとき、岡部は西に「どうせあの男は助からないと思っていた」と告げる。岡部という人はちょっと変わっていて、西の体目当てに坂本の処置をしたのかと思っていたがどうもそうではないのだ。西の覚悟を試したのかもしれない。

坂本に輸血したのは岡部なりの理由があった。岡部は自分が医者らしい仕事ができてないことに虚しさを感じている。ここでは兵隊を助けるのではなく、見殺しにするか、手足を切るしかない。だが、たまにその虚しさに堪えられず医者に戻りたくなると自嘲的に話す。

あるいは西もそうなのかもしれない。西はレイプの完全な被害者ながら、それでも坂本を見捨てることをできない優しさを持っている。自分の事件が元で坂本が前線に送られて深手を負ったということもあるのだろう。しかし、それだけではないような気がするのだ。看護婦としての使命感もそうだが、もっと根源的で人としてのあるべき姿、命ある者を助けたいという人間らしい気持ち。それが戦争という狂った非日常の中でも、ふとした瞬間に顔を出すのではないか。普段は考えることをやめ、機械的に患者を処理しているが、それだけではやりきれなくなって人に戻りたがる。人を救うことと救われることの同義性があるように見えるのだ。

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負傷者が並ぶ病院の様子、手術の場面はすさまじい。麻酔も十分になく全身麻酔などできない。兵隊たちは否応なく手足を切断されていく。骨を切るノコギリの恐ろしい音が耳に残る。手術してもらえればまだマシでなんの処置もされずに見捨てられる者も多い。だが、岡部が言うように助かることが幸せかというと、これは難しいですよねえ。

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折原一等兵(川津裕介)は両腕を切断されてしまう。新婚二か月だが家へ帰ることを迷っている。この先どうやって生きていけばということがあるし、妻や家族が受け入れてくれるかという怖さもあるだろう。そもそも、軍は重傷者を本土には帰さないという話もある。ひどい怪我を負った者を見れば、戦争に反対する者が出るかもしれない。ある兵士は、重傷を負って帰国したが家族に会うことも許されず箱根の病院に押し込められたと折原は語る。なんともやるせない話。

西は折原からの頼みで、手を使って性処理までしてやる。折原は両腕がないから仕方がないわけだが、このときの看護婦の心境とはどういうものなのだろう。戦争が生み出す目を背けたくなる部分に逃げずに焦点を当てているのはすばらしい。

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だがですね、後半になると急に好き好きモードに入ってしまい、岡部と西はいちゃつき出すのだった。お互いに明日をも知れぬ命ということだろうか。西は、看護婦の部屋を抜け出して岡部のところに居りびたるが、ばれないだろうか。心配。岡部は西に軍服を着せたりなんかして、二人でキャッキャしてる。なにそれコスプレか? もう好きにしてください。

大量の切断された手足が無造作にバケツに突っ込まれ、人の死体がゴミのように捨てられていく。さめざめと泣く者などどこにもいない。もう悲しみを感じる部分が麻痺している。感情を止めないと気がおかしくなってしまうのだろう。どこかを狂わせることで正気を保つのだ。

戦時の前線での治療場面は出色の出来でした。若尾文子さんはどの作品を観ても落ち着き払っているように見えますが、こういった作品を経験しているからなのでしょうか。もうねえ、ちょっとやそっとじゃビクともしない度胸が備わっているに違いない。軍服でキャッキャしててもいいじゃないのそれぐらい!

お薦めですが、目を背けたくなるほど凄惨な手術場面があります。ご注意ください。


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