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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
02
2018

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

WHERE TO INVADE NEXT / 2015年 / アメリカ / 監督:マイケル・ムーア / ドキュメンタリー / 120分
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古き良きアメリカを探して。
【あらすじ】
アメリカが失ったすばらしいやり方を所を探しに行く。



【感想】
マイケル・ムーアがヨーロッパを中心に各国のいいところを紹介したドキュメンタリー。日本が一番みたいな番組もしょっちゅうやっていますが、こうして見るとどの国にも長所は必ずある。もちろん短所もありますけど。学ぶところの多い番組でした。

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◆労働
日本人というと勤勉というのがひと昔前のイメージですが、勤勉はすばらしいものの労働時間の長さというのがやはり気になる。イタリアは有給休暇が80日あったり、昼休みは2時間あって家に帰って家族と食事がとれる。バイクメーカー、ドゥカティのCEO(右)は「会社の利益と福利厚生は両立できる」と語る。ラルディーニ社も利益を従業員に還元している。ドイツのファーバーカステル社の鉛筆工場は就業時間が6時間しかなく午後2時に仕事が終わる。それで利益が上がっているのだからこんなにすばらしいことはない。終業後はめいめい好きなことをして過ごす。午後2時て。たまらんなあ。はああああああ、なぜこんなことができるのだ。企業が従業員を大切にしている様子が伝わってくる。「従業員が健康だからこそ良い製品ができる」という言葉が印象的だった。


◆教育
フィンランドの学力は世界でもトップレベルだけど宿題がない。完全にないわけではないようで10分ぐらいやることもあるようです。統一テストや宿題をなしにしたことと学力の向上が具体的にどう結びつくかをもう少し知りたかった。フィンランドには私立校がほとんどない(教育でお金をとることが法律で禁止)というのが興味深い。そのため裕福な家の子も公立校へ通うし、公立校のレベルは全国同じに保たれているという。周囲に裕福な子も貧しい子もいる。周囲が同じ階層で固定されない。個々の違いを感じて育つことが他者への理解に繋がるように思える。

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「生徒が卒業後に幸せに生きること」を考えているという教師の言葉。当たり前と言えば当たり前だし、きっと日本の教員の方もそうなのでしょうがちょっと感動的ですらあった。


◆刑務所
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北欧の刑務所は犯罪者の処罰よりも更生に重きをおいている。薄型テレビやPCは当たり前、ゲーム機もある。個室に清潔なシャワーやトイレもあって、学生の一人暮らしのような部屋。鍵を持っているのは囚人自身。釣り、美術、哲学、音楽の演奏・録音、さまざまなことをして楽しむ。受刑者115人に対して看守は4人。

厳罰を与えることより更生をめざすほうがいいというのは理解はできる。ただ、被害者やその家族・遺族の感情というのはどうなのだろう。そこに疑問があった。その点で、私は死刑に賛成だった。

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ノルウェーで2011年7月22日に起きた連続テロ事件では77名が命を落とした。この事件で17歳の息子を失ったトロンド・ブラットマンにマイケル・ムーアがインタビューしている。

犯人はネオナチで人種差別主義者。何の罪もない子供たちを虐殺した。それでもこの父親は犯人への復讐を望まない。「相手が最低のクズでも私に殺す権利はない」「開かれた社会で民主主義と言論の自由を高める。収監しても物事はよくならない。憎しみを増すだけ」と言い切る。

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犯人に彼の思いが少しでも伝わればと思う。

受刑者に罰を与えるのではなく人の温かさ、お互いに支え合うことを思い出させる。その寛容な方針は見事で実際に成果を挙げている。ノルウェーの殺人事件発生率は世界最低。アメリカの受刑者の80%が5年以内に再逮捕されるというデータがある一方、ノルウェーの再犯率は世界最小の20%。

どうやって被害者やその家族・遺族の気持ちを鎮めるかという問題もあるが、刑を厳罰化させることが犯罪の抑止に繋がるとは思えない。死刑は必要ないのかもしれないと考えを改めさせられた。ただ、自分の息子を殺されて、なおそう主張できるこの父親は本当にすごい人だと思う。


アメリカが世界から憧れられたのはレーガン大統領の時代ぐらいまでかもしれない。その後のアメリカにはいいイメージがない。利益のためならなんでもやるという印象が強い。さまざまな問題について各国は優れた対処をしている。だが、その方法の多くはアメリカで行われていたことの模倣だったというまとめがなされる。いつかアメリカは再びかつての輝きを取り戻せるのだろうか。

アイルランドの女性経営者から今のアメリカの現在について「なぜ平気なのか理解不能よ」と責められたとき、マイケル・ムーアはきまり悪そうに「平気じゃない」と口にする。いつも皮肉や冗談ばかり言っている人の本心が滲み出た瞬間に見える。マイケル・ムーアは真の愛国者なのだろう。とてもいいドキュメンタリーでした。


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