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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2018

尻に憑かれた男

O CHEIRO DO RALO / 2006年 / ブラジル / 監督:エイトール・ダリア / ドラマ、コメディ / 112分
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あらゆる物は金で買える。そう、尻以外は。
【あらすじ】
尻を買いたい。



【感想】
ブラジル映画はあまり観たことがないのですが「エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE」や「シティ・オブ・ゴッド」など、政治の腐敗や治安の悪さを描いたかなりハードな作品が頭に浮かぶ。そんでこの「尻に憑かれた男」という。振れ幅がすごいな。

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ロウレンソ(セルトン・メロ)は、金に困った客たちが持ち込む物を二束三文で買い叩く仕事をしている。彼が経営する店は下水道が壊れているのか、いつも嫌な臭いがする。ある日、昼食をとるために訪れた店でウェイトレスの豊かな尻に魅了されてから、彼の人生は狂っていく。奇妙な夢を見せられているような、ちょっと変わったコメディですね。

この人、都市伝説の人に似ているなあ。「信じるか信じないかは、あなたしだいです」という、ハローバイバイの関暁夫さん。それほど似てないか。

真面目な顔をしているときは、だいたい尻を見ているロウレンソである。

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ロウレンソがねえ、本当にお尻のことしか考えてなくてねえ。ウェイトレスは名前も出てこないのだ。彼にとってウェイトレスの人格はどうでもよくて、とにかくお尻が大事。尻のことが頭から離れず、結婚式直前になって婚約破棄をしてしまう。婚約者がとにかく暴力的な人で、激怒して暴力を振るう。その後すぐに謝って、また暴れたりで怖いんですよ。婚約破棄は正解か。

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最低な言葉も、ロウレンソが言うとなにやら哲学的に聞こえませんか? そうでもないですか。

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ロウレンソの店とウェイトレスの店を繋ぐ景色が印象的。ちょっと引いて撮影しているのだけど、みょうにおしゃれなんですよねえ。

ロウレンソは金を叩きつけるようにして客の持ち込んだ物に値段をつける。金がある奴が偉いんだという傲慢な態度だが、ふと怯えた様子で客に「この店は臭くないか?」と訊く。臭さというのは彼がひどいことをやっているという自責の念で、それが臭いとなって現実世界に表れているのだろうか。自信満々に見え、傲慢に振る舞いつつも、内心怯えてばかりいるアンバランスさが奇妙に映る。ロウレンソの金でなんでも買えるという態度は、世相を批判したものなのかな。

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ロウレンソは下水の穴を修理しようと試みるがうまくいかない。彼が良心の呵責を感じているのだから、それは埋めようもないのだ。ひどい態度で客の大事な物を買い叩いた後、あえて下水の臭いをかぎにくることもある。自分に対する罰なのか、自分を汚すことで精神のバランスを保とうとしているのか。

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ロウレンソは、客が持ち込んだ奇妙な義眼を「父親の目」と言い張り、この父親の目に女の体を見せて満足する。こりゃ、完全にあかん人ですね。義眼が父親の目のはずがないことは彼自身が一番わかっている。これは失われた家族の絆の復活を意味するのだろうか。彼は幼少時に父親に捨てられているから、父との思い出がない。父と一緒にするはずだった体験を父親の義眼に見せることで、体験を共有したい、思い出を作りたいのかもしれない。

だから、彼は義眼に大金を払ったのだ。そして、義足にも金を払い、幻の父を復活させようとする。父の復活すら金を通して行われるし、ロウレンソは金を通してしか、コミュニケーションが取れないのかもしれない。

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金を通したコミュニケーションはウェイトレスとのやりとりでも現れる。彼女はロウレンソに気があった。だが、ロウレンソは尻を見せてくれれば金を払うと言ったばかりに、彼女との関係を破綻させてしまう。金など必要なかったのだ。

ロウレンソは尻には興味があるがウェイトレスには興味がない。なまじ彼女と付き合うと、結婚とか面倒なことになるからと気おくれしてしまう。金を払うから尻だけでいいのだ。現代人は性欲を満足させるために風俗に行ったり、動画を観たり、金で解決してきた。ロウレンソは金を払ってウェイトレスの尻を見るが、尻にすがりつくと泣きだしてしまう。念願だったはずの尻が手に入ったのになぜ彼は泣くのか。彼自身がもっとも困惑しているのかもしれない。これで満たされるはずなのにそうはならなかった。性欲は満たされたが愛を知らないということだろうか。

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ロウレンソの尻への固執は変態的性癖というよりも、あらゆる物を金で贖おうとする現代の歪んだ価値観に対する批判として描かれているように感じた。などと、お尻を見るのにもっともらしい理由を与えてくれるから、いい映画だと思います!

奇妙で味のある作品でした。


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