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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
08
2018

フィフス・エステート / 世界から狙われた男

THE FIFTH ESTATE / 2013年 / アメリカ、インド、ベルギー / 監督:ビル・コンドン / 実在の人物を基にした映画 / 128分
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あらゆる情報は開示されるべきか。
【あらすじ】
ウィキリークスで世界を変えるぞ。



【感想】
ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジは政府や企業による情報の隠蔽を憎み、内部告発者を守りつつ情報開示をするサイト「ウィキリークス」を起ち上げる。ウィキリークス草創期から彼をそばで支え、やがて袂を分かつことになったダニエル・ドムシャイトーベルク(ダニエル・ブリュール)の視点で物語は描かれる。映画は「WikiLeaks ウィキリークス アサンジの戦争」(ガーディアン特命取材チーム)、「ウィキリークスの内幕」(ダニエル・ドムシャイトーベルク)の2冊を原作としている。


原作として使われたうちの1冊「ウィキリークスの内幕」を書いたのが映画の主人公ダニエルで、アサンジと仲違いしたこともあり、映画についてのインタビュー(映画.com)を見てもアサンジは映画の内容に納得がいっていない様子がある。あくまでフィクションであり娯楽として観るのが良さそうです。とはいえ、いろいろ考えさせられるところも多い内容。

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アサンジを演じたベネディクト・カンバーバッチが繊細かつミステリアスな雰囲気をよく出していました。アサンジは才能に溢れており、強いカリスマ性を持つが気分屋で気性も激しい。強固な正義感だけで動いているわけでもなく、自己顕示欲を爆発させることもある。とにかく扱いが難しい人だよ。ダニエルの家族との会食では「トイレを借りる」と言って、そのまま帰っちゃうし。困った人である。

傍からはその性格がつかみにくいのだ。単純に「権力と戦う正義の人」と見るのは危ういように思える。自分の美しい白髪について「(権力者や組織から)追われるうちに恐怖で白くなった」と語るが、ダニエルはアサンジが自分で髪を染めている姿を目撃する。今一つね、何が本当かわからないんですよ。アサンジの人柄もウィキリークスの正体も。

この映画はヒットしなかったが、アサンジという人間が本当は何を考えているのかよくわからないというのも、原因の一つに思える。じゃあ、ダニエルが正しいかというとそうとも思えない。映画の原作本の一冊は、アサンジと仲違いしたダニエルが書いているのだから。ダニエルの言うことだって鵜呑みにはできないのだ。不確かなことが多すぎてモヤモヤしてしまう。

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数々の隠蔽、腐敗を暴くうちにウィキリークスには寄付金が集まり、組織は大きくなっていく。だが集まった告発情報の扱い方について、アサンジ(右)とダニエル(左)は対立していく。アサンジは情報を改竄せずにそのままネット上にアップすることを望む。実際のところ、情報について精査しようにも小さな組織では何万件という情報の裏付けなどとれるはずがないという事情もあったのだろう。

だが、それは告発者の身の安全を脅かすことになる。ダニエルは告発者を守るために、一部の情報を匿名化することを要求する。でも、たとえ匿名化したとしても、そこが狭い社会ならばその情報を知っている人間からすると「これはあいつのことを言っている」とわかってしまう場合がある。告発者の安全を守ることが本当にできるかは難しいのかもしれない。

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映画にはウィキリークスによって流出した情報により、危機に晒さられる米軍の協力者たちが出てくる。諜報員や協力者の中には命を落とした者も存在するかもしれない(アサンジは否定)。たしかにウィキリークスがなければ、イラク戦争による民間人殺傷事件、ロイター記者銃撃事件などの行為は闇に葬られただろう。だが、あらゆる情報というのは本当に陽の目を見るべきなのだろうか。

秘密にされるべきものだってあるだろう。政治家が国のためにした難解な決断があったとして、それが大衆の支持を得ることは難しいが、後世から見れば国のためになる決断とか。本当にそんな決断が存在するかはわからないが。すべての情報を開示していくということは、究極的には衆愚政治に向かうことを示しているように思う。だが、衆愚政治という言葉を使うことが、民衆自治を信用してないということで間違いなのだろうか。また、我々はたとえ間違えたとしても、自ら決断を下す権利は存在する。その誤った決断で国が滅亡することになっても、やはりすべての情報は開かれているべきなのだろうか。ウィキリークスというのは、やはり存在すべきとは思うもののジュリアン・アサンジという個人の管理下にあるのはまずいようにも思える。

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なんてなことを思いながら観てたんですけどもねえ。あんましねえ、楽しい映画でもないんですね。もっと思い切って娯楽に寄せるのか、そうでなければ完全ドキュメンタリーでも良かったのかもしれない。ベネディクト・カンバ―バッチはがんばってました。アサンジのめんどくさそうな感じがとてもよく出ていた。


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