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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
25
2018

ルーム

ROOM / 2015年 / アイルランド、カナダ、イギリス、アメリカ / 監督:レニー・エイブラハムソン、原作:エマ・ドナヒュー / サスペンス / 118分
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「世界」に初めて触れる驚き、喜び、恐怖。
【あらすじ】
部屋の中に母親と二人。



【感想】
本当に良かったなあ。これは是非観てほしい作品です。まだ始まったばかりとはいえ、今年一番良かった。何か書けば設定に触れざるをえないのですが、この作品は是非ご覧になってから本文を読んでほしい作品です。


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天窓が一つあるだけの狭い部屋で暮らす5歳の少年ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ、左)と母親ジョイ(ブリー・ラーソン、右)の親子。お菓子を作ったり、運動をしたり、テレビを観たり、卵の殻で蛇を作ったり、至って仲の良い普通の親子に見える。たまに訪ねてくる男が、生活に必要な品物を置いていくだけで外に出ることはない。

これは「ソウ」のようなシチュエーションホラーなのかと思って観ていた。たまに訪ねてくる男は優しげで、ジャックにお菓子をあげようとするがジョイはヒステリックな声を上げて拒む。ジョイは、不意に情緒不安定になって息子を叱りつけることもあり、「これは母親が異常に過保護でおかしい人なのだな」と観ていた。

ところがやがてまったく違う話だということに気づく。男は誘拐犯であり、ジョイを誘拐して監禁していたのだ。ジャックは、誘拐犯とジョイの子である。

映画を観るときに、無意識にジャンル分けしながら観ている。この映画は、そういった観客の無意識の分類を利用して心理的トリックを仕掛けている。シチュエーションホラーを観るときは、完全にフィクションと割り切っているから「どんな面白い死に方で死ぬんだろう! ワクワク」としか思っていない。それが突然シリアスな作品だと気づかされて恐ろしくなる。それと、そんな軽い気持ちで観ていたことに罪悪感のようなものを感じた。これ、監督の掌の上のことなのでしょうが、本当に見事に騙されました。すごい。

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ジャックが5歳になり、ジョイはこの部屋からの脱出を決意する。ジャックに病気で亡くなったフリをさせ、毛布にくるまれたジャックの死体を男が車で捨てに行くとき、隙をついて車の荷台から逃げ出すようジャックに教え込む。

ジャックにしてみると、なぜこんなことを突然させられるのか理解ができない。今までのように母親と二人の生活で何がいけないのかという。彼は狭い部屋が世界のすべてで、外の世界など思いもよらない。今までジョイはジャックが外に興味を持って騒ぎ出さないように、外の世界のことをまったく教えてなかったのだと思う。ジャックには外の世界が想像すらできないんですね。

ジャックの困惑と恐怖が伝わってきて胸が苦しくなる。まったくわからない外の世界も怖いし、母親と離れ離れになるのも怖い。そもそも母親以外の人間と話したことすらないのだ。

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トラックの荷台に乗っている場面は本当に恐ろしくなった。

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ジャックを保護した警察官が本当に優秀でねえ、こんな優秀な人おる~? ってぐらい優秀なんだけど。彼女は巧みにジャックに話を聞きだし、無事にジョイも救出される。ああ、なんてできるお人!

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ここで映画が終わっても、それはそれで100点のサスペンス映画だったと思う。でも、映画は二部構成のようになっている。むしろここからが本番なのかもしれない。ジョイとジャックが救出されて良かったね、というハッピーエンドではない。

誘拐の影響も大きかったのだろう、両親はもう離婚してしまっている。ジャックは世界にうまく馴染めず、またジョイも誘拐されていた7年間をうまく取り戻せずにいる。

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ジョイの父親(ウィリアム・H・メイシー)は、どうしてもジャックの存在が認められない。誘拐犯にレイプされてできた子であることが許せない。犯人以外、誰が悪いわけでもない。父親自身も深く傷ついている。ジャックやジョイが被害者なら、ジョイの両親だってやはり被害者なのだ。

彼は娘を傷つけたこと、ジャックを受け入れられなかったことを後悔しながら、これからの人生をおくっていくのだろうと考えると、いたたまれない気持ちになる。

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ジャックはジョイと共に、ジョイの母親とそのパートナーの家で暮らし始める。このパートナーのレオがねえ、本当にすてきな人で。外の世界を知らずに生きてきたジャックの心を解きほぐしていく。いかん、泣いてしまう。

ジョイの母親とジャックが心を通わせる場面、洗面所で髪を切るところですが、あの場面もとても良かったですね。しだいに本当の祖母と孫になっていく。

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不器用ながらも周囲にうまく馴染んできたジャックに対し、ジョイの方は7年のギャップに苦しむ。周囲の好奇の目もつらいだろう。ジャックは案外うまくやっていることで、自分だけ置き去りにされた気持ちもあったのではないだろうか。ジャックはそれでもたまに母親と二人だけで過ごした部屋に帰りたくなるのだが、それも胸を揺さぶられる。

原作は、実際に起きたオーストリアの監禁事件「フリッツル事件」に着想を得て書かれたという。誘拐、監禁という犯罪は、解放されてからも被害者たちにはまた別の苦しみが待ち受けている。一度、世界から隔離されてしまった人たちは、ジョイのように再び世界に適応することができなくなるかもしれない。めでたしめでたしと、簡単に言えるような話ではないのだ。

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ジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイが本当にかわいらしかったですねえ。子供が初めてのものに触れていく様子、次第に周囲に心を開いていく演技がすばらしいですよ。恐ろしい子!

子供がいる方は特にいろいろ思うところがある作品なのではないでしょうか。お薦めです。



原作本です。
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