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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
03
2018

白昼の死角

1979年 / 日本 / 監督:村川透、原作:高木彬光 / 犯罪、サスペンス / 154分
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失われたモラル、犯罪の美学。
【あらすじ】
東大生の優秀な頭脳を集めて会社を作りました。ただし犯罪専門。



【感想】
戦後、東大法学部の学生が設立した金融会社「太陽クラブ」。会社は急成長を遂げるが、違法な高利での貸し付けにより、社長の隅田が検挙され焼身自殺を図る。残された鶴岡たちは、新たに六甲商事を設立し、企業から金をだまし取っていく。戦後、実際に起きた「光クラブ」事件を基にした作品。

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みんな現役東大生のはずだけど、実際は中年だから学生コントのように見えてしまう。左は中尾彬さん。こんな迫力ある学生おるー?

悪者が主役のピカレスクロマンというジャンル。ルパン三世を観ていて腹が立つことはないけど、あれはルパンの犯罪哲学や信念にどこか共感する部分があるからかもしれない。この映画も観ていて腹立たしくなるところはありませんでした。悪党である主人公に哲学があるからだろう。

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鶴岡七郎(夏木勲、のち夏八木勲)は胆力があり、弁舌爽やか、頭も切れる。詐欺の手法は、現実には実行は難しいと思われる大仰なトリックもでてきたり、本格推理小説の名残りを感じさせる。他に、お酒を飲ませてグデングデンにしてしまうという、トリックとは言い難い犯罪もあるのだけど。

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「太陽クラブ」の面接試験には原作の高木彬光氏(左から2)も登場。「指がない」という理由で落ちました。

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基になった事件である「光クラブ」事件について読むと「アプレゲール犯罪」という言葉が出てくる。

アプレゲールとは「戦後派」を意味する。対義語はアヴァンゲール。フランス語では前者が「戦後」、後者が「戦前」を意味する(ウィキペディア)。戦前の価値・道徳感が崩壊した時期であり、無軌道な若者による犯罪をアプレゲール犯罪と呼んだ。光クラブ事件もアプレゲール犯罪と呼ばれる。

鶴岡は東大に入るほどの優秀な頭脳がありながら、モラルが欠落しているというのが面白い。人を騙して良心の呵責に苦しむ様子がないのも興味深い。彼らが青年期に戦争を体験していることが大きく影響しているのは間違いないだろう。国から強制的に徴兵され、問答無用で戦争に参加させられてしまう。戦後、国は何か責任をとったかというとそうも思えない。もはや何も信じるものなどなく、何をやってもいい。勝てば官軍じゃないかというのが、アプレゲール犯罪の根底にあるのだろうか。あまりに単純な解釈であるが。

騙した相手が、会社に責任をとるために切腹するのだけど、もうその死に方もねえ。戦争との地続きを感じた。まだ戦争は完全に終わっていなかったのではないか。娯楽作品でありながら、どこか根底に戦争の熾火のようなものを感じさせる作品でもありました。主題歌の「欲望の街」は映画に合っているが、一部のBGMがみょうに明るくて、雰囲気に合ってないような。なんだろう、あの浮かれた感じ。

「狼は生きろ。豚は死ね。」という鮮烈なコピーもいいですね。ギラギラした魅力的な時代。


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