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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2018

マジカル・ガール

MAGICAL GIRL / 2014年 / スペイン、フランス / 監督:カルロス・ベルムト / 奇譚、ノワール / 127分
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二人の魔法少女と二人の使い魔が織りなす歪んだ愛情の物語。
【あらすじ】
難病の娘のために魔法少女のコスチュームを買ってやりたい。



【感想】
登場人物の感情の乏しい様子、散りばめられた伏線、大幅な説明の省略などから、観る側から迎えにいかなければならない作品になっている。ただ楽しませてくれる映画を望む人にとっては退屈な作品に映るかもしれない。カルロス・ベルムト監督にとって「ダイヤモンド・フラッシュ」に続き2作目の長編。2作目でこんな作品を撮るとは恐るべし。好き嫌いがはっきり分かれる作品かと思いますが、この監督の作品は観続けたいです。ちょっと奇妙で、直接視覚に訴えるグロテスクさはないものの異様な雰囲気に満ちている。「ロブスター」とか「パンズ・ラビリンス」とか好きな人はいいのかなあ。私は好きでした。日本映画へのオマージュもそこかしこに。

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これは日本版のポスター。うーむ、なぜここまで雰囲気を変えてしまいますか。ダサくしなければ死ぬ呪いにかけられているとか。「魔法少女ユキコは悲劇のはじまり」て。でも、ちょっと観てみたくなるな。じゃあ正解でいいのか。

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アニメ「魔法少女ユキコ」に憧れる少女アリシアは白血病に罹っており、余命いくばくもない。またアリシアちゃんがね、かわいいんですよね。母親はおらず、父娘で質素に暮らしている。父親のルイス(ルイス・ベルメホ)は失業中で、娘の医療費も蔵書を売ってなんとかしているような状況。

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アリシアは、あんまり生きられないから煙草吸いたいとか、お酒飲みたいとか言うんです‥‥。切ないなあ。この子が「お願いノート」みたいなのをつけていて、ルイスはそれをこっそりのぞき見する。「好きなものに変身したい」とか「魔法少女ユキコのコスチュームが着たい」とかね、12歳の女の子だなあクスクスなんて見てるんですけど。3つ目のお願いが「13歳になりたい」って書いてあって、ああ、もう‥‥、ちょっと泣くわ、そんなん書かれたら。

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アリシアが父親に「願い事が叶うとしたらどうしたい?」と訊くと、ルイスは「透明になる」って答えるんですよね。

ルイスは治療費がなくて宝石店を襲おうかとまで悩んでいる。透明になれば宝石店に忍び込んで、アリシアにもっと良い治療をしてあげられるとか、アリシアが好きな魔法少女ユキコのコスチュームを買える。本当はね、「アリシアの病気が治る」のがルイスの一番の願いなのだけど、そんな叶わないことを口に出せば二人とも悲しくなるだけで、だから「透明になる」と答えたのだろう。そう考えるとねえ‥‥。

ルイスが宝石店のショーウィンドウを眺めるところがおかしくて。

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店員とルイスがガラス越しに見詰め合う場面が執拗に繰り返される。店員の「おまえ、買えないだろ。客じゃないだろ?」という不審げな表情がいいんですよねえ。そこかしこでクスクスっとなる場面がある。

ちなみに後ほど殺し屋が探していたパズルの1ピースはこの宝石屋の前でルイスが拾う。これはどういうことかというと、殺し屋(ダミアン)が出所後に気になってバルバラの家を見に来ていたという意味。

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アリシアがラジオに送っていた父親への手紙は、放送で読まれることになるものの、ルイスはそれを聞かずに出て行ってしまうんですね。アリシアにとっての幸せはルイスがそばにいることだったのになあ。

ルイスは宝石店の前にいたところ、上から吐瀉物(ゲロですが)がかかってきて服が汚れてしまう。犯人は宝石店の上に住んでいたバルバラ(バルバラ・レニー)。

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彼女がまたちょっと変わった女性で精神的に不安定。夫は精神科医でお金持ちなものの、夫に支配されている感じがある。夫から顔をグニュ~っとされたり、夫の靴ひもを結んだり、バカ呼ばわりされたり。

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二人の関係が決定的に変というわけじゃなく、どことなく違和感がある様子が気味悪い。歪(いびつ)というか。観ていてゾワゾワする。

で、吐瀉物をかけられたルイスはバルバラの家でシャワーを借り、なんだかいろいろあって二人は関係をもってしまう。それをルイスは録音しておいて、後日、金持ちのバルバラをゆするのだ。ルイスはバルバラからせしめた金で、アリシアが欲しがっていた魔法少女ユキコのコスチューム(一点物なので90万円)を買うんですね。レプリカでいいじゃんかあ‥‥。

