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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2018

ゲット・アウト

GET OUT / 2017年 / アメリカ、日本 / 監督:ジョーダン・ピール / スリラー 、SF/ 104分
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「私だけは被差別者の味方」という欺瞞を嘲笑う。
【あらすじ】
彼女(白人)の実家に行ったら大変だった。



【感想】
いやあ、面白かったですねえ。意外な展開。差別をテーマにしつつも、重苦しくならず、恐怖と笑いで包み込んでしまう。差別+スリラーって新しい切り口かもしれない。脚本がフェアですばらしい。作り手の誠実さがうかがえます。この監督の作品は今後、観続けたいです。

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ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人のクリス(ダニエル・カルーヤ、左)は、週末に恋人ローズ(アリソン・ウィリアムズ、右)の実家に招待される。ニューヨークならば黒人と白人のカップルもなんら問題はないのでしょうが、田舎だとまた違うのだろう。

彼女はリベラルな思想らしく、まったく人種のことは気にしない。「うちの親はオバマに3期目があったら投票しているわ」と、ローズの親も黒人に対して偏見がないことを強調する。クリスは不安なんですね。「そうは言ってもさあ‥‥」という感じで気が進まない。アメリカ都市部に暮らすカップルの間では、よくあることなのかな。いいですよ~、この感じ。

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で、彼女の実家で両親に紹介されたクリス(右)。たしかにローズの両親も、両親の友人たちも黒人であるクリスに優しいし理解がある。 だが、その理解も不気味な違和感に変わる。両親も友人たちも黒人に偏見がないどころか、異常に褒めてくる。黒人であるあなたの体はすばらしい、黒人こそがすばらしいとか。あれ、なんか様子が変だな? と思わせる不気味さがいい。

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「黒人に理解のある白人」という見方は、上からの見方かもしれない。思い上がりというか。差別感情がないのはいいことだけど、うっかりすると「自分だけは差別はしない人間」という思い込みにはまりそう。リベラルが陥りそうな危うい部分を滑稽かつ巧みに表現している。差別者も厄介だけど、「私だけはわかっている」というのも、これはまた別の厄介さがある。リベラルを自称する白人はこの映画をどう観たかが気になる。黒人はゲラゲラ笑ってそうだけど。取りあげ方に嫌味がなくて、ユーモアでくるんでいる感じで品がいい。

差別というのは「する」「しない」というより濃度なのではないか。みな完全な人間ではないのだから、どこかで誰かを差別をする気持ちをある程度は持ってしまう。あまりに潔癖に「少しでも差別感情を持ったらいけない」というのも難しい。なんでもかんでも糾弾すると、窮屈な空気が生まれて社会がギスギスする。差別感情が一定量を超えて敵意が発現するのはまずいことだけど。

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張りついた笑顔が印象的なメイド。不気味だよお。どこかで見たと思ったら、ウォーキングデッドのサシャ(ソネテクア・マーティン=グリーン)でした。ウォーキングデッドでは武闘派姉さんでしたが、今回も‥‥。

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この映画の脚本は公正さを感じる。危機に陥ったとき、偶然が積み重なるとか、不思議な力で助けられるとか、安易な方法で主人公を助けない。観客にも提示されていた物を使って危機を脱するのがいい。クリスが椅子から動けないとき、ある道具を巧みに使ってピンチを逃れる。格闘場面でもそうですね。後ろから組みつかれたクリスは目の前の扉を開けて危機を脱しようとする。相手の足をピンのような物で突き刺そうとするが、うまくいかない。扉を開けようとするとき、相手が扉を足で閉めるのを読んでピンを突き刺すのだ。ここらへんがねえ、脚本の公正さを感じてとてもいい。

どこか笑いもあり、違和感に満ちた怖さもあって、よくできたスリラーでした。グロい場面もそれほどないのも助かります。正面から差別を糾弾するというより、自分だけは差別をしないと信じ切っている人たちの差別を滑稽に扱った作品に思える。でも、「批難」というんじゃなくて、クスクス笑うような感じというか、その視線には人のしょうがなさを許容する寛容さを感じる。有名な役者も出てないので先入観なく観られるのもいいですね。お薦めですよ。


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