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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
02
2018

響け!ユーフォニアム

2015年、2016年 / 日本 / 監督:石原立也、原作:武田綾乃 / 音楽、青春 / 1期13話、2期13話
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吹奏楽に燃やす青春。
【あらすじ】
吹奏楽部に入部した。



【感想】
中学の頃、運動部の横でやたらと走らされていたのが吹奏楽部だった。そのときは、なんで文化系学部が走らされてるんだろうぐらいにしか思わなかった。関係者以外はあまり知ることもない吹奏楽部の内情が描かれており面白かったです。なにより、演奏にかけるひたむきさ、努力に打たれる。学生時代の部活などは、やっている本人はあまりわかってないけれど、あれほど純粋に努力していた日々というのはその後の人生になかったのではないかと思うこともある。

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北宇治高校に入学した黄前久美子(おうまえくみこ)。中学時代には吹奏楽部だったが、高校で吹奏楽を続けるかは迷っていた。クラスメイトたちに背中を押され入部を決める。

部活の難しさというか、当たり前だけどいろんなレベルがあるわけで、楽しく楽器ができればいいという生徒もいれば、全国大会を目指したいという生徒もいる。自分が先生の立場に立って考えたことはなかったけど、まずどのレベルで部活を運営していくかということを決めることも必要なのだろう。強豪校の場合、事情がわかって入ってくる生徒だけだろうけど。

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全国を目指す学校というのは、みなこれぐらいの意識の高さは当たり前なのだろうなあ。練習をサボろうという生徒は一人もいないし、朝は自主的に早く出てきて夜遅くまで練習という。盆も正月もない練習漬けの日々。2期の最終話は卒業式だが、卒業式の後ですら練習があるのだ。恐るべし。当然、これほどの練習量だと普通の生徒は学業に支障がでるわけで、塾通いを優先して辞めていく生徒もいる。部活ってなんだろうなあと、ちょっと考えさせられる。

音楽関係の仕事に就いて一生、楽器に携わっていくわけでもなければ、どれほどの情熱で取り組むべきなのかというのもある。ただ、やっぱり何かを必死になってやったことというのは何物にも代えがたい宝物になるのは間違いない。あとまあ、手を抜いて何かに取り組むのも逆に難しい訳で、周りが必死ならば自分もそりゃ必死になってやるのだろうなあ。



・コンクールの持つ意味
部員たちの努力は涙ぐましいが、コンクールでは冷徹な評価が下される。劇中でも「音を楽しむから音楽」という言葉があったけど、そうはいってもやはりコンクールは勝ちたいのが当たり前。みな全てを犠牲にしてやってきた。だが、審査員たちも完璧ではないし、スポーツのように点数によって勝敗が決まるわけではないものを本当に正しく判定できるのかという疑問もある。

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芸術作品の評価は、ある程度のレベルを超えれば「結局、好みなんじゃないの?」という疑問があるんですよね。運の要素も大きい。出場校全部がすばらしい演奏で、例年ならば文句なく優勝レベルに達していても、勝ち残れる校数は決まっている。逆に、まったく駄目な演奏ばかりの年ならば、どこかは勝ち残れることになる。その程度の矛盾はいくらでもあるだろう。

評価システムが完璧ではないからといって、それが努力に値しないものかというとまったく違うように思う。思えば、評価システムが完璧ではないものなど社会にはいくらでもある。自分の努力が適正に会社や上司に評価されるかといえば、そうでもないわけだし。でも、システムに欠陥はありつつも、できうる限りの努力はしてみる価値はあるのではないか。

そんなことが頭に浮かんで観てたけど、ようはですね、がんばってる人はいいなあという。本当にね、それだけですよ。ううう、みんながんばってたなあ! がんばってる人間に文化系も体育会系も関係ないのだな。それぞれの辛さがある。



・久美子の説得
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二期の山場といえば終盤の田中あすか吹奏楽部離脱。あすかは学業と部活共に優秀で、リーダーシップもありなんでもできてしまう生徒だった。だが、他人に本心を見せないところがあって、一線を引いて立ち入らせない。あすかのキャラがとても興味深いんですよね。

それでも、あすかなりのSOSというか、久美子を家に呼ぶ場面がある。なんでもできてしまうあすかが、何も考えてない久美子に無意識に助けを求める感じが面白い。何も考えてないからこそ、久美子なのかな。考えるのはあすかが得意なわけだし。

部に迷惑をかけないためにコンクールに出ないことを決断したあすかを、久美子が説得する場面がとても良かった。どんなに優秀な人間でも、どこかで自分のことを周囲が必要としていると言ってほしいんじゃないのか。あすかなりの甘えにも見える。久美子は、部のみんながいかにあすかを必要としているかを訴えるが、あすかは久美子を言い負かしてしまう。そのやり方には執拗さを感じる。頭はいいけど面倒臭いというか。

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だけど、そのあすかの殻を久美子の率直さが打ち破る。周りのことばかり考えて本当は自分は何がしたいのか、先輩だってただの高校生なのに、という久美子の叫びは胸に突き刺さるものがある。あすかのような人間は大変だなと思う。頭が良すぎるから周囲も彼女を説得できない。あすかなら、自分で危機を脱するはずだと思い、誰も助けに来てくれない。実際、模試の結果が良かったから、久美子の説得がなかったとしても吹奏楽部を続けたかもしれない。彼女はいつものように独力で危機を脱することができたとも考えられる。

でも、久美子の説得が無駄だったとは思えない。他人に対する信頼というか、そういうものは今までのあすかにはなかったのではないか。自分を本気で待っていてくれる人たちがいること、それを信じられたことは、あすかの物の見方を大きく変えたように思えたのだ。これは本当に奇妙なことではあるけど、頭の良い人の面倒臭いところで、どこかで自分を打ち負かしてくれるのを願っているように感じることがあるのだ。私の周囲に実際にこういう人がいた。もっとも、挑んでいっても、大抵はこっちがボコボコにへこまされてしまうのだけど。あすかは、麗奈が望んだような「特別な人間」なのかもしれない。でも、特別な人間が幸福かというとそうも思えないんですよね。そこが面白い。そして、まったく特別ではない久美子が特別なあすかを救うというのも面白いのだ。姉が吹奏楽をやめたことを後悔しているエピソードも効果的にからめてあって良かったですね。

しかし、あすかは結局、無意識のSOSにより久美子を呼んでいたわけで、久美子こそがあすかを負かしてくれるというのをどこかで予感していたのかもしれない。うーむ、やっぱりあすか先輩はできる子。この場面を観られただけでも良かった。久美子を演じた黒沢ともよさんの声の力に唸らされました。風景や水の描写も美しかった。ダラダラ生きてるから、たまにちゃんとしている人たちを見ると単純に感化されてしまう。みな、面倒臭いとは思いつつも、本気で燃えられるものを求めているのではないか。それが見つかるのは稀有なこと。とても熱い作品でした。お薦めです。


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