FC2ブログ

旧作映画の感想、ネタバレしてます。
14
2018

特捜部Q Pからのメッセージ

FLASKEPOST FRA P / 2016年 / デンマーク、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー / 監督:ハンス・ペテル・モランド / サスペンス / 112分
4V1__201808141542295a3.jpg
神に翻弄された人々。
【あらすじ】
子供が誘拐された。



【感想】
じっくりと作られた北欧ミステリー、特捜部Qシリーズの3作目。派手さはないものの雰囲気が本当に好きなんですよねえ。頑固でぶっきらぼうなカール(ニコライ・リー・コス、右)と、社交的で温厚なアサド(ファレス・ファレス、左)のやりとりが好きで観ている。謎とかどうでもいいんだ。コンビが仲良く揉めるのを観たいんだよ!

44V1_.jpg

という、いつもの動機で観始めたんだけど、今回は何かカールの様子がおかしいんですよねえ。いや、いつも陰気で塞ぎがちなんですけども。塞ぎすぎである。どったの‥‥?

43L_.jpg

完全に鬱病じゃんかあ‥‥。具合が悪すぎるぞ。職場にも出てこないし。ヨヨヨ‥‥。

事件が起きたことをきっかけに、カールを連れ回すアサド。ショック療法の一種でしょうか。なんとか復調してきましたよ。事件が起きないとおかしくなっちゃうというのはホームズみたいだなあ。ホームズの場合、事件が起きてないときは退屈しのぎに覚醒剤やってたけども。

今回は宗教絡みの話となっている。このシリーズでは無神論のカールと、イスラム教のアサドはしばしば対立してきた。今回もカールはアサドに向かって、君のように頭のいい人間がなぜ宗教にはまっているんだ、みたいなことを言う。アサドは宗教とうまく付き合っているように見える。よりよく人生をまっとうするための信仰にも見える。

r1__201808141542349bc.jpg

犯人トマス(右)の動機は、神への恨みにある。幼少期にトマスの姉が親から酸をかけられ失明するなど、ひどい虐待を受けたとき、神は何もしてくれなかった。だからトマスは自らの手で親を殺さざるを得なかったのだ。彼は信心深い家族の子供を誘拐して殺害することで、その家族の信仰を失わせる悪魔となった。

彼が神を信じていないかというと、そうではないと思う。神を信じていたが、苦境にあった自分たちを助けてくれなかった。だから神を信仰する人々から信仰をはぎとる、つまり神の敵になることを決意する。そして、エホバの証人や神の弟子教団の家族を狙っていく。

無宗教のカールは、信仰を理由に、警察に協力を拒む家族に苛立つ。信仰を貫くことで、自分の子供を危険にさらす姿は、エホバの証人の輸血拒否事件を思い出させた。私のような無宗教者からすれば、聖書が書かれた頃は輸血という技術がなかったのに、どういった解釈で輸血禁止としたのかとか、たとえ神が禁じても自分の判断で輸血をして、その後、自分が報いを受ければいいじゃないかと思うのだけど。信仰を持つ人々の言い分はいろいろあるのだろうけれど、そこに強い歯がゆさを感じる。

信仰を持つ人々にとっては、「不幸」であることこそが心の慰めなのだろうか。経済的貧しさ、健康上の理由、社会的地位の低さ、さまざまな理由で自分が苦境に立たされているのは神の試練である。また、信仰を持つ自分たちを人が馬鹿にするのも神の試練で、彼らは哀れで愚かな人々なのだ。そうでなければ自分の苦境に説明がつかない。だから、これでいいのだと。これ、私の親戚の話ですけどー。神の存在について一切疑わない姿勢は、考えることを拒否しているように映る。

4_201808161115353c7.jpg

カールは犯人に監禁された際、目の前で殺されようとする子供たちの身代わりになろうとする。面白いのは、無宗教者であるカールの行動がもっとも献身的で神が喜びそうなことなのだ。信仰とはなんなのだろうと考えさせられる。聖書を解釈すること、教会で祈りを捧げることだけが信仰なのだろうか。カールのような無宗教者がとった献身的行為を神はどう評価するのだろう。

dd1__20180814154235e4c.jpg

そして、穏やかで信心深いアサドだったが、怒りにかられて犯人を殺してしまう。アサドは犯人を殺さずに取り押さえることもできたのではないか。なんだか苦い終わり方になってしまった。神についてどう考えるかは人それぞれで、干渉すべきことではない。他人を害さなければそれでいい。そんな簡単なことも、実際はなかなか守ることはできない。異質なものを排斥しようとする風潮は収まりそうもない。

神というのは人間が発明したもっとも厄介な発明品に思える。


関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment