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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
29
2018

トリシュナ Trishna

TRISHNA / 2011年 / イギリス / 監督:マイケル・ウィンターボトム、原作:トマス・ハーディ / ドラマ / 117分
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身分も格差も乗り越えて生きたかった。
【あらすじ】
格差のある二人の恋愛。



【感想】
「ひかりのまち」「CODE46」などのマイケル・ウィンターボトム監督作品。イギリスの小説家トマス・ハーディが1891年に出版した小説「テス(ダーバヴィル家のテス)」が原作。1891年というとずいぶん古いですね。日本はまだ明治時代か。舞台は現在のインドに置き換えられています。

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父親のホテルを引き継ぐ前、休暇としてインドを訪れたビジネスマンのジェイ・シン(リズ・アーメッド、右)。ジェイは、若く美しいトリシュナ(フリーダ・ピント)に一目惚れする。

トリシュナを演じたフリーダ・ピントが美しかったですね。ジェイがトリシュナに口笛を教える場面はロマンチックでした。

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トリシュナの父親は交通事故により怪我を負い、車もなくなってしまう。トリシュナの家族は生活に窮する。ジェイは彼女を自分のホテルで働かせることにする。

インドでは女性の地位が低いこともあってか、トリシュナはあまり自分の意思を表さない。それが彼女たちにとっては普通なのかもしれない。家族を支えるために、実家から遠く離れたジェイのホテルで住み込みで働くことを決める。ジェイの何も考えてないようなボンボンぶりと、選択の余地などないトリシュナの貧しい生活が対照的。それでもこの頃の二人は幸せだったのかもしれない。

ジェイは優しいのだけど世間知らずで無神経なんですよね。トリシュナに平気で「なんで大学に行ってないの?」などと訊く。貧しくて金がないということが頭に浮かばないのだ。

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ジェイは映画作りが夢で、ムンバイで映画作りのスポンサーになる。彼は特に何か才能があるわけではなく「金持ちの親がいる」ことが彼の才能なのだ。それを仲間にからかわれる。これはちょっとつらいかもしれない。金持ちには金持ちの悩みがある。

また、トリシュナはムンバイでダンス教室に通い、才能を開花させていく。仲間の一人はトリシュナに演技に興味はないかと訊くが、ジェイは「彼女に構うな」と答える。トリシュナもちょっと困ったような笑顔を浮かべるだけなのだ。女を男の所有物のように扱っている。トリシュナはダンスに向いていたが、ジェイはトリシュナを踊らせたがらない。トリシュナも自分の夢をあきらめてしまう。

重要なのは、トリシュナはジェイに何か言われたとか、反対されたからダンスをあきらめたのではないのだ。ジェイは何も言わないのにジェイの考えを勝手に忖度してダンサーになることをあきらめる。ここら辺に問題の根深さがあるように思う。女性の地位の低さを男女ともごく当たり前に受け入れている。

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原作はイギリスが舞台なのだけど、なぜ舞台をインドに移したのだろうと思った。今のイギリスでは、女性の権利が当時ほどないがしろにされてないだろうし、物語として成立しにくいのではないか。女性蔑視が問題になっているインドだからこそ、現代においてこの物語は成立するのだ。

だけど、この映画がインドの現実を表現していると受け取るのは、ちょっと危険に思えるんですね。格差や差別の糾弾を目的としたゴリゴリの社会派映画というわけではなく、あくまで物語を成立させる最低限のリアリティを求めたことでインドが舞台に選ばれたのではないだろうか。

映画の夢をあきらめ、父親からホテル経営を受け継いだジェイはしだいに歪んでいく。家族の生活を支えるために働いたトリシュナもそうだが、ジェイも家のために自分を犠牲にしているのだ。豊かではあるがジェイも家に縛られているのかもしれない。因習というのは弱者も強者も関係なく、すべての人間を支配下に置いてしまう。

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だが、ホテルでせっせと働くトリシュナに対して、ジェイは遊んでばかりいるように見える。彼は彼なりに屈託を抱えてはいるのだろうけど。お昼をトリシュナに運ばせ、優雅にソファに寝そべって本を読んでいる。カーマスートラの本から顔を上げ、トリシュナに尋ねる。

「愛していい女性は3種類いる。メイド、独身女性、高級娼婦だ。君はどれだ」と訊く。

「うるせー、バカ。仕事しろ」以外に正解はあるのだろうか。もうねえ、ジェイは、ご飯を運ばせてセックス、本を読んでセックス、服はこれを着ろと命令してセックス、の毎日である。ちょっとその立場、替わってくれませんか。

トリシュナの意思とは関係なく、無理やり体を求められる毎日にトリシュナの心は軋みをあげていく。トリシュナは柔らかく拒絶はするが、ジェイに強く抗議をしない。彼女はジェイを仕方なく受け入れていたものの、突如暴発してジェイを滅多刺しにする。あまりに暴力的な終わり方に驚いてしまった。因習と格差がもたらす悲劇を描いたのかもしれないが、唐突すぎて感情が追い付かないところがあった。少し変わった映画でした。

トリシュナの寂しげで美しい表情が印象的でした。インドの豪華な建物も見どころです。


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