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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
12
2017

松ケ根乱射事件

2006年 / 日本 / 監督:山下敦弘 / サスペンス、コメディ/ 112分
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誰も彼もがろくでなし。だから、ここで生きられる。
【あらすじ】
田舎で轢き逃げ事件が発生。



【感想】
雪、サスペンスで思い出すのが「ファーゴ」。ジャケットも「ファーゴ」との類似を感じさせる。登場人物の誰も彼もが変わっていて、その乾いた笑いも「ファーゴ」に似ている。


誰にもわかるような大笑いが起こるわけではなく、「なんだこれ?」という違和感を感じさせるような笑い。かなり好き嫌いが分かれる作品だと思います。異様さを楽しみたい人にはお薦めです。

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冒頭、男子小学生が死体を見つける場面からもうおかしい。小学生は女の死体を見つけると誰かを呼びに行くかと思いきや、まず女の胸をぐいぐいと揉んで感触を確かめ、さらにスカートの中に手を突っ込んで下半身を触っていく。小学生に何やらせてんだ、ってなった。ただならぬ始まり方。終始ずらしたような笑い。

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女の死体が見つかり、警官である光太郎(新井浩文)が呼び出される。新井浩文さんは一癖も二癖もある作品によく出ますね。作品の選び方がすごい。「変なのしか出ません」とか宣言してんのかな。

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これは自宅で電話を受けている光太郎(右)の背中ですが、異様におじいちゃん(左)が近いんですよ。おじいちゃんはボケていて、何も言わずに立っているんですね。で、「おじいちゃん、近い!」とか「邪魔」ということすら光太郎は言わない。ただ、目の前に邪魔な人が居続ける。この変な感じが楽しめる人は、この映画に向いていると思います。

松ケ根という田舎町の独特な雰囲気が面白い。町全体がどんよりと淀んでいて、みんな漠然とした不満を抱えて生きているが、積極的に抜け出そうとはせずに押し流されて日々を過ごしている。いい感じに淀んでいるんだなあ。退廃とセックスのみがある。

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轢き逃げ事件を起こしてしまった光太郎の兄弟の光(鈴木崇、右)。光太郎とは双子ということだが、まったく似てない。光をゆする謎の男、西岡(木村祐一、左)。西岡の得体の知れない不気味さが良かったですねえ。木村さんは地がこんな感じっぽいけど。後頭部に刀で斬られたようなハゲがあって、それがまた怖いんですよ。

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また、西岡の愛人なのか妻なのか、川越美和の情緒不安定な感じも良かった。目を合わせずに、ボソボソと自分の不満を述べ立てるのだけど、論理は滅茶苦茶で破綻している。指摘するのも申し訳なくなるような、穴だらけの主張なのだけど、それでゴリ押ししてくる。こういう人いるなあ。

木村さんの雑なセックスもちょっと笑ってしまう。川越さんが車にはねられて体が痛いって言ってるんだけど「うん‥‥うん‥‥そうか」って感じで、まったく聞いてないで下着を脱がしてくるのがおかしい。

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誰も彼もが少しずつ狂っている。光太郎の父である豊道(三浦友和、左)は家族を捨てて愛人と同居し、さらに愛人の娘(障害がありちょっと頭が弱い)にまで手を出して子供を作ってしまう。口だけは達者で言い訳ばかりして、何も知らない他人には自分を大きく見せようとする。このダメ人間を三浦友和さんがやっているのが面白い。

三浦さんて紳士服の青山のCMで店長をやってましたが、パリッとスーツを着こなし、最後は自分が責任を取るというような頼もしい上司のイメージがある。いやあ、よくこの役を引き受けてくれましたねえ。今までとのギャップがすごい。この役が楽しかったから、「アウトレイジ」でヤクザになったりと、道を踏み外していったのでしょうか。どんどん行ってほしい。

光太郎は、愛人だけでなく、愛人の娘にまで手をだした豊道を責めるが、実は光太郎もこの娘と関係を持っている。この子は挨拶代わりにパンツを脱いじゃうような子で、おまけに親はこの子に売春をさせて一回五千円とるという。何もかもがおかしい。

観客は、感情移入ができるのが警官の光太郎だけだと思っていると、それすら裏切られてしまうんですね。まともな人が誰もいなくなってしまった。しかも、光太郎が買春しているのを指摘するのは、ダメ人間と軽蔑しきっていた豊道なのだ。このときの豊道のいやらしさがねえ、なかなかいいんですよ。

光太郎はこの狂った町をただすには全員を殺すしかないと、町の水に毒を入れようとする。頭がおかしくなってくる。たしかにこの町は狂っている。もう冒頭の男子小学生からして狂っているんだから。

光太郎は駐在所から出てきて、適当に5発発砲する。「すんません、もう大丈夫ですから。すんません‥‥」と同僚の警官に頭を下げて、また駐在所に入っていくところで映画は終わる。いやいやいやいや。大丈夫て、アンタ。

ストレスが限界に達して光太郎が手あたり次第に人を撃ちまくるのかと思いきや、ここでもすかしてくる。発砲はしても何も変わらないのだ。じゃあ、今のなんだよってなるけど、なんでもないという。

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金塊を金に換えられなかった西岡たちも、いつの間にかこの町に居ついてしまう。ちゃっかり、人の家を占有して甘いカップルのような表札も出してしまう。頭のネジが外れている西岡たちだからこそ、この狂った町に住む資格があるのだとみょうに納得できるのだ。変な映画でした。普通の映画に飽きた方にはお薦めです。

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