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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
27
2018

人生タクシー

TAXI / 2015年 / イラン / 監督:ジャフル・パナヒ / ドラマ / 82分
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映画を撮っちゃダメっていうから‥‥。
【あらすじ】
イラン政府から20年間の映画監督禁止令を受けたので、車載カメラで記録を撮っている。



【感想】
ジャファル・パナヒ監督がみずからタクシーを運転し、乗り合わせた客との対話から抑圧されたイランの姿を映し出していく。監督は穏やかな物腰ながら、本当に芯の強い方なんですね。国から映画を撮ることを禁じられても撮ることをやめない。命の危険すらあるだろう。

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そういった高い志で作られた作品であるが、映画として面白いかといえば、まあそんなこともなかったわけで難しいところ。面白いかどうかなど、そんなのん気な話ではなく、抑圧されたイランの現状を訴えたいという強い動機があるのだから、そこを観るべきなのだろう。どうせ公開は無理なわけだから、映画ではなくドキュメンタリーとして撮ったほうが良かったようにも思うのだけど。

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乗客たちが語るイランの内側が興味深い。バレーボールの試合を見に行っただけで逮捕された女性たち、海賊版DVD(黒澤、小津や普通のハリウッド映画はイラン国内では禁止?)を売る男、イラン映画の登場人物はネクタイをしている人(西洋的な服装)を善人に描いてはならない、俗悪なリアリズム(お金をネコババした子供を映すなど)は撮影禁止など。

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他にも、昼までにお祈りをしないと金魚が死んでしまうと信ずる老女たち、遺言がないと配偶者といえども財産を相続できない女性、みずからを「路上強盗」と臆面なく名乗るモラルなき男、そして最後も車載カメラが泥棒に盗まれて映画は終わる。厳しい戒律によってコントロールされているはずが、モラルと治安はとても悪そうなのだ。

だが、映画として観たとき「これだけ?」と拍子抜けしたのも本当のところ。直接的な厳しい体制批判の映画ではなく、なんでこの程度のことで上映許可が下りないのかが不思議だった。でも、そこにこそ抑圧されたイランの問題点がある。もし、舌鋒するどく体制批判しようものなら、たちまち逮捕されてしまうだろう。

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だからこの映画に過激さは見えず、表面的には静けさに満ちている。よく観ていないと、何を言いたいのか汲み取れないかもしれない。だが、こんな静かな映画すらイランでは上映許可が下りないという画面外の状況をセットにして、この映画は完成している。

言論の自由が保障された国にいて「面白くなかった」というのは甚だ失礼な話ではあるが、やっぱりそれでも面白くはない。でも、こういう映画はもちろんなくてはならないもの。面白くはないけれど必要で、こんな映画を撮らなくて済むようになることが一番である。もっといろんなイラン映画を観てみたいです。


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