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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
19
2017

WAR in the Mirror

2016年 / 日本 / 監督:クーロン黒沢 / ドキュメンタリー / 52分
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面白ければ何をやっても許されるか。
【あらすじ】
約8,000名を殺害した伝説の傭兵であり、哲学者、小説家の君塚正太氏の武勇伝。



【感想】
友人から薦められてAmazonプライムで視聴。とんでもない作品を観たなあという。監督のクーロン黒沢さんが自称傭兵で哲学者、小説家の君塚正太氏にインタビューを行ったドキュメンタリー。

経歴が凄まじい。フランス国家憲兵隊大尉、リトアニア大使、デンマーク大使、イタリア全権特命大使、フランス警察長官、スペツナズ大隊長、イタリア国家警察主任、もう長すぎるのでその他の経歴は略すがこれの何倍もの長さで肩書と経歴が羅列される。興味のある方はAmazonの著者略歴で。ちなみに大学はロサンゼルス大学、ハーバード大学、バーゼル大学大学院などで学んでいる。ロサンゼルス大学が存在するかは知らんけど。


作品は君塚さんの語りを黒沢さんがひたすら聞くというもの。各国の要人を警護し、8000人を殺害してきた男とは思えぬ小太りプヨプヨボディにだまされてはいけない。なんと左手一本で懸垂ができるという。しかし、手なんか本当にねえ、白くてプヨプヨして。ニートと格闘技の達人は同じ手なのかな。

経歴と風貌のギャップ、そして撮影当時25歳という若さに戸惑った。だが、そんな戸惑いをぶっ飛ばすほどパワーのある妄想が君塚さんから語られる。監督の黒沢さんは、君塚さんをおだててうまいことを武勇伝を聞き出す。

中学時代にクラスの女子七人が手作り弁当を競うように作って来たとか、なぜそんなわかりやすい嘘をというような話をしてくる。ジャニーズばりの容姿ならともかく、どう贔屓目に見てもそんな容姿ではない。まとめサイトには「Lv100のイキリオタクが発見される」などとまとめられてしまうほど。

彼の話は自分がいかに女性に人気があるか、親友や有力者との強力なパイプによって助けてもらったか、強大な組織を相手に戦ってきたかというものが多い。これは全部、彼のコンプレックスの裏返しなのだろう。女性にはまったくモテず、親友どころか友人もおらず、喧嘩は弱くいじめられていたのかもしれない(いじめられた話は作品中で語られている)。ちなみに彼をいじめた人物はリストアップされ、フランス入国禁止になっているとのこと。カメラが、君塚さんの剃り残した長いヒゲをズームアップするあたり、黒沢さんのなかなかの性格の悪さを感じる。

観ていて居心地が悪くなったのは、黒沢さんは君塚さんの話をまったく信じていないのに、さも感心している様子で武勇伝を語らせることにある。これがどちらも本当に信じ切ってるならいいんですけども。あまりにも滅茶苦茶な嘘や妄想は、子供の頃に周囲から指摘を受けて自然に矯正されていくと思うのだけど、誰も指摘してくれなかったのだろうか。また、それを楽しんで観るというのは相当に性格が悪いような気がするのだ。これは楽しんでいい類のものなのかな。天然ボケを売りにする芸人とは、自覚の度合いにおいてまったく異なるように感じる。

面白ければ何をしてもいいと思っていたのだけれど、この作品は明らかに君塚さんの意思とは違う形で君塚さんを描いてしまっている。売れるためなら手段を問わず目立ちたいという風潮に対する批判や、そういったものを無自覚に楽しむ狂った観客への内省を求めるとか、批判や風刺が込められている作品でもない。ただ、君塚さんを笑い者にしている。だがそれでも、この作品で君塚さんが有名になり、小説が売れたりすれば、それは君塚さんにとって良いことになる。どう考えればいいのだろうか。

君塚さんは自分の武勇伝を語り終えたとき、自分でちょっと笑って上目遣いに黒沢さんの反応を盗み見るみょうな間がある。脅える嘘つきの顔になっている。なんとも言えない居心地の悪さを感じた。

Amazonプライムで観ることはできます。「地上波で放送できない」なんてテレビで言っていることがあるけど、自分たちで勝手に言ってるだけでそれほどたいしたものはないように思う。でも、これは本当にねえ、放送していいものかどうなのか。

しかし、「War in the Mirror」ってよく付けましたね。クーロン黒沢、完全にからかってるじゃんかあ! うーむ、悪い奴。

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