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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
29
2018

亜人ちゃんは語りたい

2017年 / 日本 / 監督:安藤良、原作:ペトス / 学園、日常 / 全12話
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差別の先にある光景。
【あらすじ】
生徒に亜人がいるので理解したい。



【感想】
ほんわかとした日常ものでありながら、マイノリティとの向き合い方という難しいテーマにも取り組んだ意欲的な作品。面白かったです。

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怪談や伝承に登場したヴァンパイア、雪女、デュラハンなどの亜人たち。かつては人々から恐れられ、迫害されてきた過去もあった。この世界では人権が保障され、亜人は人間社会に溶け込んで生活している。高校教師、高橋鉄男の勤務する高校にも亜人の生徒や教師がいた。

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異形、異能の者を恐れ、差別をテーマとする作品は珍しくない。でも、この作品の面白いところは、すでに社会が亜人を受け入れているところにある。差別と戦い、人権を勝ち取るのではなく、社会から認められたその先が描かれている。

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ヴァンパイアのひかり(光が苦手なヴァンパイアに「ひかり」という名前も面白いけど)には、国から月一で血液パックが供給されている。サキュバスの佐藤早紀絵は、人々に影響を与えないよう人里離れた一軒家が貸与されている。周囲の生徒も、表立って亜人を差別して攻撃するようなことはなく、彼らを同じ人間として受け入れている。

すでにある程度は人権が保障された社会に暮らしながらも、それでもそこに差別が起きてしまう難しさがある。周りの人間から気を遣われすぎてしまい、壁ができ、それが差別と映ることもある。敬して遠ざけるような。だから「亜人ちゃんは語りたい」のであって、語ることでしか、この壁は打ち破れないのだろう。

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雪女の日下部(くさかべ、右)の陰口を言っていたクラスメートたち。彼女たちを糾弾したり、論破したりすれば留飲は下がるのかもしれない。だが、亜人であるひかりや日下部は、自分の考えや立場を説明して理解してもらおうとする。あくまでも、語ることによって溝を埋めていこうという姿勢に好感が持てる。

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この作品は、差別を扱った作品の中でもかなり先を行っている。それは、「差別をよくないことだと十分認識している者たち」がしてしまう差別が描かれていることにある。佐竹裕介(左)は、女子生徒がポツリと口にした「(亜人を)同じ人間だと思っていていいのかな‥‥」という素朴な疑問に反発する。

この反発は佐竹の「差別はいけない」という真っすぐな正義感に根差したもので好感が持てるものの、何も考えていないということにも近い。女子生徒が言いたかったのは、とてもデリケートな部分で、亜人にはそれぞれの特性(光や暑さに弱い、血を欲しがるなど)があって、なにもかも自分たちと同じだと強引に思い込むのではなく、それぞれの特性を理解して付き合っていくべきだと考えている。この特性を理解して付き合うのは、差別とはまた違うことだと思える。

こうやって考え続けることが重要で、最初から最良な結論は出ずに間違えることだってあるだろう。でも、佐竹たちのように考え続けていれば、そんな変な方向にはいかないんじゃないのかな。

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高橋鉄男は、首が分離しているデュラハンの町京子(左)にだけは、片手が塞がる学校指定の鞄ではなく、両手を空けることができるリュック(首を持ちやすい)での通学を勧めている。これは特別扱いや依怙贔屓ではなく、デュラハンの特性を認めた上での扱いだと思う。この世界では、国や学校の対応が柔軟で、亜人と共生していくシステムも整備されている。そのシステムに個人のほうがちょっとついて行けず、ためらう部分も描かれている。

奇抜な設定なんですけどね、なんだか道徳の授業にでもなりそうな作品になっている。エンディングの「フェアリーテイル」(三月のパンタシア)は作品の内容に沿った歌詞でとてもいいですね。曲と絵のイメージもあっているし、歌もほっとするような声でいい。

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パステルによって世界に次第に色が付いていく様子が楽しい。

誰もがなりうる「差別者」や、考えが違う者を敵として描くのではなく、対話することによってわかりあおうとする姿勢がすばらしい。当初、敵のように描かれていた女子生徒や教頭も敵ではなく、この世界で共に暮らすものであって、きっとわかりあえる人たちなのだろう。ホッとするような作品。お薦めです。


しかし、やたら女生徒にハグをする高橋鉄男はどうなのだ。それは、亜人とか関係なくおかしい。普通、停職だと思いますけどー。
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