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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2018

天国と地獄

1963年 / 日本 / 監督:黒澤明、原作:エド・マクベイン / サスペンス / 143分
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天国側もそこそこの地獄。
【あらすじ】
子供が誘拐された。



【感想】
BSで黒澤特集をやっていたのか「隠し砦の三悪人」に続き「天国と地獄を」を観る。長尺のサスペンスです。英題だと「HIGH and LOW」なんですね。エグザイルの映画みたい。エグザイルは出ないけど。

三船敏郎、仲代達矢、志村喬、千秋実、藤原鎌足、山茶花究など、黒澤映画の常連が多く出演しています。三船敏郎演じるシューズメーカーの常務・権藤金吾(左から2人目)。権藤の子供と間違えて、お抱え運転手の子供が誘拐され、脅迫を受ける。

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いつもの黒澤映画のように三船敏郎は迷いなく行動するわけではない。完全なる善でもない。権力闘争に勝ち抜くため、会社の乗っ取りを企んでいた。運転手の子供の身代金を払うのか、子供を見捨てて会社を買収するための株を買うのか、苦悩する。なかなか簡単に身代金を払わないところが良かったですね。

三船も他の重役連中と同じく会社乗っ取りを企んでいる。しかし、重役連中のように客に粗悪品を売りつけて荒稼ぎしようというわけではなく、デザイン的にも機能的にも優れた靴を作りたいという動機はまともなんですよね。非情に見えても三船の隠しきれない善人らしさがいい。

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昔ながらの捜査会議という感じ。扇風機を回していても、シャツに染みができるほど汗をかいている。ちなみに撮影は真冬に行われたとか。左から二人目の後姿は志村喬です。この映画ではほとんど出番がなかったのが残念。

札束を入れた鞄を電車の窓(7センチだけ開いた)から投げるという、実際にいくつかの誘拐事件(グリコ森永事件等)でも模倣されたやり方が出てくる。

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劇中に出てくる「特急第二こだま」。こだまといっても新幹線ではない。この映画が公開された翌年(1964年)に東京大坂間の東海道新幹線が開業する。時代を感じます。「クズ屋」「ボロ屋」など、今ではなくなった職業もでてきて興味深い。

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身代金を詰めた鞄が燃やされると、鞄に仕込まれた薬剤によって色付きの煙が立ち上る。白黒フィルムに色をつけることをやっている。これは「シンドラーのリスト」でも真似されてますね。

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当時、誘拐の罪は懲役5年という軽さだった。刑事たちはとても懲役5年では許せず、犯人の共犯者殺しの現場を抑える(警察が意図的に誘導)ことで死刑を狙うのだ。いや、刑事が頭にきたからって犯人に罪をおかさせるようなことしたら、いかんじゃろ‥‥。仲代達矢はクールな顔して、滅茶苦茶やるのであった。

犯人の動機が面白かった。丘の上に建つ豪邸を丘の下から見上げていたら、段々腹が立ってきてやってしまったという。1963年というと東京オリンピックを翌年に控え、高度経済成長期で日本が湧きたっていた頃だろうか。権藤金吾の住む豪邸と、丘の下に住む冷房もない一般庶民の家の格差は際立っている。もう経済格差が問題になりつつあったのかなあ。

ただ、経済格差による嫉妬が犯行の動機とすると、それも変な感じがするのだ。犯人は病院のインターンであり、順調に行けば彼も丘の上の住人となれる可能性はあったのではないか。なぜ、インターンが犯人かというと、犯行に使われた薬品類を入手しやすいというだけで選ばれたように思えるのだ。

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この映画の後、映画の誘拐を真似たと思われる誘拐事件がいくつか起きており、それはとても残念なことだけど、それだけよくできた映画ということなのでしょう。登場人物の気質が、いい人も悪い人も、みな真っすぐな感じで、1960年代の空気を感じる作品でした。権藤にしろ警察にしろ「子供の命が大事」という当たり前の価値観を強くもっており、単純ではあるがそこに何かホッとするものを感じる。これはひょっとすると犯人も同じかもしれない。現代の幾重にもひねったサスペンスを観ている人には、少し単純に感じるところもあるかもしれません。

権藤の妻役の香川京子さんがとてもきれいですね。当時は、普段から和服の方も多かったのかなあ。

天国は天国で、あんまり住みよさそうでもないよねえ。この世は「地獄」と「さらなる地獄」しかないのだろうか。

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