父親からコスチュームをもらったときのアリシアがかわいいんですよね。いそいそとして。で、このコスチュームにはステッキが付いているのだけど、アリシアは箱をひっくり返したりして(ステッキはどこだろ?)と思っているのだけど、父親には言わないんですよ。お金ないのわかってるから。かわいいなあ。

ルイスはルイスで(なんか足りないのかな?)と気づいたようで、ネットで検索したらステッキが付いていることを知り、またバルバラを強請るのだった。おまえ、いいかげんにせえよ。

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バルバラは夫は金持ちなのだけど、夫に内緒でお金を使えない。彼女は怪しい仕事でルイスの要求に応える。金持ちの家で、性的な仕事(拷問じみたSM?)をして報酬を受け取る。もう、終わるとグッタリしちゃうんですね。何があったかは見せないで想像させるというのもいい。

ステッキのお金を支払うため、バルバラはみんなが恐れる「蜥蜴の部屋」に入る。これは江戸川乱歩の「黒蜥蜴」からとられたのだろう。エンディングには、映画「黒蜥蜴」の主題歌「黒蜥蜴の唄」も流れる。検索エンジンが「RAMPO!」だったり、監督の日本好きがうかがえる。

蜥蜴の部屋に入ったことでバルバラは全身に傷を負ってしまう。そこで登場するのがバルバラ側の使い魔とも言えるダミアン(ホセ・サクリスタン)。

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誰かと思えば「バスルーム 裸の2日間」で女子大生にひたすら「ヤラセロ」と言っていたヤラセロジジイではないか。この人は教師でありながら服役していた。冒頭に出てくるのが12歳の頃のバルバラと教師だったダミアンですね。恐らくバルバラは子供の頃に性的虐待を受けていて、ダミアンがその相手を殺して服役していたように思える。外に出てきた彼は、もうバルバラから距離をおこうと考えていた。

彼は出所の際にカウンセラーらしき女性からジグソーパズルをもらう。それを家でせっせとやっていたら1ピース足りないんですね。これはまともな世界への復帰を表しているように見える。せっかく真人間になれそうなダミアンだったけど1ピース足りず、世界が崩壊し、またバルバラとの関係が復活してしまうという。瀕死のバルバラはダミアンを頼るんですね。そうするとダミアンに火がついて脅迫したルイスを殺してやる! となるわけなのだ。

ただ、ダミアンはバルバラを恐れて拒みつつも、バルバラとの関係が復活したことを喜んでいるようにも見える。崩壊がわかりきっていて、それでも嬉しいというか。矛盾しているようでなんとなく理解もできるような。バルバラも、すべてを夫に話せばいいのにそうはしない。むしろ、みずから進んで拷問部屋に行くようにも見えるのだ。

冒頭で「2+2=4は変わらない真理」のようなことが言われるが、(アリシアとルイス)+(バルバラとダミアン)=4人ということなのかな。ルイスとダミアンの職業が共に教師であり、アリシアが12歳、当時のバルバラが12歳というのも、互いがシンメトリーな存在であることを示している。

怒りに燃えるダミアンだが、ルイスを殺すかどうかはちょっと考え中という様子。バルバラは「ルイスにレイプされた」と嘘をついたんですね。だが、ルイスからは「合意の上だった」と聞かされる。これにキレたダミアンはルイスを衝動的に撃ち殺す。ダミアンはバルバラを愛しており、レイプならまだしも合意の上というのが許せなかったという。

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父親の帰りを待っていて驚かそうと着替えていたアリシアちゃん。お茶目。そこにダミアンがやってくる。彼はアリシアを撃ち殺して、ルイスの携帯電話(脅迫内容が録画されている)を取って去る。アリシア、なんも悪いことしてないのに。アリシアの挑みかかるような目が印象的だった。ダミアンはバルバラ側の人間だから、アリシアを殺さざるを得なかったのだろうか。ダミアンというと映画「オーメン」を思い出す。ダミアンが悪魔で、バルバラは魔女なのかな。

なんとも言えない奇妙な物語でした。二人の魔法少女と使い魔の戦いとも読めるし、ルイスからアリシアへの愛情とダミアンからバルバラへの愛情が起こした悲劇の物語とも読める。先の読めない展開と、奇妙な雰囲気に溢れた作品でした。ところどころに映画やアニメへのオマージュが入っているのもいいですね。バルバラが飲んでいるお酒が「SAILOR MOON」だったり。ヘンテコでどこかユーモアがあり、面白い映画でした。


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