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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
24
2018

THE ICEMAN 氷の処刑人

THE ICEMAN / アメリカ / 2012年 / 監督:アリエル・ブロメン / 実在の人物を基にした映画 / 106分
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機械のように規則的に。
【あらすじ】
淡々と100人以上殺した殺し屋。



【感想】
アメリカに実在した殺し屋リチャード・ククリンスキーを基に作られた映画。死体を凍らせて殺害時刻の特定を困難にするやり方から「アイスマン」の異名を持つ。

大量殺人者というと「ハンニバル」のレクター博士のように、殺害を通して自己表現をするようなタイプと思うかもしれない。レクター博士は殺人を趣味であり芸術と位置付けているのかもしれないが、ククリンスキーにはややこしい主義主張は感じられない。美学も哲学もない。子供だけは殺さないというルールはあるが、金さえもらえればなんだってやるのだ。作り手がククリンスキーに対して、自分を正義の側においた表面的な批判をしていないのは好感がもてる。あくまで淡々と扱っている。これほどの罪を犯しながら、ククリンスキーに嫌な感じを抱かないのも不思議なところ。

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ポルノビデオのダビングで生計を立てていたリチャード・ククリンスキー(マイケル・シャノン、左)。職場に現れたギャングのロイ・デメオ(レイ・リオッタ、右)に度胸を買われ、殺し屋として仕事を請け負うことになる。レイ・リオッタはいつ見てもギャングをやっている。普通の人を演じているのを見たことない。いつもだいたい2,3人殺しているんだもの。

主演のマイケル・シャノンは「ドリームホーム 99%を操る男たち」の独裁的なカリスマ経営者が印象的でしたね。今回も目力がすごい。ギョロギョロしておる。

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殺し屋でありながら、家族には為替トレーダーと偽り、高級住宅街で裕福な生活をおくっている。妻(左)はウィノナ・ライダー。久々に観ましたがお元気でしょうか‥‥。いろいろある人だからなあ。映画では元気そう。

ククリンスキーは子供の頃に両親に虐待されて育った過去がある。兄は父からの虐待で死亡、自身は父親から暴力を受け、レイプもされている。そんな異常ともいえる環境の中で育ち、ククリンスキー自身も犬や猫を残酷な方法で殺すなど残虐性を現わしていく。虐待があったから殺人者になったなどとは簡単に言えるものではないが、それでも両親の影響はかなり大きいだろう。ククリンスキーはロイに銃を突きつけられても、まったく脅える様子がない。虐待を受けた人物は、しばしば自分の中に別の人格を作り上げたりもするが、ククリンスキーは何も感じなくすることで自分を守ったのだろうか。

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ククリンスキーが取り立てを行った相手(ジェームズ・フランコ)。まさか、こんな脇役にと思ったら本人でした。ククリンスキーは、「神様に俺をとめるよう祈ってみろ」と言う。ジェームズ・フランコは一心に祈りを捧げるが、何も起こらずに殺されてしまう。

ククリンスキーの母親は熱心なクリスチャンでありながら虐待者だった。また、彼はミッションスクールに通う娘に「シスターを信じるな」とも言っている。彼は、母親から虐待を受ける中で神に祈ったのかもしれない。だが、神は彼を救わなかった。そこで神を信じることを止めたのかもしれない。フランコにあえて「神に祈ってみろ」と言ったのは、母への復讐なのか、過去の哀れな自分にフランコの姿を重ね合わせたのか。

とはいえ、フランコに情けをかけるでもなく、あっさり殺すのだった。ビジネスなので手際がいいです。豊富な殺害方法、特定されない殺害時刻、殺害実績100件以上、信頼と実績のリチャード・ククリンスキーである。

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酒場でいさかいになれば殺し、おしゃべりな友人を殺し、仕事のパートナーも躊躇いなく殺す。情のようなものは湧かないのだろうか。彼にとっては殺しは「単なる仕事」で特別なものではなかったのかな。だが、家族に対してだけは違う。冷酷な殺し屋と、娘思いの父親がすんなり同居しているのがすごい。どうも最後までククリンスキーという人物がよくわからなかった。裁判後のインタビューでも家族にだけは謝罪するが、被害者たちに対する言葉はない。他者への共感性など完全に捨て去ったからこそ、100人以上の人を殺せたのかもしれない。

本当か嘘かわからないが、奥さんも娘も夫が殺し屋だということにまったく気づかなかったという。わからないものなのかなあ。


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