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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
04
2018

後妻業の女

2016年 / 日本 / 監督:鶴橋康夫、原作:黒川博行 / 犯罪、コメディ / 127分
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お金があっても淋しさからは逃れられなかった。
【あらすじ】
さびしい独身男性につけこんで金を巻き上げるぞ~。



【感想】
結婚相談所などで知り合った男性の懐へするすると入り込み、13年の間に4件の殺人を犯した筧千佐子。あの連続殺人事件を地で行くような映画。コメディタッチなので、かなり軽く描かれてますが、実はかなり深刻な映画かも。大竹しのぶさんの二重人格的演技が光ります。怖いおばちゃんだよ。

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「武内小夜子、63歳。若くして夫を失った熟年女性です。好きなことは読書と夜空を見上げること」結婚相談所のパーティーで、老人たちを虜にする武内小夜子(大竹しのぶ、前)。結婚相談所の所長、柏木亨(豊川悦司、後ろ)と結託し、カモになりそうな独身男性を探し、財産を奪い取ることを繰り返していた。ドロドロの欲にまみれたタイタニックポーズ。沈むしかない。

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被害者が生きていた頃の控え目で夫に尽くす小夜子と、葬儀のあとのふてぶてしい小夜子はまるで別人。変貌ぶりが恐ろしい。建築事務所を経営している朋美(尾野真千子、左)は、父、耕造の遺産を全額相続すると宣言した小夜子に腹を立て、幼馴染の弁護士事務所に駆け込む。

法律には遺留分というものがあり、遺言書で故人からの指示があっても、法定相続人(配偶者、子供など)が遺留分減殺請求をすれば、法律で定められた分の財産は相続できる。つまり、亡くなった耕造の遺言書で「小夜子に全額相続させる」とあっても、子供である朋美には相続権がある。朋美が遺留分を主張すれば、全額、小夜子がもらうことはできないのだ。

朋美が依頼した弁護士事務所の幼馴染は、小夜子を「後妻業の女」ではないかと睨む。淋しい独身男性に巧みに取り入り、財産を掠め取ってしまうのだ。登場人物の誰も彼もがお金と性欲にとらわれ、騙し合いをする。

悪役が主人公の作品というのは本当に難しい。人は2時間も嫌いな人間を観続けるはできないように思えるのだ。でも、この作品はするすると観られてしまう。小夜子というのは、最低の犯罪者であることは間違いない。だが、彼女が結婚相談所に文句をつけに来た男性をどなりつけるところなどは、みょうにスカッとさせられる。タンカを切る場面が何度かあるが小気味良い。悪人だけど哲学があるし、小夜子には不思議な魅力がある。

結婚相談所の所長、柏木と小夜子のずるさばかりが目につくが、それが逆転する瞬間がある。そもそも、亡くなった耕造がなぜ小夜子に引っかかったかといえば、娘たちが独立してしまい疎遠になり、その淋しさからというのもある。柏木と小夜子を追及していく朋美が正義かというとそれも怪しいのだ。親をほったらかしにし、困ったときだけは借金を頼む。これはねえ、耳の痛い人も多い話だと思いますよ。

それをセリフで小夜子や、娘役の尾野真千子と長谷川京子に語らせているのは、あまりに直接的すぎるように感じたけど。本当のところ、親の遺産というのは法律上はともかくとして親の稼いだ金で、それを親がどう使おうが勝手なのだ。本来、あてにすべきものじゃない。などと、偉そうなことを。うち、遺産ないけども。

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結婚相談所の所長、柏木もそうだが、男が女に溺れる場面が目につく。どれぐらいの歳まで人は性欲があるのだろう。体の真ん中についている棒が着脱可能だと良いのだけど。性欲に支配されすぎる。

特に年寄りが若い女に入れあげるというのは、金と体の交換を見るような生々しさを感じてしまい、どうも嫌な感じがしていた。でも、それだけでもないのだろう。お金だけはあるけど、本当に淋しくてどうしようもないのではないか。その淋しさについて、若い人は無頓着なのだ。若いときは仕事や遊びに追われ、周りに家族、仕事仲間、友人などもいるから、淋しさを感じないのだと思う。出会いの機会や手段も老人より多い。独居老人の孤独というのは、私が考えるより遥かに深い苦しみなのかもしれない。

親が再婚相手を探している姿も、娘たちにすれば親の生々しい性を見せつけられているようで嫌なのかもしれない。そういった娘たちの反応が親の耕造を傷つけたかもしれないし、娘は娘で親と距離をおく理由の一つになったのかもしれない。いろいろ考えさせられるところ。

探偵役の永瀬正敏、クラブの女たちなど、欲得尽くめでみんないい味出してましたねえ。誰も彼もが欲の塊。タクシーの中で、チチを放り出して着替えるホステス、樋井明日香さんも良かったですね。彼女は金払いのよい客、柏木のところへ向かう途中なのだけど、タクシーの運転手からいくら見られようがどうでもいい。運転手など人間扱いしてないのだ。運転手のいやらしい目つきと、お金以外は目に入らない人間の傲慢さ、タクシーという狭い空間ですら欲で満たされている。

最後は緊張感の欠片もなくなってしまい、ちょっとコントみたいな展開に。なんだこの終わり方はという。気軽に観られていいのかもしれないけど。恐ろしい終わり方にもできる作品だったと思う。小夜子と柏木のコンビは、また二人で次のターゲットを探しているのだろう。2も作れそうですねえ。豊川悦司、永瀬正敏のクズっぷり、大竹しのぶの豹変ぶりなど、悪役の魅力に溢れた作品で楽しめました。まともな人がいないよ。

本当に人ってのは、いくつになってもねえ‥‥。そういえば、最後に耕造の遺言書が出てきたが、耕造は小夜子のことを「面白い女」と書きのこしている。耕造は小夜子が後妻業の女であることを見抜いていたのかもしれない。それでも傍にいてほしかったのかと考えると、少し切ない気持ちになる。


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