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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
16
2017

メランコリア

MELANCHOLIA / 2011年 / デンマーク、スウェーデン、フランス、ドイツ / 監督:ラース・フォン・トリアー / ドラマ / 135分
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私が待ち望むものは、みんなが恐れるもの。
【あらすじ】
地球に巨大惑星がぶつかるかも。



【感想】
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督は、鬱病で苦しんだ経験から映画のアイディアを得たという。とんでもないきっかけで映画作るなあ。ラース・フォン・トリアー監督の作品はちょっと苦手で、観ていると息苦しさのようなものを感じるのだ。今回、知らずに観てしまったけれど、やっぱり前半ちょっと苦手な感じはあった。

映画を観たら具合が悪くなったなど、繊細ぶっているようで嫌だなと思いますが、それでもやはり具合が悪くなってしまった。ほら、私、根が繊細だからさあ! お昼を食べすぎただけのような気もする。

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独創的で優秀なコピーライターであるジャスティン(キルスティン・ダンスト、中)は、マイケル(左)と盛大な披露宴を開く。だが、彼らのための披露宴でありながら二人は2時間も遅刻をしてしまう。そのことにまったく悪びれる様子もない。招待客を平気で待たせ、ジャスティンは馬小屋で馬をかわいがる。ここら辺から「え、この人、ちょっと‥‥」となるし、その勝手さにちょっと苛立つ。少しずれた感じを自然に演じるキルスティン・ダンストがすばらしい。本当にねえ、困ったちゃんに見えるのですよ。ジャスティンは鬱病で、このときは躁状態だったのだろう。

鬱病の人から観た世界というのは、こういった生きにくさなのかな。ジャスティンと上司の関係が興味深い。上司は披露宴の場でありながら、ジャスティンにキャッチコピーを考えるよう迫る。ジャスティンの体調も、今日が披露宴ということも関係ないのだ。これは監督に映画を作るようせっつくスポンサーや映画会社の態度ということなのかな。監督にとっては、許しがたいほどの悪意に映るという。

もっともジャスティンの側にも問題があり、気分次第で周囲に多大な迷惑をかけてしまう。披露宴は姉夫婦の好意でかなりの金額をかけて開いてくれたものなのだ。だが、ジャスティンは披露宴の段取りなど無視し、勝手に風呂に入ってしまう。しかも花嫁衣裳のままで。

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挙句、今日初めて会った新入社員の男の上にまたがって、強引にセックス。やっていることが支離滅裂すぎてついていけないが、本人も自分をまったく御せない。彼女は幸せになろうとするし、新郎を愛してもいるが、それでも周囲を傷つけてひどい行動をとってしまう。鬱病に陥ると、ここまで自分がコントロール不能になるものなのだろうか。とにかくジャスティン役のキルスティン・ダンストの具合の悪い様子がすごい。

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どうですか、この感じ。目の据わり方が尋常ではない。これから人を刺しそう。

一章はジャスティン、二章はジャスティンの姉であるクレアの視点で描かれる。クレアのほうはまったく普通の女性。だが、巨大惑星が地球に衝突するのではないかという不安から、クレアのほうがおかしくなっていき、反対にジャスティンは落ち着きを取り戻していく。生きるのが苦しいジャスティンにとっては、世の中の終わりですら救済にすぎず、だから落ち着いていられるのかもしれない。

ジャスティンは巨大惑星メランコリアと対話しているように見える。星明かりに照らされ、裸で川べりに寝そべって星を見つめている姿が神話の一節のように美しい。人は全裸になってしまうとそれほどきれいには思えなくて、とくに女は筋肉が男より少ないせいか、頼りなくて、ときに淋しく映る。だが、この場面のジャスティンの体には生気が感じられる。滅亡をもたらす惑星からエネルギーを受け取っているようにすら感じる。

披露宴で瓶に入ったビーンズの数を当てるゲームがある。ジャスティンはビーンズの数を正確に当ててしまう。彼女にも理由はわからないが、すべてが見通せている。なぜかわかってしまうのだ。テレビやネットでメランコリアの地球への衝突についてさまざまな憶測が飛び交う。地球のそばを通るだけという科学者もいれば、衝突するという情報もある。が、ジャスティンだけはメランコリアが地球に衝突してすべての生命が死に絶えることを理解している。

すべての終わりが近づいていることを知りながら、ジャスティンはメランコリアを待ちわびているようにも思えるのだ。彼女にとって苦痛の続く世界ならばいっそ滅びたほうが楽で、滅びによって救われるのだ。彼女が愛していた新郎、大事に思っている家族、ペットの馬、そういったものは破滅を恐れている。ジャスティンは彼らを愛しているが、それでも世界がなくなってしまうことのほうが彼女にとっては楽なことなのだ。つらいですよね。自分の望む救済と、自分が愛する周囲の人の救済がまったく相反するものなのだから。

そんなことを考えながら観ていたら、そりゃ具合悪くなりますって。

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映像が幻想的で美しい。

ジャスティンが水に浮かぶ画はジョン・エヴァレット・ミレーのオフィーリアを思わせる。左側の植物もちょっと似ているような。

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ハムレットに出てくるオフィーリアは悲劇の末に狂ってしまい、やがて溺死する。

ジャスティンの心境がわかるのは彼女の母だけかもしれないが、母もまた病んでいるように見えるのだ。うーむ、救いのない映画というか、ジャスティンにとって滅びこそが救いだとすれば、これは彼女にとってのハッピーエンドなのだろうか。

2017年12月10日~2018年1月6日まで、GYAO!で無料配信しています。
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