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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
18
2018

葛城事件

2016年 / 日本 / 監督:赤堀雅秋 / サスペンス、家族 / 120分
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麻婆豆腐が辛すぎる! 俺はこの店に20年通ってんだ!
【あらすじ】
次男が通り魔殺傷事件を起こした。



【感想】
通り魔殺傷事件を起こした次男の家族の物語。被害者側の家族や復讐を描いたものはありますが、加害者家族の苦痛を描いた作品はあまりない。犯人の父親・葛城清がふてぶてしくこちらを睨むポスター、「俺が一体、何をした」というのはすばらしいキャッチコピーですね。本当にこう思っているのだ。

通り魔事件などが起きたとき、犯人は「頭のおかしい人、異常者」とされ、私たちとはまったく違う人間と思い込んでいるような気がする。この映画を観ると、ほんの些細なことであちら側(そもそも線などないが)に行きかねない危険性が誰にでも、どの家族にでもあるのではないかと感じさせられる。

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「アウトレイジ」「松ケ根乱射事件」で悪いおじさんを演じた三浦友和さん。今回も悪いお父さんの役。悪いというか面倒くさい人。段々こじらせてきている。あと2、3作したら殺人鬼になるのでは。爽やかな役も悪い役も、いろいろやってくれるのは嬉しいですね。今回は自分の意見がすべて正しく、周りをまったく認めない抑圧的な男、葛城清を演じています。父親になってほしくない人ランキング堂々の1位を受賞。私の中で。

葛城家の長男、保(新井浩文、右)。強権的な父親に逆らうことができない出来の良い真面目な男。「松ケ根乱射事件」「アウトレイジ・ビヨンド」でも三浦友和さんと共演している。新井さんは得体の知れない雰囲気を持っていますね。本当はどんな性格なんだろうと思わせる魅力的な俳優。

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夫・葛城清に逆らうことができない妻・伸子(南果歩、左端)。料理を作らず、インスタントや出前ばかり取るところにどこか歪みを感じる。引きこもりの次男・稔(若葉竜也、右から二人目)、母親には強く出るが父親の前では何も言えない。通り魔殺傷事件を起こしてしまう。

家族の歪みが、家族の中で最も弱い稔を通して噴出してしまったように感じる。

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父親の清の「とにかく俺が言うことがすべて正しい」という態度は観ていて辟易する。だけど、程度に差こそあれこういう人いるからなあ。中華料理屋で麻婆豆腐の味が辛すぎると文句をつける場面が秀逸。自分をひとかどの人物に見せたいのか、店員を呼びつけてネチネチと文句を言い、おまえじゃ話にならないから店長を呼べと困らせる。長男の奥さん家族は完全に引いてしまっている。「水餃子は美味しいから食べて食べて」じゃないんだよおおおお。こんな食事会、イヤ‥‥。

さらに自宅に帰れば、孫がケガをしている。監督不行き届きということで、留守番をしていた奥さんをビンタ。思えば、なぜか奥さんを食事会に連れて行ってないんですよね。奥さんへの態度もどうかと思うところがあるというか、どうかと思うところだらけだよ‥‥。

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父親の態度が家族をおかしくし、やがて次男・稔は凶行に走る。稔は父親を強く否定しながらも、父親に似た言動を示すことがある。「だから日本人は駄目なんだよ」とか。聞いていてむずがゆくなるようなニートの言い訳がねえ、すばらしいですよ。駄目なのおまえじゃーん。

で、そんな稔と獄中結婚した謎の女・星野順子(田中麗奈)。またこの人がすばらしいのだ。

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死刑制度への反対はかまわないが、自分の家族とも断絶し、人間への希望を失いたくないという理由(なにそれ?)から稔と結婚する。宗教や。怪しい新興宗教や。

自分の存在意義の確認なのか、自己犠牲の精神か、よくわからないが強烈な思い込みで葛城一家に迫って来る。もうほんと怖い。だが、彼女は独裁者・葛城清との対称性を感じさせる。どちらも疑うことなく自分の正しさを100%信じている。他人の話を聞かず自分の意見を押し付けるところなどそっくり。向いている方向は別でも信念の強さは似たようなもの。どちらも狂気ですけど。

田中麗奈さんの代表作は、私の中ではオレンジジュースの「なっちゃん」でしたが、完全に狂気の女に塗り替えられた。怖い。

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葛城一家の若い頃がねえ、幸せそうなんですよ。清は努力して新居を手に入れ、保は勉強ができて優秀。美しい妻に甘える次男の稔。それこそ「どこにでもある幸せな家庭」に見える。実際、幸せだったのだろう。どんな家庭でも葛城一家のようになってしまう可能性は秘めているのではないか。この映画は遥かな対岸にある家族の物語ではなく、同じ岸辺に並んだ隣家の物語なのだろう。

新築祝いに清が植えたミカンの木がまた印象的。ミカンは収穫するのに何年もかかる。だからこの木は清が子供たちのために植えたものなんですよね。彼にもそんな気持ちを持っていた頃があったのだ。最後に清はミカンの木で首を吊るが、ミカンの枝は無情にも折れる。保や稔は、清を許さなかったということなのかな。何事もなかったように清は自宅に戻り、一人寂しく食事を続けるのだ。「生きなければならない。それが自分への罰だ」。清はそう感じたのではないか。興味深い作品でした。三浦友和、田中麗奈がともにぶっ飛んでいてねえ、とにかくその印象が強かったです。いい意味で、二度と観たくない作品になりました。


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