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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
06
2018

ニュースの真相

TRUTH / 2015年 / オーストラリア、アメリカ / 監督:ジェームズ・ヴァンダーヴィルト、原作:メアリー・メイプス / 報道 / 125分
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すべてが正しくなければ許されない。
【あらすじ】
スクープだと思ったら、誤報と指摘された。



【感想】
ジョージ・W・ブッシュ米大統領が大統領再選を目指していた2004年。アメリカ・CBSニュース「60ミニッツ2」のプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、ブッシュの軍歴詐称疑惑を裏付けるスクープを放送。センセーションを巻き起こす。だが、証拠とされた書類について、保守派のブロガーから偽造という指摘を受けてしまう。同業他社の批判報道も過熱、一つの書類の真贋のみが焦点となってしまい、肝心のブッシュの軍歴詐称疑惑はうやむやになってしまう。メアリー・メイプスは解雇、放送に関わったスタッフ、番組のアンカーマンであるダン・ラザーも番組を去ることになる。

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疑惑を追及することが仕事だったメディアが、一転、釈明に追われて追及を受けることになる。メディアだけが発信手段を持っていた時代と違い、今は誰もがSNSやブログなどを通して声を上げることができるようになった。当然、誤りのある情報の追及についても厳しくなってくる。

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信憑性について専門家の間でも議論の分かれる証拠を放送してしまったことについて、メアリーたちに責任があるのは間違いない。だが、たとえ証拠が誤りであったとしても、ブッシュ元大統領が軍歴を詐称した疑惑自体は追及されるべき問題のはずだった。ところが世論は証拠の真贋のみに熱中し、詐称疑惑という大きな問題は忘れ去られてしまう。

保守派のブロガーの指摘どおり、あの書類は偽造された偽物だったのかもしれない。だが、当時ブッシュの上官だった関係者たちが、ブッシュの軍歴について軒並み証言を拒否していることを考えると、やはり心証は限りなく黒に近いものになる。もし、軍歴に問題がなければカメラの前で語ってもなんの問題もないはずだ。

原作は、事件の当事者であるメアリー・メイプスの著書「大統領の疑惑 米大統領選を揺るがせたメディア界一大スキャンダルの真実」であるため、番組側の視点で描かれている。それでも、これは何者かによって仕掛けられた陰謀に思える。

この映画が今一つすっきりしないのは、その陰謀を仕掛けた者の正体がまるで見えないことにある。メアリーたちに罠を仕掛けた側も、彼らを破滅させようとすべてを計算し尽くしていたわけではなく、たまたま都合の良い方向に物事が進んだだけかもしれない。

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番組スタッフたちは、誰もがブッシュの経歴詐称を信じて疑わなかった。それは正しいのかもしれないが、同業他社からの批判、保身に走るCBS上層部からの圧力、掲示板での攻撃などによって、疑惑そのものが封じ込められてしまう。アメリカのような国ですら、声を上げることができなくなる状況が作られてしまうことが恐ろしかった。

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かろうじて救いとも言えるのが、事件から10年以上経ってしまったが、この映画が作られたことかもしれない。アメリカに限らず、圧力がかかって声を上げることができない状況になることはある。だけど、それでもアメリカが他の国より優れているのは、時間が経ったあとに過去を反省する復元力を持っていることだろう。しかし、その復元力も完全とは言えない。何か問題が解決したかと言えば、何も解決してないからだ。

また同じような事件が起きてしまうかもしれない。誰か一人、明かな悪者がいて、その人間がすべてをコントロールしているとも思えない。事態は複雑で誰もがコントロールなどできず、悪意に包まれているような閉塞感を感じるのだ。インターネットを利用している私たち自身も、その悪意の一端を担っているかもしれない。

ダン・ラザーが語る「勇気を」という言葉が印象に残った。報道に限らず、何かをしようとすればミスは起きる。ミスについては訂正すればいいし、勇気を持って行動し続けなければならないのだ。社会が過ちを許さず、寛容性を失えば、結果として私たち自身の首を絞めていくようにも思える。

いい映画でした。ケイト・ブランシェットは、本当にいい作品に出るなあ。かなり硬くて地味な作品ですが、お薦めです。


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